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ロッテルダム国際映画祭 10日目





あまり気持ちも体も落ち着かないまま今を迎えています。





既にSNS等で沢山流れている通り


僕たちの映画『莉の対』

International Title "Rei"

は第53回ロッテルダム国際映画祭の最優秀作品賞である、タイガーアワードを受賞しました!!


大丈夫です。

ただのシンデレラストーリーです。








嘘つきました。

だいじょばないです。

おもいっきりシンデレラストーリーです!





時差があるのに日本からのメッセージもいっぱい届いていて、M1優勝したんかな?ってM1優勝したことないくせに思っています。

こっちでインタビュー記事に答えたり動画を作ったりで急がないといけない案件が溜まっていて全然返せていないのが現状ですが、お祝いのコメントはもう本当に嬉しいです。全員に返しますね。





少しだけ時を巻き戻します。


フローニンゲンから帰ってくるとすぐに僕と彰夫は、定宿を出発してホテルに移動しました。

2月からの滞在先はロッテルダムが用意してくれた、ヒルトン(最上階だったぜイェーイ 笑)!!


部屋について荷物を置くと、すぐに身支度を整えました。

授賞式まであと、約1時間。



彰夫から、


「どうっすか。今の気分は?」

って聞かれて。

お腹の中に重い塊のようなものがどっしりとある感覚があって、それを言葉にするのは少し時間がかかったけど出たきた言葉は


「怖い かなぁ」

でした。

これまでクルーやキャストや応援して下さっている方々と沢山の信じられないような奇跡の連続を体験してきて、一緒になって夢を見続けてきました。ロッテルダム国際映画祭に選ばれた事でその夢は大きく広がりました。

もし

何も賞がとれなかったら、みんなから夢を奪ってしまう。夢の終わりを見させてしまうのが怖い。

って思ったんです。

もっと自己中心的に考えると、みんなからガッカリされるのが怖かったのかもね。みんなに期待させまくってきて、それが実現できなかった時の反動って怖いやん?


ロッテルダムに来て最初の数日は『莉の対』のワールドプレミアの事で頭がいっぱいで、他にも次の作品に向けて何か得れるものはないかと映画祭を駆けずり回っていました。徐々に映画祭にも慣れ、上映も終わるにつれて、賞レースの事が頭にチラついて来ました。


人生を変えるためにこの映画を作ったんです。


全財産使っても足りなかったし、全ての時間も心も捧げてきました。

正直、もう人生変わったし、投下した時間もお金も『経験』という何ものにも変え難いものでの十分過ぎるほど見返りがあったからもう満足なんですが

だけど、ロッテルダムに来て、「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」と雄叫びを上げるようなミラクルはまだ起こってなかったんです。

チケットが完売したり、お客様からの反応が良かったり、スーツを着てフォトセッションがあったり、毎晩のように交流イベントがあったり、メンターの方々とセッションがあったり他の映画制作者と出会えたり、別の映画祭のプログラマーから声をかけてもらったり。それはそれはもう夢のような世界でした。

大きく前進はした。だけど、劇的ではなかったかなって。

それでもマジで全然良いんだよね。俺たちはゆっくりじっくり前進してきたから。



でも、グランプリ獲って帰ったらおもろいじゃないですか?笑



とか色々考えてたらただのソワソワうろうろするブリキみたいになっていました。


せっかくのヒルトンに感動する程の心の余裕もなく

僕たちはスーツに着替えて、一応カッコだけつけときました。

授賞式前の見栄を張っている男の背中


そして、ホテルを出発し、会場入り。



授賞式自体がもうエンターテイメントなんだよね。

一つ一つの賞が、ノミネートされた作品紹介を交えながら発表されていきました。

全部で賞は7つ。


FIPRESCI Award 国際映画批評家連盟賞
NETPAC Award 最優秀アジア映画賞
Youth Jury Award 若手審査員が選ぶ賞
VPRO Big Screen Award ビッグスクリーン賞

そして、僕たちのタイガーコンペティション部門からはこの3つ

Tiger Competition Special Jury Award × 2
Tiger Award


上から順番に発表されていったのですが、僕たちはFIPRESCI Award とNETPAC Award にもノミネートされたので、おいおいマジかよ!と思いながら前半から心臓が飛び出るくらいドキドキしていました。

素晴らしい作品だからこそこの場にいれている訳で、そう簡単に賞を獲れるわけもなく、いくつかの賞を惜しいところで逃していきました。


そしていよいよタイガーコンペ部門。

審査員特別賞の2つと最優秀賞であるタイガーアワード。



やっぱ俺の心に

少なくとも審査員特別賞は頂きたい!!!

