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#4 ワークショップはメタ認知の格好の機会 ~『メタ思考』を読んで~

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。

私は毎週、澤円さんのVoicyを楽しみにしています。

澤さんは物事を分かりやすく説明するのが本当にお上手で、穏やかな口調は耳に心地良く、たくさんの人にとってタメになる情報を、毎日継続して発信されています。人前で話すことが多い私にとっては、この上ないお手本なのです! 

そんな澤さんが新著『メタ思考 「頭のいい人の」思考法を身につける』をご出版されたので早速読んでみたのですが、とても良い本でした!!

特に、もし若かった頃の私にいま会うことができたら、ゼッタイに読ませてあげたい一冊だなぁと思ったんですよね。

澤さんは『メタ思考』の中で下記のように書かれているのですが、当時の私は身近な人々との比較ばかりを気にして、ビジネスや成長の本質とは真逆のことばかりをしていたので.…。

メタ思考とは、自分の認知活動(行動や考え方)や性格を俯瞰で見て認識する活動のことで、本書ではこのメタ思考の力をつけていくことをテーマにしていきます。「外」の視点を獲得すれば、今自分がいるひとつの世界の中で他者との比較に苦しむのではなく、自分がいかに小さい場所でちょっとした差に過敏になっているか、その視野狭窄に気づくことができます。そして、ひとつの価値観に縛られずに自分が面白いと感じることに正直に、より自由に生きられる。僕はそう考えています。

メタ思考 「頭のいい人の」思考法を身につける



行き詰まってから立て直せなかった新人時代

私は新卒でリクルートに入社し、岡山支社に配属となりました。お客様や先輩方が可愛がってくださり、とても充実した1年目でした。

ですが後から振り返れば、出だしが順調だったことで、やや仕事を舐めてしまったかもしれません。2年目からは徐々に営業成績を上げられなくなっていったのですが、慢心があった私は、自分の土台がスカスカなことに気づけず、適切な対処ができませんでした。

リクルートの営業に配属されていながら「商品を売る力がない」というのは、もう大変なことです。リクルートの営業は売れなければ、どれだけ控え目に言っても、社内に居場所はありません。

ですから非常に悩み、あれこれ試行錯誤をしてはみましたが…、なかなか結果は変わりませんでした。

とはいえ自ら環境を変える勇気もなく、文字通りの八方ふさがりだったのです。

自分を俯瞰で見つめる力が足りず停滞

私が結果を出せなかった、成長できなかった理由はいくつもあるのですが、中でもメタ思考が苦手だったことはかなり致命的な弱点だったなと、澤さんの著書を拝読して改めて思いました。

メタ思考とは、自分の行動や考え方などを、俯瞰して認識することです。

当時の私は、自分自身の振舞いを客観的に振り返ったり、多角的な視点から物事を見つめることが壊滅的に苦手でした。

そのため自分自身の未熟さを自覚できずに言い訳ばかりでしたし、状況を改善していくためのPDCAを回すことができませんでした。

プライドの高さも邪魔をして、助言を素直に受け入れることにも抵抗がありました。同期や後輩に負けたくないという気持ちは強かったのですが、その場しのぎ、小手先の手段を乱発していたため、長続きしません。

いつ思い出しても赤面してしまうほどの、相当なポンコツっぷりでした。

Follow Your Heartの標語が大好きで入ったリクルートだったのに、最後の数年は結果が出ない中、周りから評価されたいという自身の欲求に振り回され、

他者の価値基準に合わせた表面的な姿勢で全てを取り繕いながら過ごしてしまったことは、人生における大きな後悔の一つです。

転職が自分を見つめ直す機会に

転機となったのは、東日本大震災復興支援財団への転職でした。慣れ親しんだリクルートから外の世界へ出たことによって、同期や後輩という分かりやすい比較対象がなくなった私は、全国の同年代と自分を比較しよう、という考えに自然とシフトできたのです。これによって、自分の視野が広がりました。

また、澤さんは『メタ思考』の中で、

僕たちは自分が持つ「ものさし」の種類をもっともっと増やす必要がある。自分で自分を理解して、自分で自分の仕事を定義し、自分で自分のモチベーションを高めていけるように、多様なものさしで人生を考えていかなくてはなりません。

