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~伝統工芸品に触れる=心と感性を豊かにする~

私は自分自身で工芸品を使うだけでなく、プレゼントにもよく工芸品を選ぶ。
今までに差し上げた工芸品プレゼントは数知れず、いつからか友人界隈で『私=工芸品の人』になっている(笑)ので、よくいただくようになってきた。(とてもありがたい)
友人は工芸品の特別感と、なによりその意味合いに大変感動していただける。
工芸品好きな人が工芸品好きと公言することで、結果、工芸品に触れる人が増えていくことを身をもって実感している。

友人夫婦にプレゼント 上田紬のセンス
津軽塗り箸 津軽びいどろ箸置き
美濃焼の小皿 白川だるま
差し上げた工芸品が食卓をジャック(笑)

では今なぜ、伝統工芸品に注目しているのか。伝統工芸品の何が魅力なのか。
私は『工芸品に触れる=心と感性を豊かにする』ことだと思っている。
本コラムは伝統工芸品と感性について、少し真面目に記していく。

<伝統の価値>

伝統というのは何にも代えがたい価値がある。〝伝統がある〟というのは誰かが残してきたということ。非常にもろく、簡単に途絶えてしまうのが伝統である。
途絶える理由については、他文化の流入、生活様式の変化、政治的思想、必要性の欠如、後継者の不足など内的要因から外的要因まで枚挙にいとまがない。
ゆえに
〝伝統を失うのは一瞬であり、守り継承するには努力が必要不可欠〟
である。
だからこそ伝統のあるものにはそれだけで価値が生まれてくる。今日、新しくできたものを永遠に残したとしても、50年前からある物の伝統としての価値を追い抜くことは出来ない。(本当に必要なものかどうかは別の話であるが)

お世話になっている方へ 江戸切子と七島藺

日本の歴史だけでみても、明治革命、戦争、バブル崩壊、東日本大震災など、いつ途絶えてしまってもおかしくなかった。それでも現代に残ってきているという事実。
また、当時はたくさんあったものでも、時を経て数が少なくなっていくことでそこに価値が生まれてくるともいえる。時間が価値を生み出し、時間が価値を育てていく。
それゆえ
『伝統や歴史そのものにすでに価値がある』
のである。

<感性とは>

感性とは①視覚 ②聴覚 ③嗅覚 ④味覚 ⑤触覚 の五感全てで感じる取る力(性質)のことである。感じ取る力、つまり察する力と言い換えてもいいかもしれない。
「あなたは感性が鈍い」と言われる。それは『察する力が弱い』ということだと解釈できる。感性が豊かな人は五感から得たほんの少しの情報だけで、様々なことを読み取る力を持っている。
しかし厄介なことに、感性というものは目に見えるものではない。可視化することが出来ない。それゆえ、感覚的に備わっているものというイメージを持っている方も多いのではないか。

ではこの感性を豊かにすること(察する力を高めること)が出来たらどうだろうか。

その方法の一つが『工芸品に触れること』だと感じている。

友人からの誕生日お祝い 金沢箔の花入れ


<工芸品が心と感性を豊かに>

工芸品が出来上がるまでには必ずその過程が存在する。感性を豊かにするための入り口は、物事の過程を知ることである。
①物事の成り立ち(過程)を知る
②触れる
③作る体験をする

この経験サイクルを繰り返すことで感性(察する力)が豊かになっていく。

工作でも料理でもプログラマーでも、何かモノづくりが好きな方はこの感覚が分かると思う。
もっというと、一人暮らしをして初めて、親の大変さとありがたさに気付く(私もその一人である)のもその一つであろう。

今までいただいた工芸品集

①物事の成り立ち(過程)を知る

その工芸品がどれだけの工程を経て作られてきたのかを知る。手間暇をかけ、年月をかけ、どれだけの人が関り、どれだけの想いで作り上げられたのか。工芸品のなかには、温度や湿度によるほんのわずかな変化すら命取りになる繊細なものもある。
そうした数々の背景があったうえで一つのものが出来上がる。
表面上ではただのモノとしての機能を享受できるが、成り立ちを知るとそこに心が生まれる。


②触れる

成り立ちを知るだけでは他人事、ただの知識。そこ重みは感じづらい。
成り立ちを知り、実際に触れ五感で感じることで、より重みやありがたみを深々と感じるようになる。
歴史や製作工程、作り上げた想いを聞き、その後にその工芸品に触れると、なんだか感慨深いという感覚も湧いてくるだろう。


③作る体験をする

職人さんはいとも簡単そうに流れるように工芸品を作り上げる。しかし、その業を習得するまでには長い年月がかかっている。
たとえ一部でも自分で作り上げる体験をすること。そこにかける労力と苦労を身に染みて感じるだろう。実際はその何十倍、いや何百倍の大変さがある。
しかし、自分が作ったものは大事にするだろう。等しく、誰かが作ってくれたからこそ、その物が存在することに気付く。苦労を一部でも一緒に感じた経験があれば、物を大事にする心にもつながる。


感性とは察する力。
〝工芸品に触れる=心と感性が豊かになる〟
伝統のある工芸品。たくさんの人に触れていただきたいものである。

友人ご夫婦へプレゼント
津軽塗の箸 八重山ミンサーランチョン
友人の和カフェ開店お祝い 鶴岡御殿まり

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