あさひなもえこ

一応、作家。漫画原作、編集もします。

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一応、作家。漫画原作、編集もします。

最近の記事

代行業社相模原さんの役回り⑦

終章 新生・畑山権三郎  これは僕がまだ『相模原代行業社』にいなかったころの話だ。由良さんから聞かされた、彼女の愛犬ゴンにまつわる出来事を僕視点で語ったものである。  とあるNPO団体『あいらぶ犬々』より、客寄せのために保護犬をかわいがる客という代行の依頼が由良さんに舞い込んできた。いつものように二つ返事で了承した由良さんが会場におもむくと、そこには多くの保護犬がいたという。小さい言うから大きな犬まで、犬種もさまざまだった。全部で二十頭ぐらいいただろうか。  仕事内

    • 代行業社相模原さんの役回り⑥

      五章 古風な喫茶店  僕が出勤したその日、由良さんが珍しく興奮していた。事務所のドアを開けて入るなり、僕のほうに飛び込んでくる。そして肩に手を置いて言った。 「凛音くん! 聞いて!」 「は、はい?」  まずは掃除の準備をしなければと思っている僕に、由良さんが事情を説明してくる。 「なんとエキストラの仕事が入ったのよ!」 「エキストラですか? まあ、代行業社なのだからあり得るとは思いますが……」  エキストラは映画やドラマなどで出演者が演技を行なっているうしろの通

      • 代行業社相模原さんの役回り⑤

        四章 香水の匂い 「親友代行、ですか?」  事務所にきたばかりの僕に、珍しく先に出勤していたらしい由良さんがうなずいてみせる。僕がいない間に、仕事の電話がきていたようだ。 「そうなのよ。今日結婚する新郎新婦からの急な依頼なんだけれど、スピーチを頼んだ親友がドタキャンしたんですって。それでこれから結婚式に代理出席するってわけ」 「ええ~、親友なのにドタキャンとかあるんですね。僕ならトラウマものですよ」  スピーチまで頼むほど仲が良いのであればなおさらだろう。ちなみに僕

        • 代行業社相模原さんの役回り③

          三章 有名美食家の舌 「凛音くん、フレンチ好き?」  それは唐突な由良さんのひとことから始まった。  アルバイトの日の昼間、事務所で書類整理をしていた僕が顔を上げると、由良さんが珍しく漬物になっていないことに気づく。彼女の机には“畑山権三郎”の新聞の切り抜きや雑誌、CDやDVDなどで溢れ返っており、由良さんはいつもそこに漬かっているのだ。だから僕は密かにその状態の由良さんを“漬物”と呼んでいる。 「フレンチ……ですか。好きも何も、この年ですからまず縁がありませんね」

        代行業社相模原さんの役回り⑦

          代行業社相模原さんの役回り③

          二章 不倫の指輪  僕と由良さんはこの日、事務所で一緒にテレビを見ていた。仕事の電話がなく暇な日々が続いていたときだ。 画面には俳優の戸島直哉が映っている。彼が主役のドラマが放送しているのだ。戸島直哉は元アイドルで、三十二歳になったいまはCMやドラマ、舞台や映画などさまざまな媒体に出演している、いまをときめく大変人気の芸能人である。残念なことに既婚者なのだが、それでも女性からの支持は衰えていないらしい。 「戸島直哉ってイケメンですよね。あの泣きぼくろが色っぽいっていうか

          代行業社相模原さんの役回り③

          代行業社相模原さんの役回り②

          一章 万引き共有  朝八時ぴったりにスーツで出勤してきた僕に、さっそく“畑山権三郎”が威嚇して吠えてくる。畑山権三郎とは昭和に活躍した名俳優でいまは亡くなっているが、由良さんがこのクソ犬にそう名付けていたのであった。 「おはよー、ゴン! 今日も元気だね」  人好きのする笑みを浮かべる僕を小馬鹿にするように、畑山権三郎――通称ゴンはさっさと背中を向けて小屋の中に入ってしまう。どうやら今日も仲良くなれそうにない。 しかし入社一年目、出勤一週間目のアルバイト学生、二十二歳の僕には

          代行業社相模原さんの役回り②

          代行業社相模原さんの役回り

          あらすじ 就活中の本柳凛音(男)はある会社の説明会で、美人社員の相模原由良と出会う。彼女に魅入っていたせいで詳細がまるで頭に入っていなかった凛音は、慌てて由良に説明会の概要を聞きにいく。しかし彼女は「演技だった」と言い「これが仕事だから」と去ってしまう。凛音は愕然とする。なぜなら彼は不遇な幼少期のせいで人の演技を見抜くことに長けていたからだ。唯一わからなかった由良の正体は、『相模原代行業』というエキストラを派遣する会社を運営しているらしい。由良に興味の湧いた凛音は半ば無理や

          代行業社相模原さんの役回り

          現役小説家&編集者の実業家に学ぶ!稼げる電子書籍レーベルの作り方

          【前書き】 皆さま初めまして、須藤(すどう)裕美(ひろみ)と申します。私は現役の小説家で編集者であり、数々の事業に携わっている実業家でもあります。もちろんそのどれにもきちんと商業の実績があります。そんな私が皆さまにお伝えできることは何かと考え、今回この記事を公開するに至りました。シリーズ作品になる予定ですので、今後も楽しみにしていてくださるととてもうれしいです。 昨今、小説の電子書籍レーベルが乱立していることはご存知でしょうか。それはまるで雨後(うご)の筍(たけのこ)の

          現役小説家&編集者の実業家に学ぶ!稼げる電子書籍レーベルの作り方