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あらすじ
　隕石による世界の破滅は現実となる。腰に居る妖怪のオオトカゲと話す事ができた、玲子は一時的に無敵の力を得られるが、トカゲの力がなくなれば普通の少女に戻ると告げられた。隕石落下の脅威により、地霊達が大量に出現をして霊障で町中の人間が動けなくなる。

「玲子　？…………武雄君も居るのね」
　舞子の玄関先には荷物がある、彼女は家族と一緒に待避所への出発の準備が終わっている。舞子まいこは、私と武雄を応接間に招き入れた。お金持ちの舞子まいこの応接間は居心地が良い、清潔で素敵な家。舞子まいこが私達に座るようにすすめてから、彼女は刀を持ってくると言い残して、応接間を出て行く。

「刀の事を教えてくれ」
　武雄が知らない刀の話をする。日本武尊やまとたけるのみことの大蛇退治だ。その時に壊れた剣つるぎから作られたのが、大蛇丸おろちまるだ、舞子の蔵の中にある神具の一つだと教える。

「それでかなえを……まさか……」
「そんな事はしないわ、ただ彼女の力を無力化できるかもしれない」

　私が刀を使えるわけもない。一種のお守りとして持っていれば、かなえからの呪縛にも抵抗できると予想していた。舞子まいこが静かに扉の戸を叩く。

「どうぞ」
　私が返事をするとドアが静かに開いた。舞子まいこが白い布に包まれた刀を持って部屋に入る。

「これが大蛇丸おろちまるです」

　予想をしていたものとは違う。小刀に見えた。時代劇で見るような女性が所持できる短めの刀。懐刀ふところがたなよりも長いが、チャンバラでみるような日本刀ではない。

「これで、かなえを倒して」
　舞子まいこが私たちを見る。

「かなえを倒せば隕石を止められるの？」
　私は舞子まいこの冷静な目を見る。世界を救う方法は大蛇丸おろちまるを使う事と信じている。私はどう使うかは、決めていないが舞子まいこに手を差し出した。

「約束よ、武雄たけお君を私にください」
　武雄たけおが息を飲む、私は差し出した手が震える。力を失ったように私を手を降ろす。今この時に、恋人が欲しいと願う友達。それも自然に感じる、私の思考の流れが止まる。武雄たけおが口を開いた。

「舞子まいこ、本当にそれでいいのか？　」
　舞子まいこは武雄を見つめる、何も言わない。武雄たけおが拒む事すら予想していない、彼女は世界が終わる事も、恋人を得る事も全ての運命が決まっている、と信じたかった。

　ぽろぽろと涙を流す舞子まいこは、嗚咽を漏らす。
「死にたくない……みんなともっと一緒に……」
　大蛇丸（おろちまる）を胸に抱きしめて泣く舞子まいこを、私は責められない。みんなが幸せだった学校の毎日、かなえを倒せば戻れると信じたい。絶望的な世界で唯一願ったのは、武雄だった。少女の願いは成就できない事も理解している。

「舞子まいこ、かなえを止めて見せる、本当よ」
　かなえが何をしたいのかは判らない、もし本当に世界と一緒に、かなえ本人も消えたいのならば全力で止める、かなえの命を絶っても止めなくてはいけない。

　舞子まいこは、うなずくと刀を私に向けて差し出し丁寧に彼女から刀を受け取る。私が立ち上がると同時に舞子は私のそば立つと、私の体に腕を回す。

「お願い……みんなを助けて」
　私の肩に顔をつけて泣く舞子まいこの髪の毛をなでた。妹を思い出す。
「大丈夫よ、怖くない、私がなんとかするから安心して」
　確証も保障もない、でも私は自分の万能感に酔っていた。なんでもできる、みんなを助けられる。きっと助ける。