レ・ミゼラブル 少女コゼット

レ・ミゼラブルといえば、世界的に著名な文学であり演劇の代名詞でもあり、幾度となく映像化もされている名作中の名作である。
古くは「あゝ無情」という邦題で和訳されていたが、現代では「レ・ミゼラブル」の方が通りは良いだろう。
小学生の頃、図書室の隅にあった鈍器のような分厚さで装丁がボロボロの「あゝ無情」があったことを覚えている。
今も覚えている程に存在感のあるそれが「レ・ミゼラブル」の邦題と知っていれば読んだのだが、当時は戦争へ死にに行く若い兵隊の話かなんかだろうと勝手に思い込んで忌避していた。

「レ・ミゼラブル」は愛とは何か、正義とは何かをこれでもかというほど詰め込んでいる。
にも関わらず、明確な答えが出ていないところが生きることの難しさのように思う。
「レ・ミゼラブル 少女コゼット」は、世界名作劇場でアニメ化された「レ・ミゼラブル」だ。
子供向けにアレンジこそされているが、愛と正義を問う根幹は変わっていない。
演劇や映画では一部分しか取り上げていないものも多い中で、この作品はほぼ全編を通して描かれており、物々しい書物を読むより断然ハードルが低く、過激な描写もないので子供にも勧めやすい。
世界名作劇場の作品の中で、一番「自分に子ができたら見せたい」と思った作品である。

ジャン・ヴァルジャンにはどことなくシンパシーを感じている。
僕も世間一般の若年期を過ごしておらず、愛を知らず、明るいコミュニケーションよりは寡黙に抱え込むタイプだ。
収監されたことは無いが、それなりに周りに迷惑をかけてきたし、人生を夜の為人の為に還元していこうという使命感のような十字架を背中に感じながら生きている。
「レ・ミゼラブル 少女コゼット」は、その題の通りコゼットを主軸にしているが、やはりこの物語の主役はジャン・ヴァルジャンで、その愛と正義への苦悩こそが最も胸を打つのだ。

それはそうとしてもコゼットは可愛い。

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