「いきなり結婚」のススメ

「いきなりマリッジ」という今何かと話題の番組がある。私は番組を見たこともないし、内容もよくは知らないのだが、出会って間もない男女が夫婦同然に生活していくものだと理解している。

交際0日婚!というわけではないが、数ヶ月前入籍した私もそれに近しいものがあった。「入籍しました」とともにいきなり上げたインスタに地元の友人たちからも驚かれたし、この間まで遊んでいた(広い意味で)男性からは、苗字が変わったLINEのIDを見て、寂しそうな連絡が来たり来なかったりした。

とにかく私の結婚はいきなりだった。1月まで良い感じの付き合っていない異性がいたが、7月には別の人と結婚しているというスピード感である。別に子供を授かったわけでもない。

ーーーーーーーーーーーーーー

大学生の頃車好きの男性と付き合っていた。高卒で就職していた彼は私からすると社会人の立派な大人に見えて、車のことや社会のことを聞くとなんでも教えてくれた。インテリというわけではなく、ユーミンの言葉を借りるとダウンタウンボーイという感じで、ちょっと危険な雰囲気があるところが好きだった。

そんな彼がかっこいい車で迎えに来てくれた時、祖母が

「私も若い頃はあんたみたいな恋愛しとったんやよ。よくバイクの後ろに乗せてもらっとった。懐かしいわー。」

と言った。私はすかさず、

「ばあちゃんはなんでその人と結婚せんとじいちゃんと結婚したん?」

と聞いた。

「なんでかなー。最終的には畑仕事のできる健康な男の人をってことでお母さん(曽祖母)がじいちゃんを連れてきたからなぁ。」

と答えた。祖母がどんな顔をしていたかは覚えてないけど、私はその場をなんとなくやり過ごしてデートへ向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

祖母はこの結婚によりものすごく苦労をした。とにかく酒好きの祖父は酒を飲んでその辺で寝て朝まで帰って来なかったこともあったようだし、酒を買うために借金をしたり、ギャンブルに溺れたり、酔って祖母を殴ってメガネを割ったこともしょっちゅうだったようだ。若い頃は女もいたらしい。

そんな夫婦の娘である幼い頃の母は、とにかく極貧の家庭に育った。家にお風呂がないから近所の人の家に入れてもらいに行っていた話や、フィルムが買えなかったから幼い頃の写真が全然ない話など色々と聞かされた。

私が知っている祖父はせいぜい50代後半からだから、若い頃の様子とは全く違い、落ち着いた祖父しか知らない。変わっていなかったのは酒好きなところぐらいか。

そんな祖父は去年の6月に亡くなった。もともと持病があった祖父はガリガリに痩せて、死の直前は体重が40kgほどしかなかったようだ。

仕事を休んで私は実家に帰り、祖父の最期を見送った。棺には大好きなお酒やよくかぶっていたハンチング帽を入れてあげた。祖母は気丈な態度でいてくれたけど、その瞳には涙を浮かべていた。本当に滅多に泣かない強い人で、私と同じ敵を作りやすい人だけれど、かなり衰弱しているようで、しばらくは元気がなかった。

ーーーーーーーーーーーーーー

この時思ったことがある。結局どんな相手と結婚しても、ずっと寄り添って離れなければその人が真の結婚相手になるのだと。

私は結婚相手を考えるにあたって求める条件は、

借金をしない・DVをしない・不倫しない・定職についている・耐え難い体臭をしていない・生理的に無理じゃない・浪費癖がなく貯金がある・思いやりがある

ぐらいなのだが、祖父の場合は生理的な部分以外ほとんどアウトだ。世の夫婦が離婚する理由は分からないが、私があげた条件を1つでも満たせなければほとんどが離婚直行だろう。

「昔の人は強かった」「昔はそんなことぐらいで離婚しなかった」とか言われれば、まあそれまでかもしれない。

戦時中に「戦争に行くことを拒否する」と言う概念がないようなものだったのだろうか。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

私は社会人3年目、一つの恋を終わらせて休日暇になったから習い事を始めた。そこで知り合った結婚相談所を経営するモデルみたいに綺麗な女性から、「結婚相談所のモニターをしないか」と誘われた。報酬は公務員で副業はできないからもらえないが、私が男性とのデート体験記をブログにアップする代わりに、数十万円する婚活の活動費を無料にしてくれると言うものだった。

期間は3ヶ月。本当に良い人がいれば結婚しても良い、期間を過ぎても続けたい場合は会費を払って活動を続けるという条件だった。

この活動期間中本当に色々なことがあって、普通に過ごしていたら体験し得ないようなことにもたくさん出会った。それはおいおい書くとして、結論から言うとそこで出会った一人の男性と結婚するに至ったのだ。

彼と出会ったのは祖父が亡くなって半年後のことだった。

私は出会ったその日から彼と結婚すると思った。ドラマみたいに良くできた話で自分でも笑っちゃうのだが、彼の下の名前が祖父と漢字まで全く同じだったからだ。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?