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論文紹介#4 皮膚の老化メカニズムを解明した”Stem cell competition orchestrates skin homeostasis and ageing”について

こんにちは。飛び級で大学院に進学し、幹細胞を使って研究を行っている土屋諒真です!
勉強の一環として毎週1本ずつ論文の紹介をしています!

と言っていたのに、先週はしれーっと投稿をさぼってしまいました、、
言い訳すると、論文は読んでいたんですけど課題に追われていてnoteどころではなかったですごめんなさい!

今回は「老化」に関する論文のご紹介です!老化は生きているうえで必ず直面するものだと思うので、ぜひご覧ください!

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論文はこちら
Liu, N., Matsumura, H., Kato, T. et al. Stem cell competition orchestrates skin homeostasis and ageing. Nature 568, 344–350 (2019). https://doi.org/10.1038/s41586-019-1085-7

あくまで僕の理解と解釈、見解ですので、間違いがあった際には教えて頂ければ幸いです。また、著作権には細心の注意を払って配慮をしておりますが、何か不備がありましたらご連絡をお願いいたします。

トップの写真はこちらからお借りしました!

I. 背景

論文についてご紹介する前に、まず組織や臓器における老化とは何かをご説明します。組織や臓器の老化は生活するうえで感じるストレスや様々な損傷が原因となり、長い時間をかけて進行していくと言われています。実際に、切り傷を作っても、課題が大変で大きなストレスを感じても、毎日紫外線を浴びていても、すぐに皮膚がシワシワになるわけでも、臓器の機能が著しく低下するわけでもありません。このような組織や臓器が健康な状態は幹細胞システムの「細胞競合」という遺伝子変異を獲得した細胞を排除する機構によって維持されているといわれてきましたが、傷害やストレスが細胞にどのような影響を与えるかやその動態については明らかにされておらず、組織や臓器が若さ・機能をを保つ仕組みや、老化のメカニズムはわかっていませんでした。本論文ではそのメカニズムを詳しく解明することを目的として研究を行ったものになります。

II. 結果

ヒトの皮膚と共通の特徴を多くもち、ヒトの皮膚と同様に老化するマウスの尾を用いて、幹細胞競合が皮膚の老化にどのような役割を果たすかを調べた結果、幹細胞競合は加齢によって減少するコラーゲンタンパク質のCOL17A1によって進んでいくことがわかりました。

①加齢によって減少することが知られているコラーゲンタンパク質(COL17A1)の発現量が各種ストレス(ゲノムストレスや酸化ストレス)がかかることによって変動し、幹細胞競合が引き起こされ老いた細胞が排除されることがわかりました。

②若い細胞(COL17A1の発現量が多い)は細胞分裂で増加するのに対して老いた細胞(COL17A1の発現量が低い)は細胞分裂の過程でそのコラーゲンを失っていくことが確認されました。

①と②より、基本的に若い細胞(COL17A1の発現量が多い)が皮膚にとどまることができるが、損傷やストレスによってそのCOL17A1が徐々に減少し、古くなった細胞は細胞分裂によってさらにCOL17A1が減少すると細胞競合によって古い細胞は排除されていくということになります。このようなプロセスを経ることでだんだん細胞競合が減弱し、表皮の老化が進むことが明らかになりました。

また、排除される古くなった細胞の周りの細胞を調べたところ、周りの細胞の排除も巻き込み、それがどんどん波及していくことで臓器レベルでの老化に繋がると考察をしています。

さらに、人工的にコラーゲンを発現させた老いたマウスでは、皮膚の老化に抑制効果が見られたのと同時に再生促進の効果も見られました。COL17A1の発現を誘導する分子による皮膚の再生促進効果も確認されており、皮膚の老化における治療や予防に役立てられると期待されています。

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III. まとめ

皮膚の老化は、幹細胞競合が加齢によって減少するコラーゲンタンパク質COL17A1によって推進されることで起きるということにが明らかになりました。
また、古くなった細胞が排除される際に周りの細胞も巻き込んでいくことで臓器レベルでの老化(機能低下)を導いているという考察も行っています。
COL17A1の発現を誘導する分子を明らかにしたことで、今後の老化に対する治療や予防に役立てることができるかもしれません。

”アンチエイジング”という言葉を耳にすることもありますが、老化に大きくかかわるCOL17A1というコラーゲンタンパク質の発現を促す分子を用いた技術が確立されたら、本当の意味でのアンチエイジングに一歩近づくかもしれないですね!!

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