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大闘技場2 剣闘士マリウスシリーズ

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あらすじ
ティベリウス家の女主人のアレッサンドラから、魔獣を闘技場で倒せと命令をされる。マリウスは専属奴隷のアウローラと戦えるように頼む。

同じ奴隷剣士のヤコポが俺に近づく。
「殺される前に貸してくれよ」
不器用に無感情に、専属奴隷のアウローラとさせてくれと頼む。もう何回目かは覚えてないが、執拗に彼女を狙っている。俺は頭を横に振る。ヤコポは頭が鈍いわけじゃない。他人の感情を考慮できない。いや他人がどう思うかを理解できない、ひたすら自分の望みだけを要求する。

俺は闘技場から戦う場所に進む。中心部への出口付近にはアウローラが座っている。落ち着いていた。背も伸びてすっかり大人に見えるが顔はまだ少女だ。近くに同じ剣闘士仲間のリッカルドが居る。

「見せて貰うぜ」
ここからなら特等席かもしれない。俺は苦笑いをしながらアウローラに目で合図をする。彼女はすっと立つと俺の背後からついてくる。外は青空で白い雲も見える。午前中の犯罪者の処刑が終わったばかりなのか血の臭いが濃い。

暗い通路から外に出ると目がくらむ、大歓声が響くと今日の出し物で興奮をする観客が騒いでいる。遠すぎて見えないがアレッサンドラも居る筈だ。俺は特別に作らせた武器を持つ。

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所定の位置で待つとラッパが鳴らされた。しばらくすると地下に通じる落とし蓋が開く。ゆっくりと何かが上がってくる。巨大な犬?狼か。黒い毛が混じるその獣は顎がやたら長く大きい。狼とは別の生き物に見える。体長は人間の倍を越えていた。ほぼ雄ライオンの二倍だ。

想定外の生物だが、ライオンと思って戦うしかない。
「後方待機」
アウローラはタワーシールドを地面に立てると隠れる。俺は小さな盾のバックラーでは防げないと判断すると魔獣に向けて投げた。俺が身長を超えた槍を魔獣に向ける。

魔獣は盾を気にせずに俺の真正面から突進してくる。頭を横に向けると顎を大きく開けた。槍で切る動作をすると、大きな口が槍をくわえて砕く。顎の力が強すぎる。槍を捨ててステップを踏みながら懐に飛び込む。顎を縦にして噛もうとするが、魔獣は大型の獣を捕食しているのだろうか、小さな敵に噛みつくのが不慣れに見えた。ためしに片手剣で魔獣の体に突き立てるが剛毛で傷すらつかない。

アウローラが飛び出す、魔獣の尻に近づくと軽々と飛び乗る。彼女は両手を使って片手剣を背中に突き刺す。暴れる魔獣は飛び乗った少女を落とそうと暴れるがぐるぐる回るだけだ、馬のように跳ねる事はしない。

俺はタワーシールドまで戻ると、盾をもって魔獣に突進する。盾に装着してあるハンマーを手に取ると盾を魔獣の顔にぶつける、巨大なタワーシールドをかみ砕くほどは口は大きくない、狼の一種なのだろう、前足は発達していなかった。これがライオンならば前足で俺はズタズタになる。

俺はハンマーで下顎を殴りつけた。手応えがある、歯が飛び散ると魔獣の血が流れた。俺はタワーシールドから手を出して殴り続けた。魔獣がタワーシールドにのしかかる。魔獣の体重で盾は折れ曲がる。シールドから離れると血だらけの口はもう使えそうにない、激痛もあるのかふらふらと立っている。

魔獣に向かってハンマーを投げると同時に右に回り両手剣で胸あたりを刺すが刃があまり入らない。何回も刺すと剣が折れてしまう。武器はもう無かった。魔獣はもう立ってるだけで攻撃もしない。馬乗りで背中に居るアウローラは剣を数本突き立てていた。どす黒い血で彼女も濡れている。

魔獣はゆっくりと倒れると、アウローラは飛び降りた。観客は立ち上がりながら少女に喝采を送る。アウローラは嬉しそうに両手を挙げていた。俺は知らなかったが元老院のフェデリコは彼女を見て驚愕していたと言う。

俺は、ただこの魔獣が貴重な生き残りじゃないのかとぼんやり考えていた。こんな獣を見るのは初めてだった。

続く

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※絶滅したアンドリューサルクスを登場させています。


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