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闇闘技場 剣闘士マリウスシリーズ

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あらすじ
ティベリウス家の女主人アレッサンドラは、借金を返さない男の暗殺を命令する。その場に居た奴隷の少女アウローラをマリウスは見逃す。暗殺成功の報酬に奴隷女の所有が許された。アウローラを手に入れる。

空は晴れていた。今日は闘技場で勝負を命令されている。俺は時間が来るとゆっくりと歩き出す。闘技場が見える。砂がまかれている闘技場とそれを上から眺める観客席がある。主人のアレッサンドラが俺を見ていた。

炎天の闘技場の中で俺は相手と対峙する。お互いが剣と盾だ。試合開始の合図で剣を交えた。盾にガンガンと剣が当たる。力業にも見えるが左手の疲労を誘える。俺は力を抜きながら最小限の力で対応した。

俺は盾で剣を受けるとぐるりと回転をする。その時に剣がどこから出現するか相手には予測できない。下段で太ももを切ると、もう一回転する。相手は上段を予想したのだろう、盾を上で構えた。俺は同じ太ももを狙い、深く切り裂く。鮮血が止まらない。審判役が「マリウス」と声を上げる。

闇闘技場は私的な集まりだ。一般的な大競技場での戦いとは異なる。賭けが中心で殺し合いをしない。勝敗が判ればその場で止めた。死んでしまうと貴重な剣士を失うことになる。ただ賭け値が大きい場合は別だ。死に物狂いで反撃をすれば、逆転する事も可能だ。

「殺すまでやれ」貴族が大声で怒鳴る。ティベリウス家の女主人アレッサンドラは俺にうなずいた。死を覚悟した相手は体当たりを試みる。闘牛を避けるようにステップを踏みながら回転をする。後頭部の下、延髄付近に剣を入れた。無言のままで相手は倒れる。

「賭け値の倍を出す、次の試合をしてくれ」貴族は金よりも負けた悔しさがある。再試合を要求する。アレッサンドラは「三倍なら受けるわ」ちらりと俺を見る。俺は反応する気もない。拒否を出来ないからだ。貴族は心臓の鼓動が十回を数える間は考えた。「それでかまわん バーズを出せ」と命令する。

倒れている剣闘士が運び出される。俺は次の試合相手に備えて疲労度を確認する。目の端でアウローラが立っているのを確認した。変わらずに虚無の目を俺に向けている。あの寝台の下の頃と変わらない。

続く


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