メタ思考 「頭のいい人の」思考法を身につける

とお書きになられているのですが、リクルートの人材育成メソッドから離れたことによって、私は自分で自分を見つめて、「成長とは何か?」を定義し、行動しなければならなくなりました。

人材輩出企業の異名を持つリクルートには、優秀なビジネスパーソンを育てるための手法や哲学が脈々と受け継がれています。そうした恵まれた環境の中でさえ十分に成長できなかった自分への危機感、このままの自分で食べていけるのだろうか? という恐怖感は、とても居心地の悪いものでした。

自分の「ものさし」の発見

そこで、自分には何が足りないのかと、当時の私が抱えていた各種の問題を洗い出してみたのですが、それらを抽象化して捉え直してみると、世界が狭いという一言に集約できる気がしたんですね。知識も教養も経験も、ぶっちぎりで赤点だと思ったのです。

転職して数カ月した頃に、こう気づいた私は、
 ①毎年500人以上の方とFacebookでつながる
 ②毎年100冊以上の本を読む
 ③自分が知らないことをたくさん体験させてあげる

という3つの行動を取ってみようと決意しました。

最初のうちはなかなか効果を実感できませんでしたが、3カ月、半年と続けていくに連れて、少しずつ世の中の見え方が変わり、自分がいい方向へと進んでいることを自覚することができました。

自分基準で生きる楽しさで加速

こうなると楽しくて、この取り組みを続けよう、もっとやろうと、加速度的に意欲が高まったことをよく覚えています。

そしてこれらを5年継続したことが、ワークショップデザイナーとしての独立、という形で結実しました。

独立した2018年から現在に至るまで、約250回ほど登壇の機会をいただき、講師として大学で教鞭を執らせていただいておりますが、これはまさに、自分で立てた「成長のものさし」に楽しく取り組めた産物だと思います。

ただ、誤解のないように付言しておきたいのですが、私が最終的にこの道を歩んで来られたのは、仕事を教えてくださった先輩や、ワークショップの依頼をくださる有人知人、一生の学びを授けてくださったコーチングの師など、様々な方々とのご縁のおかげです。

ワークショップはメタ認知の絶好のチャンス

さて、前置きがかなり壮大になってしまったのですが…、そろそろこの記事のタイトルである、ワークショップはメタ認知の格好の機会というテーマに触れたいと思います。

私はワークショップでは、「組織開発」「コミュニティデザイン」「自己探究」と主に3つの分野を扱っています。

何をやっている人か分かりにくいから分野を絞ったほうが良いよ、その方が依頼が増えるよとご助言いただくこともあり、私もその通りだと思うのですが、どの分野も好きなんですよね。

中でも自己探究のワークショップには、特別大きなやり甲斐を感じています。

なぜなら、ワークショップを通じてご自身の現状を見つめていただいたり、どんな未来へ向かいたいのかを考えていただく機会を提供していると、必ず若い頃の私と同じような状況に悩まれている方にたびたび出会うからです。

ピンチな時は自分のことが見えづらくなる

私の場合はスキルもスタンスもダメダメだったのですが、素晴らしい資質や才能をお持ちの方でも、置かれた状況によってうまく能力を発揮できていない、評価されていない、ということはそう珍しくないようです。

こうした不遇の瞬間の葛藤、出口の見えない不安は、なかなか言葉で表現できないほど苦しいものがあります。

だからこそでしょうか。人は、自分が置かれた場所でうまく成果を出せていない時ほど、他者からの評価を求めて、他者のものさしに対して強く焦点を合わせてしまいがちに見えます。

会社の中でどれくらい成果を出せているかとか、同僚と比べて期待されているかどうかなどは、澤さんもお書きになられているように、狭い世界の中での比較に過ぎないので、本当は気にしすぎても仕方ないことです。

でも、そうした微細な差に思い悩んでしまう方というのは、むしろその真面目さやバイタリティのために、考え詰めて考え詰めて、いつの間にか視野が極端に狭くなってしまうのではないかと思うのです。

ただ、自分が視野狭窄に陥っていることを、自分一人で気づけるようになるには、けっこう訓練が要るんですよね。

時には昔の私のように、外部からご指摘をいただいたとしても、プライドが邪魔をして受け取れないことだってあります。うまくいっていないことを認めるには、勇気と覚悟が必要です。それがこの問題の厄介なところだと感じます。

知らず知らず他者の「ものさし」だけになってない?

