見出し画像

鬼退治 (13/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話

あらすじ:鬼の策略さくりゃくで海の底に沈む幸蔵

「この島に、強い鬼がおるぞ」
しずかは、おりましたか」

 仙人があごで位置を教えてくれた。島の中央に巨大な瓦屋根やねがわらが見えた。鬼達がそこで暮らしている。

「私が行きます」
「お前一人じゃ難しそうだ、どれ仙丹せんたんをやろう」

 白い丸薬がんやくは親指ほどの大きさだ。幸蔵はそれを無理して飲み込んだ。仙人は面白そうに笑うと「ためらわずに飲んだのはお前だけだ」

 幸蔵の体から覇気はきがあふれる。すべての攻撃を防ぐ不老不死の薬、仙人になるための薬は、人を超えて人に戻れぬ力を得る。あふれる力で自然と声がでる。

「おぅ」

 一声叫ぶと鬼の城に突入する。万能の力はすべてを把握できる。鬼王が居る、王居おうきょの天井を蹴破けやぶった。王居おうきょには、肌が真っ赤で身の丈は人の何倍もある鬼王が、幸蔵をにらみつける。幸蔵はひるまずに鬼王に向かって怒鳴った。

しずかを返せ」
「ふむ、力を得た小僧か、どれ試すか」

 大樹のような巨大な金砕棒かなさいぼうで、幸蔵こうぞうの頭を打つ。

「痛くもないのか……」

 幸蔵こうぞうは自分でも驚いていた、仙丹せんたんの力は絶大だった。頭の上にある金棒を奪い取ると鬼王の頭に振り下ろした。ぐしゃりとした感覚と鬼王が血まみれの肉塊になり、幸蔵こうぞうが自分は人でない事に気がついた。

「仙人になるとは、そうゆう事だ」

 仙人が降りてくると幸蔵こうぞうの肩を叩く、まだ子供の幸蔵こうぞうは巨大な鬼よりも強い力を得ていた。

鬼王

#昔話
#天狗
#創作民話
#幸蔵の旅

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?