『そばかす』 見ました

11月3日 文化の日。
新百合ヶ丘の川崎アートセンターで行われていた新百合ヶ丘映画祭に行ってきた。目当ては、「そばかす」。
主演の三浦透子さんが気になって見てみることにしたけど、作品自体も素晴らしくて、一気に監督の玉田真也さんのファンにもなった。

ドライブ・マイ・カーを見たときの最後の最後に韓国で車を走らせている三浦さんのシーンが印象的で、いいな〜とふんわりと思っていた。
そして、この間Netflixで見ていたペンションメッツァの最後のエピソードでもう一度見たときにやっぱりこの人いいな!好きだなとも思って調べてみた。
そしたら、初主演映画が新百合ヶ丘の映画祭りで放映されるということを知った。しかも、ゲストスピーカーで玉田監督も来てくれるという、豪華さ。

映画について

まず、三浦透子さんの画力の強さが際立っていた。
三浦さんには何か求心力のようなものがある。見ている側の目を離させないし、飽きさせることがない。次のシーンがどうなるのか、彼女がどんな表情をするのかが気になる。やっぱり私は三浦さんの演技が、三浦さん自体が好きだと再確認した。
玉田監督も、そこが三浦さんのすごいところだと言っていた、どこを映そうか迷ったら「三浦さん」映しとくか!となるらしい。これを助けて三浦さん理論と呼んでいたのが面白かった。
なんとなく現場の和気藹々感が伝わってきた。

そして、ストーリーやセリフ、脚本が無理なくところどころに笑いの要素もあって心地よく見れた。息苦しくなるようなシーンがなく、軽やかに進んでいく感じ。
特に家族シーンの掛け合いが良かったのと、これは独特だけど会場の雰囲気自体も良かった。笑えるシーンで両隣のご夫婦がクスクスどころかケラケラ笑っていて、会場全体として素直に感情を出して見ている感じが楽しかった。そういうのも相まって、普通だったら泣かないようなシーンで自分の何かと繋がってすーっと涙が出てきた。
多分これが一般的な映画舘だったら泣いてなかったと思う。

あと、これは私なりの考察になるけど、かすみがチェロを弾くのを終わりにしたのは自分の声で話すことができるようになったからなのかなって思った。チェロが一番人間の声に近い楽器だってこと、そしてあの日の夜に自分の気持ちを家族に話したこと、前に進んでいくかすみ。それが沢山詰まった最後だった。走り出すかすみを見てああ私も走りたいー!!!ってなった。

監督のゲストトーク

最後に、ゲストトークが最高だった。
実は、こういう風に監督のゲストトークを聞くという体験が初めてだった。
だからそれにもワクワクしていて、予行演習として玉田監督についても調べたりしていた。し、監督が手掛けた他の作品も見て見たりしていた。
実際に生で見る監督は格好良かったし、一つ一つの質問に丁寧に応えていくその真摯的なお人柄が素敵だった。
言葉選びも秀逸だし、質問に対して的確に応えていて、監督ってやっぱり頭いいんだな〜とも思った。
もっともっと他の作品も見て見たいし、二月にある演劇も行ってみたい。

トークで印象的だった一つに、名前の呼び方があった。
なぜ三浦さんを抜擢したんですか?という質問に対して、
「主演の人柄を考えたときに、これを演じられる人は、これは”三浦透子”だなとなった」
という風にお話ししていて、いつも丁寧に三浦さんとか前田さんと呼んでいらっしゃったけど、そこだけ”三浦透子”と呼ばれていたこと。
それは、三浦さんを俳優という芸術部品の一つとして捉えているような感じがした。これはいい意味でだ。人間を超えて芸術の一部として成り立つ存在の”三浦透子”。作品と一体化して溶け合える存在であるということだ。
お芝居に対してかなりストイックで、作品の作り手の一人として責任を持って一緒に作り上げてくれる俳優さんという三浦さんだからこそ、”三浦透子”というものになれるのだと思った。

もう一つは、最後にこの映画を通して何を伝えたいかという問いに対して玉田監督がおっしゃった、
「この作品を通して、俳優の方々を知ってもらって、そして好きになってもらえたら嬉しい」
という言葉だ。
ああ、この人は人が好きなんだな、暖かな人なんだなということを言葉の節々から感じ取った。だからこそ、役者の魅力を巧みに引き出し、俳優らしさを残しつつもその物語の人物に自然に溶け合うような演技を一緒に作り上げられているのだと思う。
この映画の俳優さんたちは本当に魅力的だったし、映画を見ながら自分の周りの人々を思い出したりもしていた。

終わりに

映画が終わって、大好きな親友に手紙を書きたくなって便箋を買った。

高校の卒業式の日に、クラスでひとりひとりスピーチをする時間、「僕は卒業したら、音楽の専門学校に行きます。いつか、みんなが手に取ったCDやドラマのクレジットとかに小さく僕の名前があるかもしれないので、見てください。やっぱり、音楽って良くないですか?」と問いかけて音楽の道に走っていった友達を思いだした。
玉田監督も、三浦さんも本気で自分の好きなもの、作品と向き合って本気で走っているからこそ格好良くて誰かの心にこうやって芽を吹かせている。

本気でやり遂げたいし、自分に正直に生きたいと思った。
大切な人を大切に、それを伝えていく。



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