つい2年ほど前、職場で思うようにパフォーマンスを上げられず、「この生き方で良いのだろうか?」と悩んでいた知人のために、「毎日をあなたらしさで満たしていくためのワークショップ」をデザインし提供しました。

人は大なり小なり、自分ではない誰かが決めた「ものさし」に縛られて過ごしている部分があると思います。

そして上述したように、「ものさし」は自分がうまくいっていない時ほど、他者の目線や価値観に浸食されがちです。

でも、日常が多忙すぎたり、プレッシャーを強く感じていたりすると、なかなかこの事実に気づくことはできません。

まずはそれに気づき、ピントを合わせる「ものさし」を自分の基準に置き換える。そうすることで日常に自分らしさを取り戻そう、というのがこのワークショップのコンセプトでした。

「他者の考え」を通じて自分の輪郭を知る

ワークショップでは、始めに「自分が小さい頃に気にしていたコト」をリストアップしていただきました。幼少の頃に気にしていたことって、気づいていないだけで、意外と現在まで影響を及ぼしていることが少なくないんですよね。

それから「自分の身近な人がよく気にしているものさし」を参加者みんなでたくさん挙げていただきました。

売り上げ、収入、睡眠時間、趣味を楽しむ回数、自炊の回数などなど、仕事のことからプライベートの内容まで、場には様々な尺度が共有されました。

人は自分のパラダイムの枠の中のことにしか意識を当てられないので、こうした幅出しの時間は、参加者みんなで取り組むに限ります

これが、この長い記事で最もお伝えしたいことです。自分自身を見つめるためには、自分ではない誰かの考えや意見を通して、自分の思考や行動を認知する必要があります。

だから多様な価値観を持った他者の意見や視点に触れることができるワークショップは、メタ認知の格好の機会なんですね。

誰かの意見を機に「こんな考えもあるんだ! 自分には当てはまるだろうか?」と思考してみることで、自分自身の輪郭がハッキリしていくのです。

自分らしい「ものさし」に意識をつなぎ変える

こうして自分が縛られているものさしを炙り出した上で、「自分らしい毎日」に必要なものさしって何だろう? という問いをお渡しし、参加者それぞれに探究していただきました。

たとえば最近の私は「ブログを書く」「30分フィットボクシング2で運動する」「本を開く」「感動する」などが重要なものさしです。これらをトータルで実行できた日は、とても幸福感が高まります。

澤さんの『メタ思考』から言葉をお借りすれば、「毎日優勝!」と思える自分ルール、とも言えるかもしれません。

逆に言えば、リクルートで人生に行き詰まっていた時の私には、こうした自分らしい尺度がまるでなく、ただただ周りの意見に翻弄されてしまっていました。

「個」の時代とワークショップ

これからの時代は、自分はどう生きていると幸せかを自分で定義して、そのために行動を起こせる人にとっては、とても居心地の良い「個」の時代です。

とはいえ、自分はどう生きると幸せ? が整理できていない方も、まだまだ多いように感じます。そうした方々に、ワークショップはとても有効だと思うんですよね。

他者という異文化に触れることで、結果的に自分の輪郭ー何が好きで、何が嫌いか、がよく分かるようになるから!

かなえたい夢!

ちなみに私は、私がご提供したワークショップをきっかけにして、人生が変わった! と思える方を増やしたいと思っています。

もう少し大きなことを言えば、ワークショップで人生が変わる! と思っている人がメジャーな世界を作りたいんですよね。

例えばグロービスさんの研修は「成長出来そう」「しっかりした知識を獲得できそう」というイメージを多くの日本人が持っているのではないかと思います。企業の決済者も「グロービスなら安心だ」と、自信を持ってハンコを押せますよね。

そのような感覚で「ワークショップ=変化のチャンス」と皆が認知し、期待を抱くのが当たり前になるよう、ワークショップの位置付けを高められたら、私はとても嬉しいのです。

そのために2024年も、たくさん良いワークショップをご提供していきたいと思っております。千里の道も、一歩から!

ワークショップデザイナー
相内 洋輔

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