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プロ野球 春季キャンプとは何か

◯プロ野球 春季キャンプの歴史

 日本のプロ野球(NPB)ではシーズンの開幕に合わせて、各球団が2月に春季キャンプを実施します。春季キャンプが開催されるようになった経緯ですが、これはアメリカのメジャーリーグ(MLB)がシーズン開幕前にスプリングトレーニング(アメリカではオープン戦も含めてスプリングトレーニングと呼ばれています)を実施しており、それをお手本にしたからです。

 視点を変えると、プロ野球選手は各球団と契約を結んでいるわけですが、契約期間は2月1日〜11月30日の10ヶ月間になります。つまり、球団側が選手を拘束して、ユニフォーム着用の上で試合に出場させたり、練習をさせることができるのはこの10ヶ月間で、12月1日〜1月31日はそれができないということです。そのため、球団が選手に練習をさせることができる解禁日である2月1日から春季キャンプを実施することが一般的になっています(2月1日から春季キャンプを開始できるというるルールのため、2023年・2024年のライオンズのように春季キャンプ開始日を遅らせることも可能です)。

 また、キャンプという呼び方についてですが、この言葉は一時的に滞在する場所、軍隊の駐留地や駐屯地、そこで兵隊が住んでいる施設という意味を持っています。そこから日本では宿泊を兼ねた合宿という意味でスポーツの世界でも使われるようになりました。

◯わざわざ沖縄や宮崎で実施する理由

 現在、プロ野球のキャンプは沖縄か宮崎で開催されるのが一般的になっています。「本拠地の球場でやってもいいんじゃないか」と疑問に思う人もいるでしょうが、これにも理由があります。

 1つはプロ野球12球団の本拠地はどこも2月が寒いからです。寒い地域での運動はケガに繋がりやすいため、少しでも暖かい地域でキャンプを実施することが一般的になっています。アメリカのスプリングトレーニングもフロリダやアリゾナなど、温暖な地域で実施するため、日本でも暖かい地域で実施することが浸透しやすかった面もあると思います。

 2つ目はキャンプ地のほうが練習環境が整っているからです。同じ敷地内に1軍とファームの本拠地、練習施設を備えているのはライオンズのみで、本拠地は選手全員が同時に練習をするのには適していない球団のほうが多いのが現状です。しかし、キャンプ地はメインとなる球場以外にもサブ球場や室内練習場を備えていることが多いため、選手全員が効率良く練習に取り組むことができます。そのため、本拠地から離れた沖縄や宮崎でキャンプを開催している球団が多いのです。

 元々は高知でもキャンプを実施する球団も多かったですが、沖縄は県として施設に投資できる費用が多いことや温暖な気候の関係もあり、多くの球団のキャンプ地誘致に成功しました。宮崎も以前よりキャンプ地として使用する球団が減ったり、キャンプを実施する期間を短縮する球団が増えていますが、これは沖縄の施設や気候がキャンプ地に適していることが大きいです。

◯キャンプ地にとっても大きな経済効果がある

 プロ野球のキャンプはキャンプ地となる地域に大きな経済効果をもたらすという側面もあります。例えば、2019年は9球団が春季キャンプを沖縄で実施しましたが、その際の経済効果は約141億円、2023年にWBC日本代表が宮崎でキャンプを実施した際の経済効果は約22億円とされています。キャンプ地には多くのファンや取材陣が足を運ぶため、宿泊施設や飲食店などにも大きな経済効果をもたらし、街の宣伝にもなります。

 球団がキャンプを実施する→たくさんの人が足を運ぶ→大きな経済効果が生まれる→これからもキャンプに来てもらうために、地域は練習環境を整える→球団が次の年もキャンプを実施する

 このサイクルによって、プロ野球の春季キャンプが定着しているのです。そして、プロ野球だけではなく、日本では様々なスポーツチームやスポーツ選手がいるため、プロ野球のキャンプ地は2月以外の期間も有効に活用することができます。

 プロ野球の春季キャンプは球団にとっても、キャンプ地にとっても大きなメリットがあるため、これだけ定着しているのだと思います。

※画像はキャンプ地と関係ない、愛知県の海の画像です。

◯出典
・コトバンク キャンプ 2024年1月31日
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%97-178183

・travel voice『沖縄県、プロ野球キャンプの経済効果141億円で過去最高、県外客増加で消費アップ』 配信 2019年11月1日
https://www.travelvoice.jp/20191101-138968

・NHK 宮崎『侍ジャパンWBC宮崎キャンプ 地元の経済効果21億9600万 詳しく』 配信 2023年6月13日
https://www.nhk.or.jp/miyazaki/lreport/article/005/31/


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