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かなえの消える日(14/16)【窓辺の少女_かなえの消える日】

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あらすじ
 隕石による世界の破滅は現実となる。腰に居る妖怪のオオトカゲと話す事ができた、玲子は一時的に無敵の力を得られるが、トカゲの力がなくなれば普通の少女に戻ると告げられた。舞子まいこは、玲子にかなえを倒して欲しいと龍を倒せる宝具の大蛇丸おろちまるを渡す。玲子は世界もかなえも救うと決心した。

「これでは……オロチで、みんな死んでしまう」
「なんとかここを守らないと」
 私は八重を美成みなりにあずけると走ってくる男たちの前に立つ。血まみれの男たちに恐怖しか感じないが、私は大トカゲを信じる。腰が熱くなると体に力がみなぎる。両手を彼らの前に突き出すと、力をあふれた。

 無音で体全体が振動すると目の前の男たち全員に衝撃が伝わる、ばたばたと倒れる男たちに一種の快感を味わう。これが万能感の正体だ。トカゲから貰った力は絶大だった。

 倒れた男たち避けながら一人の少女が歩いてくる。かなえだ。私はかなえにも力を使うべきか悩む、ここで気絶させれば隕石は………止まるの? 

「――玲子…………そこをどいて、ヤマタノオロチを使うわ………」
「ダメよ、隕石を止めないと……」
「そんな祈祷じゃ止まらない、私をにえにしてオロチに力を与える」

 かなえは説明してくれる。ここを囚人たちに襲わせて十分に血を流させた。最後に自分の体を使い、オロチで隕石を止める。そして自分は死ぬと。

「――あなたが隕石を落下させるんじゃ………」
「なんでそんなことをするの? 」
 不思議そうな顔をして笑う、無邪気な少女の顔だ、私は勘違いをしていた?

 天之宮春子あまのみやはるこが口を開く。
「オロチは災いの龍、そなたをにえにしても願いを成就するか、わからぬぞ」

 かなえは嬉しそうに笑う。
「大丈夫よ。母が教えてくれた、天竜になり隕石に突撃すれば止まるの! 」

 オロチと一体化したかなえが世界を救う? 私は震える足で立っていられない。かなえは両手を広げながら護摩壇ごまだんに登る。カッターを出すと自分の胸元を開く。

「――待って、あなたが死ぬのよ! 」
 私は叫ぶ。

「何もしなければみんな死ぬわ! 」
 かなえは、自分の胸を突こうとすると誰かに押されたかのように後ろに倒れる。遠くで銃声が聞こえた。狙撃だと直観する。私はあわてて護摩壇ごまだんに登ると、彼女の名前を叫ぶ。

「かなえ! かなえ! 」
 彼女は笑いを浮かべたまま倒れていた、彼女の胸から血があふれる。血が止まらない、ハンカチを当てるが止まらない。米軍はかなえが犯人だと誤解をした、彼女は彼女なりに政府を動かして、霊能者たちを集めて、日本を救おうとした。

「誰か助けて! 」
 知っている、誰も助けられない。隕石は止まらない、かなえは、このまま死ぬ。みんな死んでしまう。私は大粒の涙を流す、誰でもいい、助けて。ここで、かなえが死ねば、オロチは誰の命令で動くの? 

「お願い、かなえ死なないで、私の命をあげる、本当よ」
 願いは届かない、遠くから強い風が吹いてくる、台風のような気圧が変化する気配を感じた、上空を見上げると小さく赤く染まる火球が見えた、この場所に落下する。すべてを消し去る、私はかなえを抱きしめる。米兵も逃げ出す。残った霊能者達は呆然と空を見上げる。祈祷きとうでは止めらない。

「――お願い、誰か助けて…………」
「私が止める! 」

 私のそばに誰かが立っている。カナエだ、私が転移した魔女の国。かなえを少しだけ幼くした魔女のカナエが立っている。


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