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【埼玉西武ライオンズが山川穂高選手のFA移籍に伴う人的補償に福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手を獲得】の報道は何だったのか

 2024年1月11日の朝の5時00分、FA(フリーエージェント)権を行使して福岡ソフトバンクホークスに移籍した山川穂高選手の人的補償として、和田毅投手が埼玉西武ライオンズに移籍するという衝撃的なニュースを日刊スポーツが報じました。私も最初は驚いたのですが、時間が経つにつれて、疑問に感じることがありました。

 それは他のメディアが和田投手のライオンズ移籍について報じなかったことです。日刊スポーツがそのように報じたことを伝えるメディアはありましたが、私が調べた限り、ネット媒体で「日刊スポーツによると」「日刊スポーツが報じました」という文言を使わずに今回のニュースを報道したのはTNC テレビ西日本がリリースした記事のみでした。つまり、他のメディアは和田投手のライオンズ移籍について確証が持てなかったのだと思います。確証がないニュースを後追いで報道しても、あまり意味がありません(TNC テレビ西日本は福岡のメディアなので、今回のニュースに需要があり、日刊スポーツの報道を信じたのだと思います)。和田投手のライオンズ移籍を報じた他のメディアが「日刊スポーツによると」という文言を使ったのも、保険を掛けるためだったと思います。

 同日17時30分頃にライオンズが山川選手の移籍に対する補償として、ホークスから甲斐野央投手を獲得することを正式に発表して、日刊スポーツの報道通りにはならなかったわけですが、今回の和田投手のライオンズ移籍報道は何だったのかについて今回は考えていきます。

◯【可能性1 】日刊スポーツが新聞の売上、記事のアクセス数のために根も葉もない報道をした

 まず考えられるのが、日刊スポーツが自社の利益のために根も葉もない報道をした可能性についてです。2022年のシーズンオフ、夕刊フジ(zakzak)が近藤健介選手のライオンズ移籍を報じた誤報が記憶に新しいですが、メディアが自社の利益のために誤報をすることは珍しくありません。メディアのズルいところは、夕刊フジの近藤選手の件の際は「日本ハムでのイベントが一段落する今週末を待って正式に獲得が発表される予定だ」、今回の日刊スポーツの和田投手の報道も「正式に決まれば、近日中にも発表される見通しだ」と逃げ道を作っていることです。予定が変わる可能性はあるわけですし、正式に決まらなければ発表はされないという言葉遊びですが、それならば「大谷翔平選手がライオンズ移籍へ 正式に決まれば近日中に発表される予定」など、何でもありになってしまいます。

 しかし、ここで1つの疑問が生まれます。夕刊フジ(zakzak)については、この際どうでも良いのですが、日刊スポーツが今回の件に関して、何の根拠もなく報じるかということです。確かに今回の記事は一時的には新聞の売上や記事のアクセス数を増やすことに繋がるかもしれませんが、スポーツ専門紙の日刊スポーツがホークスとライオンズを敵に回すような記事を書けば、今後ホークスとライオンズの取材に関して、規制が入る可能性もあります。そのため、日刊スポーツが自社の利益のために今回の件を報道することに疑問は残りますが、可能性として0とは言えないと思います。

◯【可能性2】ライオンズが日刊スポーツを利用して、世論の反応を伺った

 2つ目に考えられるのが、ライオンズが日刊スポーツを利用して、和田投手獲得の世論の反応を確かめたことです。これはネットで一部のファンの方が唱えている可能性ですが、私はこれはないと思っています。なぜなら、ライオンズがそのようなことをするメリットがないからです。

 山川選手のホークスへの移籍に対する補償として、ホークスがプロテクトしなかった選手の中から誰か1人を獲得できるのは、ライオンズ側の正当な権利です。そのため、和田投手を獲得することでライオンズ側が批判される筋合いは全くありません。現に和田投手のライオンズ移籍のニュースが報じられてから、ライオンズが甲斐野投手の獲得を正式発表するまで、ホークスファンの怒りの矛先はホークスに向けられていました。

◯【可能性3】ライオンズは和田投手を獲得する予定だったが、ホークスがファンからの大きな批判を浴び、ライオンズに頭を下げ、獲得する選手を変更してもらった

 状況証拠になりますが、私はこの可能性が最も高いと思っています。その理由は以下の通りです。

①日刊スポーツのみが和田投手のライオンズ移籍を報じた理由

 そもそも、なぜ日刊スポーツのみが和田投手のライオンズ移籍を報じたのかについてですが、私はライオンズと日刊スポーツの現在の関係は良好だと思っています。2023年、日刊スポーツのライオンズ担当として取材をされていたのが金子真仁さん(2024年からはアマチュア野球の担当になられています)なのですが、金子さんの取材がファンから非常に好評で、ライオンズも金子さんと選手の1対1のインタビューの機会を多く作るなど、ライオンズと日刊スポーツは良好な関係を築いていました。そのため、ライオンズが今回の人的補償について、日刊スポーツにのみ先に伝えていた可能性はあると思います。

