【新しい働き方研究】2021年10月20日(水)
現在「新しい働き方LAB」の第一期研究生として妊娠中の働き方について研究しています。
■今日の体調
★★★☆☆
■合計作業時間
0時間
■作業内容
なし(ただし作家の仕事はした)
■今日工夫したこと
今日からいよいよ臨月に突入する。
体調も悪くなく、日中も涼しかったので少し遠いドラッグストアに歩いて出かけた。
歩きながら鼻歌で『戦場にかける橋』の曲『クワイ河マーチ』を歌った。
映画の内容は詳しく知らないが陽気な口笛が特徴的なあのマーチを臨月突入の今日鼻歌で歌いたくなるというのは私の中でエネルギーが高まっているのかもしれない。
■日記
「なんだか体調が悪い。生理前だからだろうか。でもこれまでかなり正確に来ていた生理がもう1週間も遅れてる」
と思い、妊娠検査薬を使ったのが2021年3月12日の金曜日の夜だった。
数日前から体調が悪いことは夫に伝えてあり、「今週の金曜日までに生理が来なかったら一度妊娠検査薬を使ってみよう」ということになっていた。
金曜日、昼間に薬局で購入し夜夫が帰宅してからトイレに行く。
妊娠検査薬はこれまでに何度か使ったことがあったが、この日初めて陽性が出た。
「おぉ〜……」
しばらくの間は二人でその陽性マークを眺めるだけだった。
「これ(妊娠検査薬)正確なのかな?」
初めて見る陽性のマークに私は混乱しながら夫に尋ねる。
「パッケージに『99%の精度』って書いてあるぞ。とりあえず明日の午前中近所の産婦人科に行こう」
「一緒に行ってくれる?」
「いいよ。俺も一緒に行く」
私は今までに行ったことのある産婦人科の内装を思い出す。
ピンクを基調としたデザインのところもあれば、リラックスできるような演出にこだわっているところもあった。
いずれにしても産婦人科は通常の病院とは異なり「幸福感」もっと言えば「女性の幸せ」に満ちた空間だった。
確かに不妊治療で男性が行くこともあるのかもしれないが、それでも男性には入りにくい雰囲気なのではないか……と個人的には思う。
「男のマーク君が産婦人科に行くの、嫌じゃないの?」
「なんで?」
婦人科というものに行ったことがない夫は私の問いの意味が分からないようだった。
翌日の午前中、予定通り近所のクリニックに行く。
予想通りピンクを基調とした待合室のソファに二人で座る。
名前を呼ばれ、診察室に入ると男性の先生がいた。
「昨日の夜妊娠検査薬を使ったら陽性が出て」
すでにパニックになりうまく話せなくなっていた私に代わって夫が状況を説明する。
じゃあ確認してみましょうということでエコーで撮影するために私は婦人科特有の「あの台」に座った。
夫は台に座っている私の隣に立ち、エコー映像をのぞきこむ。
確かに黒い点のようなものが映っていた。
「あ、いますねー。これです」
カーテン越しに先生が映像の説明をするのを二人で聞く。
「はい、確認できましたので台から下りてください」
先生の指示通りに私は台から下り、パンツとスカートをはき、診察室で最初に座った椅子に戻る。
「最後に生理が来たのいつ?」
「2月5日です」
「変な出血とかはない?」
「ないです」
「他に体調が悪いところとかは?」
「体がものすごくだるくて熱っぽいです」
「お腹の痛みとかは?」
「少しあります」
「腹痛は流産の可能性もあるので注意してくださいね。しばらくは安静に過ごしてください」
「え、私妊娠してるんですか?」
台の上で「あーいますねー」と言われていたにもかかわらず、ここまで来ても私は自分が妊娠していることを理解できていなかったため「流産のリスク」について言われた時にも驚かずにいられなかった。
先生の「あーいますねー」も「何がいるんだろう」という気分だった。
「だって昨日妊娠検査薬で陽性出たんでしょ?」
「あれってそこまでの精度なんですか?」
この時夫が初めて驚きをあらわにする。
妻が妊娠していることについて驚くことはすでに一人で済ませ、この段階にきてもまだパニックになっている妻の隣でこういう「モノの機能や性能」について驚くところは夫らしい。
「あれで陽性が出たなら妊娠してます」
「すげぇ……」
私も妊娠している事実よりも「妊娠検査薬の精度」に驚いき、夫と異口同音に驚きを口にする。
「それにここに写ってるし」
エコー写真に写っている黒い点を指しながら先生は淡々と説明する。
診察室に入った時から淡々としていた先生の口調もだんだん「この夫婦大丈夫か」というものに変わっていく。
「とにかくこれからしばらくは体調が不安定になると思うんで無理しないように。次は2週間後くらいに来てください」
2週間後のスケジュールをチェックするとその週にはモデルの仕事で東京に行く予定が入っていた。
「その週に仕事で東京行く予定があるんですけど行っても大丈夫ですか?」
「具体的に何をする予定ですか(肉体労働とかではないですか)?」
「目黒川でお花見クルージングツアーをする予定です」
「最初から最後まで一つもOKな部分がねぇ!」
横から夫がつっこみを入れる。
ここまで淡々とした雰囲気を保ち続けていた先生もついに苦笑を浮かべ、
「東京コロナ患者増えてるよ……」
と力なくつぶやいた。
最後に先生にもう一度「無理はしないように」と念を押され私たちは診察室を後にする。
「子供ができたね」
「そうだな」
私は事実を把握しながらもだからこそ頭の中が真っ白になっていたが、夫は落ち着いているようだった。
しかも私が懸念していたような「女の空間」に行くことには全く抵抗がなかったらしく、先生に指示された2週間後の検診にも夫は有給をとって一緒に行ってくれた。
その頼もしさが嬉しかった。
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