見出し画像

南極からゴールを見届けてみたかった。南極観測船しらせを衛星で追跡する。

JX通信社 FASTALERT事業責任者の藤井です。FASTALERTは報道機関や自治体、インフラ関連企業などにソーシャルメディアを中心としたビッグデータで事件・事故・災害の情報をリアルタイムに配信する法人向けサービスです。性質上、凄惨な映像を目にすることも多く、最近でも土砂災害、鉄道内の事件、大きな火災など、みなさんがメディアで目にしているニュースの第一報で、多く用いられています。

一億総カメラマンの時代に、まさにそれを体現するようなサービスをしている弊社ですが、一方、それでも残る「プロの報道」の役割とはなんだろう、ということを最近考えていました。
私自身は放送局出身者ですので、多分にいわゆるテレビキャスター全盛期のテレビ報道の影響を受けています。

JX通信社は元々、「報道の機械化」によって、既存の報道業界のビジネスとしての持続可能性を確保し、より「人間にしかできない分析」に力を注げるようにしよう、というビジョンを掲げてきました。最近では、自社で情報発信をする機会も増え、またデータそのものを加工してビジネスに直接活用いただくシーンも出てきたため、ビジョンの改訂が行われましたが、報道分野における我々の存在意義は、本質的には変化していないと思っています。

データジャーナリズムという武器をもち、論説分野では(代表の米重が選挙動勢の分析で高い知見を持つことを除けば)おおむね武器を持たないJX通信社は、「多様な視点」「いままでなかった視点、分析」を提供することが、社業と「報道が持つ使命」の交差点だと思います。

そんな中、我々が今年得たのが、「宇宙からの目」という、新しい視点でした。

アクセルスペースさんとの協業開始以降、熱海の土砂災害、福徳岡ノ場噴火、世界各地での地震・竜巻など、さまざまな災害がありました。
一方で、私が思っていたのは、痛ましい映像をお届けすることが多い「FASTALERT」で、何か「今まで誰もみたことがなかった視点からの映像」をお届けすることができないか、ということでした。前澤さんが宇宙旅行中のそんな中、社内スタッフのアイデアもあり、実現したのが、「南極観測船しらせが南極に着くところを見てみよう」というものでした。

JX通信社のニュースアプリ「NewsDigest」は、新型コロナ関連情報や災害情報に強いのが売りですが、社会派ニュースアプリとしてより拡張して、SDGsタブを作ったり、 さまざまな取り組みを試みています。そんな中で、南極という象徴的な場所にみんなの注目を集めることは、新しい視点が得られるのではないか、というアイデアでした。

南極観測隊は「越冬隊」が次の越冬隊を待つ、というスタイルで、今回も第62隊と63隊の引き継ぎが行われていますが、南極は周辺も氷に閉ざされていて、観測船は氷を砕きながら近づいていき、とりあえず人間はある程度近づいたらヘリコプターで昭和基地に入り、その後、時間をかけて接岸していきます。

従って、南極に近づく「しらせ」を陸地からじっと見ている、という映像は実はほとんど見たことがありません(しらせ自体にヘリが搭載されているので、空撮映像はあるのですが、出迎える映像ではないですよね)。たぶん、ペンギンさんぐらいしか見たことないんじゃないのか。

個人的な思いですが、私は日テレの「見たい、が世界を変えていく。」キャンペーンが好きです。野次馬根性、とか言われることもあるマスコミですが、そんな生半可なものでは、エベレストの山頂まで機材を担ぎ上げて世界初の中継を実現するなんてことはできません。

今回、印象的な映像を得ることができて、良かったと思います。極地研の広報の皆さんにもいろいろとご指導を賜り、Twitterでもリツイートをいただいたみたいで、嬉しい限りです。これからも、さまざまなテクノロジーの力を借りながら、人間の「視点」を増やすために何ができるか、考えていきたいと思います。

自分の仕事(地方自治、防災、AI)について知ってほしい思いで書いているので全部無料にしているのですが、まれに投げ銭してくださる方がいて、支払い下限に達しないのが悲しいので、よかったらコーヒー代おごってください。