②【ライオンズが和田投手を人的補償で指名→ホークスがやっぱりごめんなさい→ライオンズが甲斐野投手を獲得】はルール上、可能なのか

 次に仕組みとして、ライオンズが最初に人的補償として獲得を予定していた選手をホークスが断ることが可能なのかについてですが、結論、ルール上は不可能ですが、実態としては可能です。

 まずFA移籍に伴う人的補償についてですが、今回の山川選手のホークス移籍を例にしますと、まず、山川選手はライオンズにFA権を行使することを伝えます。ライオンズはNPBに届出をして、山川選手がFA権を行使したことがNPBから公示されます。この公示というのがポイントで、FA権を行使した選手はNPBがFA宣言選手として公示をした翌日から、旧球団を含めたいずれの球団(国内FAの場合はNPBの球団のみ)とも交渉が可能になります(これに関して言いたいことがある人も多いと思いますが、今回はそれが本題ではないため深入りしません)。その後、山川選手を獲得したい球団は山川選手と交渉、山川選手は移籍先を決定します。今回の場合はホークスへの移籍を決断したので、山川選手はホークスにその旨を伝えます(これまで在籍した球団にも報告をするのが大人としてのマナーです)。

 そして、ホークスはNPBに山川選手を獲得したことを報告して、NPBは山川選手がホークスへFA移籍することを公示します。その後、ホークスは28名の選手をプロテクト(外国籍選手、直近のドラフトで入団した選手、育成選手は人的補償で獲得できないため、プロテクトをする必要がありません)して、そのリストをライオンズに提出します。プロテクトから外れている選手の中からライオンズは獲得したい選手を1名指名して、ホークスに報告。その後、ライオンズ(もしかしたらホークスも)がNPBに報告をして、その選手がNPBからトレード選手として公示されて、FA移籍に伴う人的補償の移籍は完了となります。つまり、ホークスが誰をプロテクトしたかをNPBは把握しておらず、ライオンズが人的補償で誰を獲得したかをNPBに報告するのは全てが決まってからなので、その前にホークスがライオンズに「すみません、和田投手をプロテクトから外していましたが、のっぴきならない事情ができまして、他の選手を獲得してもらえませんか」とお願いをして、内々で話を収めることは本来はルール違反ですが、実際は可能ですし、言わなければ誰にもバレることもありません。

③甲斐野投手が28名のプロテクトから漏れていたとは考えにくい

 最後にライオンズは甲斐野投手を獲得したわけですが、そもそも、甲斐野投手が28名のプロテクトから外れていたと考えるのは無理があります。誰がプロテクトされていて、誰が外れていたかはホークスとライオンズのフロントの一部の人しか分からないですし、ここで予想することもしません。しかし、入団してからの通算成績や2023年シーズンの成績を考えると、甲斐野投手がプロテクトから外れていることはありえないと思います。しかし、ライオンズは最終的に甲斐野投手を獲得したわけです。私が考える真相(妄想)は以下の通りです。


1月10日
・ライオンズはプロテクトから外れていた和田投手の獲得を決断。
・日刊スポーツにのみ、そのことを伝える。
・NPBには11日に報告する予定だった。

1月11日
・5時00分に日刊スポーツが報道(まだ朝の5時00分なので、この時点でライオンズはNPBに和田投手獲得を報告していない)
・ホークスファン大激怒
・ホークスがライオンズに謝罪。プロテクトに関係なく2023年シーズン終了時点で入団5年目までの選手なら誰でも獲得しても良いから、和田投手の獲得を取りやめることをお願い(30代の主力選手だと、ファンからの批判が大きいことを考慮して)。
・ライオンズが了承して、甲斐野投手を獲得を決断。17時30分頃に正式発表。

 最初からこうなることを予想して、ライオンズが11日の朝いちばんに報道するよう、日刊スポーツにお願いをしていたなら、相当な策士ですが、これはあくまで私の妄想です。

 ライオンズ移籍について、前向きなコメントをした甲斐野投手は本当に素敵だと思いますし、ライオンズファンとしてはぜひ応援したいです。


◯出典
・日刊スポーツ 【西武】山川穂高の人的補償に和田毅指名へ 近日中に発表 ソフトバンクの顔が衝撃の移籍 配信 2024年1月11日
https://www.nikkansports.com/m/baseball/news/202401100001387_m.html

・TNC テレビ西日本 西武ライオンズがホークス和田毅投手の指名を打診 山川穂高選手の人的補償 福岡のファン「衝撃的」 配信 2024年1月11日
https://yotemira.tnc.co.jp/news/articles/NID2024011120050

・zakzak 日本ハムからFAの近藤健介、西武入りへ 少年時代からファン、松井稼頭央監督の直接出馬が決め手に 配信 2022年11月21日
https://www.zakzak.co.jp/article/20221121-ZAOAHP3XMRKCPNGAMYV77CWD24/

・NPB.Jp 日本野球機構 2024年1月11日
https://npb.jp/

・フリーエージェント(日本プロ野球)-Wikipedia 2024年1月11日
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%88_(%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%97%E3%83%AD%E9%87%8E%E7%90%83)


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