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カフラー王のピラミッド3Dスキャンプロジェクト〜ワールドスキャンプロジェクトの挑戦

古代エジプト史において、最も重要な遺跡の一つである三大ピラミッド。なかでも2番目に壮大なカフラー王のピラミッドは、その威厳ある姿と美しい化粧石により王の威信と建築技術の高さを今に伝え、訪れる者を魅了しています。

今回は、私たちワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)と名古屋大学のエジプト考古学者でナショナルジオグラフィック協会のエマージング・エクスプローラーでもある河江肖剰博士による共同調査が行われた、カフラー王のピラミッドについてご紹介しましょう。

カフラー王のピラミッド
Khafre's Pyramid
Photo by Mgiganteus1 via Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0)

謎に包まれた王

第4王朝の王としてエジプトを統治したカフラー王は、父クフ王の後を継いで即位しました。複数の妻と子供がいたことは知られていますが、どのようにエジプトを率いていたのかという具体的な記録は発見されておらず、また在位期間についても諸説あるため、未だ神秘のベールに包まれた王であると言えるでしょう。

閃緑岩のカフラー像
Statue of Khafre in nephrite (Egyptian Museum, Cairo)

彼が築いた建造物としては、やはり圧倒的な存在感でそびえ立つピラミッドが代表として挙げられますが、ピラミッド周辺にある葬祭神殿や大スフィンクスはカフラー王のピラミッドと共に古代エジプトの神秘を今に伝える重要な象徴となっています。

カフラー王のピラミッドの前に鎮座する大スフィンクス
Great Sphinx of Giza and the pyramid of Khafre
Photo by Hamish2k via Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0)

壮麗な外観を持つカフラー王のピラミッド

カフラー王のピラミッドは「ウェル・カフラー(カフラーは偉大なり)」との呼び名を体現したように、高さ約143mで底辺は約215mにも及び、父クフ王のピラミッドと息子メンカウラー王のピラミッドの間に建造されました。クフ王のピラミッドよりも3mだけ高さが劣りますが、基盤の台地がクフ王のものより10m高く、ピラミッドの傾斜角度が急であることから、視覚的には一番高く見えるようなつくりとなっています。

特に注目すべきは、ピラミッド頂上付近に部分的に残る、化粧用の白い良質な石灰岩です。これは他のピラミッドには見られない特徴であり、建造当時には下層部の赤色花崗岩と上部の白色石灰岩で彩られたピラミッドが、太陽の下で輝いていたことでしょう。

建造当時は白い石灰岩でピラミッドが覆われていた

ピラミッド内部

三大ピラミッドはそれぞれ違う内部構造を持ちますが、カフラー王のピラミッド内部は比較的シンプルで、主要な通路2つと副室、そして最深部に玄室が配置されました。後世に築かれたセティ1世の王墓ラメセス6世の王墓のようにレリーフや壁画で豪華に装飾を施されたものとは異なり、内部の装飾はありませんが、そのシンプルさがかえって、古代エジプト人の死後の世界に対する深い洞察を感じさせます。

ピラミッドの内部構造はシンプルなつくりになっている
The Pyramide of Khofru , Gyza, Egypt
Photo by Leon petrosyan via Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

カフラー王のピラミッド内部において特徴的なのが、地上11mの場所と、ピラミッドから少し離れた地上にある2つの入り口で、それぞれの入り口から伸びる通路は玄室に向かう途中で合流しています。高い位置にある上方通路は赤色花崗岩が用いられたことから「赤の通路」、地上から入る下方通路は石灰岩でつくられており「白の通路」と呼ばれています。しかし残念ながら、入り口が2つあることの理由については解明されていません。

石灰岩でできた下方通路
The Pyramid of Khofru , Giza, Egypt
Photo by Leon petrosyan via Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

カフラー王の玄室

水平通路の奥にある玄室は地下と地上の境目に配置されており、カフラーの治世における太陽信仰(地上)と冥界神オシリスへの信仰(地下)が関わっていたとされています。切妻構造の天井は玄室にかかる重量を分散させるように造られており、内部にはカフラー王が最終的に眠った棺が置かれました。

カフラー王の玄室

カフラー王の石棺は蓋がスライド式になっており、分厚い敷石に埋め込まれるような形で置かれました。盗掘の影響か石棺の中からはミイラではなく、オシリス神の象徴である雄牛の骨が発見されており、カフラー王の代用として捧げられたものだと考えられています。また、玄室の壁に沿って掘られた穴には、カフラー王の臓器を保存するためのカノプス壺が収納されていた痕跡が発見されました。

石棺の中からは雄牛の骨が見つかった
カノプス壺が収納されていたとされる穴

世界を、未来を、好奇心を、身近に

カフラー王のピラミッドは建造当時のピラミッドの姿を伝える貴重な遺跡となっていますが、上部に残る化粧石が崩れ落ちず残った理由や、入り口が2つある理由についてなど、解明されていない多くの謎が残っています。

私たちワールドスキャンプロジェクトは、このような古代遺跡の謎を解明するため、3Dスキャンによってデジタル化したデータを世界中の人々に提供しようと取り組んでいます。このデータは研究者にとっても価値のある資源となり、古代エジプト人の生活や信仰、技術に関する新たな発見につながることでしょう。ご興味があれば、ワールドスキャンプロジェクトの活動をフォローいただき、ぜひ応援をお願いいたします。

カフラー王のピラミッドについてはこちらの動画もご覧ください。

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