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人文的なるものの不可能性の隘路

先月に発売され一部で話題沸騰中の論壇誌であり学生運動から派生した背景を持つ『情況』の最新号はキャンセルカルチャーだ、スガ秀実、笠井潔、外山恒一など異才を放つ批評家または革命家らが刺激的なインタビュー&論考で誌面を賑わせている。Amazonの人文系雑誌部門で1位獲得らしい、俄かに信じ難い事実。第四波フェミニズムが隆盛らしい、きっかけは2017年の#metoo運動。先に上げた『情況』に掲載されたスガ秀実の批評「第四波を犬掻きする」は第四波の流れの問題点を的確に整理しながらも規律的な振舞いへ回収されつつある現状へのアンサーとなっている。スガ秀実の批評は現状の日本のフェミニズム/ジェンダー理論=運動の課題も浮き彫りにしている。節の6で記述されているコミュニケーション資本主義、かつて待望されたガタリが熱弁したポストメディア論が図らずもSNSの加速度的浸透で到来もしなかったことは火を見るよりも明らかとなってしまった。SNS媒介のポピュリズム現象、排撃、ヘイト、そうした言葉を記すだけで十分だろう。制度補完としてのフェミニズム/ジェンダーには現状改革への道しかないかの如き状況をフェミニズム/ジェンダーの立場にある者たちが招き寄せてしまっている袋小路へ嵌り込んでいる。かつてのレズビアン分離派のようにユートピア思考で現存秩序へのラディカルな離脱が今のところ皆無なのは現実思考ベースの改善的運動でしか活路が見出せていない証左。にも拘らず現実原則に忠実的で秩序枠内の合法性な論拠を示すことでしか活路を見出せない。革命指向やユートピア建設理念は今は皆無だ。現在地から見直すと現実的ではないという誹りは免れない、しかし平均化して優等生主義が社会の一定数の枠組みを構築し現存秩序への過信がある。そうした趨勢の中でかつての革命的なユートピア思考も批判的にせよ学び直すべきだろう。余談だが某政治セクトは『情況』を忌み嫌っているだろう。某公園で集会していたのだが。そのとき観賞していたのがロベール・ブレッソン監督の日本初公開作となった1977年の『たぶん悪魔が』だった。

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