という思いが芽生えなながらも

グランプリじゃないと意味がない!!!

などともうはち切れんばかりに期待と不安が入り混じり、なかなか渋い顔をして座っていたと思います。


受賞作のタイトルがコールされる直前に、その作品の事やなぜそれが選ばれたのかの説明が入るんですよ。

審査員特別賞の発表の時に、説明を聞いて一瞬で分かるんです。

「それ俺らちゃうねーーーーん」

て。



2つの審査員特別賞が別の作品に授与された後の、タイガーアワードの発表の時はもう本当にドキドキしました。これ逃したら、賞ゼロやで?という重みがエグかったです。

そして、審査員長のマルコミューラーさん(ロッテルダム国際映画祭で長年ディレクターを務めてきた、この業界でも本当に権威あるお方でとても著名な方)が言葉を発し始めました。



The jury decided to give the Tiger Award to a burgeoning film director who chose to develop his debut film in a loose and unbounded environment.


ん?his debut film in a loose and unbounded environment?



His strength relies on a collaborative environment centred on the actors, an attention to the power of recitation……


へ・・・


but which typically resist acting as the power of the different chosen locations slowly emerges.


え?うそやん。え、これ、まじ?え!?









And The Tiger award goes to ……







うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!


巨大なスクリーンに僕たちの映画が映し出されたと同時に、全員で立ち上がり叫びました!!!



もちろん選ばれた瞬間の喜びは筆舌に尽くし難いものがありましたが、それ以上に、マルコさんの説明を聞いてる時の

え、もしかして。。。?

感の時の電気が身体中に走るような感覚が凄まじくて心に残っているんですよね。


全員で抱き合いながら「よっしゃ!!全員でステージに登るぞ!!!」って言ってみんなでステージに向かいました。


すると、前方に

ずっと僕たちによくしてくれたHayetが立っていたんです。


I knew it. I knew you would will from the beginning!
(私には分かっていた。初めてあなたにあったその日から、あなたが賞を獲るって分かってたわ!)

と言って僕を抱きしめてくれた時、一気に涙が溢れてきました。

嬉しかった。

僕はこの人と会えたことがロッテルダムでの一番の財産だと思っていたから。

僕たちを本当に親身になって可愛がってくれた。いつも笑顔で、ぐさっと厳しい言葉も言ってくれた。だから信頼できた。もう僕たちのチームに入って欲しかった。でも彼女は映画祭側の人間だからそれはできないけど、僕としては何か恩返しもしたかったんです。だから、彼女からその言葉を聞いた時嬉しくて嬉しくて。そんなん泣くやん。


今思い返しても泣ける。







そして全員で登壇して、念願だったタイガーマークのトロフィーを受け取りました。





彰夫にバトンを渡し

彼の一言で僕たちの受賞を締めくくりました。




これが俺の念願だったんです。

この男に世界を見せたかった。




決して作品の力だけでとった賞じゃないと僕は思っています。

俺たちの事を愛してくれたクリステティーナにも
映画祭のディレクターのバーニャさんにも
心から感謝しています
ロッテルダムから俺たちのチームになった
通訳のShione
ライターのSayuri

みんなの力で獲ったタイガーアワードなんだよ!!!!!!

最高かよ!!!!!!!!!!







ほんっとに。もう。


「人生で一番の感動」と言える程の大きな感動の渦を感じました。

そして、それは僕だけじゃなくて

キャストやクルーのメンバーも同じくそういう風に言ってくれました。




すごくないですか?




僕は人に感動を与えられたんです。





そんな嬉しいことある?





誰かの役に立つことができたんよ。
















今朝起きてリビングに来たら




ちゃんとタイガーちゃんが逃げずにおってくれて安心しました。




夢じゃなかった。






夢の始まりはこれからだ。

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