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大ヤモリ(09/15)【窓辺の少女_かなえの消える日】

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あらすじ

 隕石による世界の破滅を感じる玲子は、かなえに呪縛された妹を助ける。舞子まいこが家に訪れると、かなえを倒して欲しいと頼まれた、大蛇丸おろちまるで龍を退治して欲しい。舞子まいこは日本人の一部しかシェルターに入れない事を告げる。玲子は迷うが承諾をして代償として従兄の武雄を舞子まいこに譲る事を納得した。

 床を見ると土だ。玄関ではないと直感する。顔を上げると大木がある。大きなトカゲがその大木に張りついていた。

「滋養を与えてもらい礼を言いたい」

 ヤモリだ。私の腰に封じられたヤモリと同じなのか?その巨大さは通勤列車の一両分はある。私は周囲を見回しても誰も居ない。回りは森林しか見えない。大木に、はりつきながら大ヤモリは私に力を与える話を始めた。

「この地が消滅するのは私にも気配で判る」

 大ヤモリは自分の消滅はあまり気にしてない様子だ。何千年も人間の体を間借りして移動を繰り返してきた、彼は十分長く生きている。執着が無いのだろう。

「礼とかいいわ、私はあなたの力で助けられている」

 ヤモリは様々な怪異をキャンセルしてきた。悪魔を召喚した魔方陣すら破壊できた。でもヤモリは封印されていて私を恨んでいなのか? 彼は苦痛があるのか聞いてみた。

「いや単に力を得られて嬉しい、そなたに痛みを与えてすまぬ」

 ヤモリは私のために大きな力を与えると約束をする。人間程度ならばヤモリの防御の力で無敵になれる。

「えええ、そんなに強くなるの?」
「私が蓄えた力が無くなれば終わりだがな」

 私はヤモリにお礼をするとまた目眩がする。ぐらりと体が傾くと子狐が私を支えていた。

「重いです」

 失敬な子狐だ。まぁ子供だから仕方が無い。玄関のドアが叩かれた。私はふらふらしながら、ドアを開けると母親が玄関先に立っているが具合が悪そうだ。

「玲子? 愛優あゆは居る? 」

 母は私に向かって倒れ込む。お…………重い。人間の体は重いのを理解した。母を居間のソファまで連れていくと寝かす。

「なんか体調が悪くて……」

 土地の死霊の影響が出ている。黒いスズメが大量発生しているので触れられると体調を崩す。今は一般人は外に出られない。

「どうしよう、お父さんも倒れているかな………」
「大丈夫よ、電話で会社に閉じ込められているって聞いた………」

 今は電車すら止まり始めている。母は私達が心配で無理して絵画教室から戻ってきた。

愛優あゆ、おかあさんを頼むわ」

 今はかなえと会って話を聞きたいが、舞子まいこから大蛇丸おろちまるも受け取らないといけない。スマホを取り出すとSNSで連絡を取ろうとするが通信状態も悪くなり始めた。

 愛優あゆには八夜狐やよきつねや犬神、子狐が居るから現状では無敵に近い。ただ、かなえだけには勝てない。もし愛優あゆが催眠状態になると大変まずい事になる。今はかなえと話がしたいのが本音だが、場所を特定できない。

「武雄と相談しないと………」

 私は玄関から外に出ると大量の黒い雀が空に舞い上がる。公園の方から不気味なサイレンが鳴り出す。スマホが震えると「日本国尊厳維持局からのお知らせ」のメールが来ていた。

続く


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