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スコットランドの子供たちへの思春期ブロッカー投与は禁止されるべき (翻訳記事)

ザ・ヘラルド(スコットランド)紙 "The Herald (HeraldScotland)"
8月23日付オンライン版
"Puberty blockers for Scots children must be banned"

By Azeem Ibrahim(アジーム・イブラヒム)

これ以上、専門家を装った活動家に最終決定権を持たせるわけにはいかない。先月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙に送られた公開書簡は、世間の注目を集めることなく終わった。

9カ国の小児ジェンダー医学のリーダー的専門家21人が署名し、性別違和(Gender Dysphoria)を抱えた未成年者には、いわゆる『ジェンダーを肯定する』ケア(Gender Affirmative Care)が最善であるという米国内分泌学会の声明に異議を唱えるために書いたものである。

「ジェンダーを肯定するケア(GATまたはGAC)」とは、ホルモン剤と手術が性別違和(Gender Dysphoria)の最良かつ主要な治療法であり、「自殺のリスクを低減する」と主張するものである。

専門家たちは言葉を濁すことなく、この主張は「エビデンスによって支持されていない」と述べている。専門家たちは、自説に合うような研究をチェリーピックで選び出すのではなく、精神衛生上のメリットのエビデンスが「確証度が低いか、非常に低い」ことを発見した、はるかに深いメタ分析研究を使用した。

思春期ホルモン阻害剤(思春期ブロッカー)や手術が未成年者にもたらすリスクは、永久的な不妊、後悔、生涯にわたる再手術やホルモン投薬への依存など、現実に存在する深刻なものである。さらに専門家たちは、性別変更が自殺を減らすという主張は、あらゆるシステマティック・レビューで矛盾していると書いている。内分泌学会のレビューでさえ、ホルモンによる移行が自殺を防ぐという信頼できるエビデンスは見つかっていないが、彼らはそれを推進することに何のためらいもない。

これは、スコットランド中のすべての親が、心の底ではすでに真実であることを知っていることだ。手術やホルモン剤が、子供たちを悩ませている根本的な精神的不調を解決する可能性は低い、ということを。

私たちは、過去20年間で性別による苦痛が約10〜20倍にも増加した世界に生きている。しかし、こうした感情の長期化に疑問を投げかけたり、メンタルヘルスの文脈で説明したりすることは、トランスフォビアであり、自殺を誘発するものとして非難される。思春期ブロッカーが助けになると信じるに足る理由がないにもかかわらず、両親は子供の自殺について脅迫的言辞に直面する。

ポール・マクヒュー博士がずっと前に指摘している。
「トランスジェンダーの感情を訴えた子供たちをヴァンダービルト大学やロンドンのポートマン・クリニックで医学的・外科的治療をせずに追跡調査したところ、70%から80%が自然にその感情を失っていた」

大半のケースでは、子供を愛し、医療的な介入をしないことが最善の方法である。しかし、英『テレグラフ』紙によれば、思春期ブロッカーを投与された子供の98%が異性ホルモンを投与されている。

ブロッカーはそれ自体が危険で不可逆的なものだが、医師がそうさせてさえいれば、介入しなくても性別違和から回復していた可能性が高いにもかかわらず、子どもたちをさらに悲惨な結果へと『閉じ込めて』しまうのだ。若者の多くが自殺する原因は現実との葛藤だけではなく、身体や精神に作用する薬物と精神障害との共同によるものなのだ。

医師はエビデンスに基づいて治療法をアドバイスし、患者に十分な情報を提供することになっている。英国タヴィストック・クリニックの医療スキャンダルは、最も(かつては)権威のある機関でさえ、子どもたちを失望させていたことを示している。

法廷では、政府の性同一性サービス(GIDS)は、思春期ブロッカーを投与された未成年者の治療経過と結果に関するデータさえ提供できなかった。たとえ子どもたちが同意できる年齢であったとしても、その同意はインフォームド・コンセントではなかっただろう。

インフォームド・コンセントの問題を回避するために、私たちは都合のいい神話を聞かされる。思春期ブロッカーは、GIDSによって「中止すれば身体的に可逆的な治療」と説明されている。2020年までは「GnRHアゴニスト製剤による治療は完全に可逆的であると考えられている」とされていたので、これは少し改善されたと言えるが、それでも私の目にはかなりミスリーディングに映る。

新しい定義は、思春期ブロッカーが心理的に可逆的でないことを看過している。また、「中止すれば」という言葉も、言語学的な足かせになっている。

GnRH製剤が視床下部(私たちを取り巻く世界の知覚を調節する脳のホルモン産生部)の大部分を停止させるという事実は、臨床医が発達途上にある子どもたちの脳に投与する前に十分な一考を要するものであったはずだ。実際、同じGnRH類似物質が成人の "化学的去勢" にも使われている。しかし、イデオロギーが優先され、子どもの長期的健康への配慮は二の次である。

多くの場合、影響を受ける子どもは女児で、現在ではその約75%が女児である。また、その多くが自閉スペクトラム症や、社会性に影響を与えることが知られているその他の問題を抱えている。このような精神障害と性別違和(Gender Dysphoria)には強い相関関係がある。

傷つきやすい子どもたちを暗示的な環境から遠ざけようとしたり、反対のメッセージを与えたり、あるいはその間に子どもたちが本来の性でより快適に過ごせるようにしようとしたりする親たちは、トランスフォビアとして非難される。未成年者には、将来に重大な影響を与える化学薬品の使用に同意する能力がない、と主張する人々も同様である。カナダでは、子供の性別移行に反対した父親が投獄された。当時13歳だった自分の子供はまだ「彼女」だと主張したのだ。この発言はカナダでは(文字通り)犯罪的暴力とみなされた。

彼は子供に思春期ブロッカーを投与するための同意を拒否した。裁判所に訴えられ、何千ドルもの罰金を科され、投獄された父親は、子供に思春期ブロッカーだけでなく異性ホルモンを投与することを止めることができず、テストステロン投与による思春期を迎えさせ、子供の人生を永遠に変えてしまった。スコットランドでは、9歳の子供が思春期ブロッカーを処方されている。活動家たちの最善の努力にもかかわらず、イギリスで手術や異性ホルモンを望む未成年者は、17歳という年齢になるまで待たなければならない。これでもまだ子供だが、もっと悪いこともあり得るのだ。

トランスジェンダー・ヘルスのための世界専門家協会(WPATH)は、9歳の子どもにも異性ホルモンを投与できると主張している。WPATHの『ガイドライン』では、これらの子供たちが12ヶ月間ホルモン剤を投与された後、精神的な健康状態を評価することなく、乳房切除、乳房・陰茎インプラント、義性器を使用することも許可している。

悲劇的なことに、12ヵ月後には、ガンや不妊症、精神作用による悪影響のリスクがすでに高くなっている。子供たちにこのようなことをするのは野蛮である。このような行為を推奨する医師を信用すべきではない。実際、WPATHの倫理委員会の3分の1しか医師ではない。内分泌学会と同様、専門家を装った活動家に最終決定権を持たせるわけにはいかない。倫理は政治的なものではなく、思いやりと理解に基づいたものでなければならない。

ポール・マクヒューの2014年の影響力あるエッセイは、思春期ブロッカーの使用に関する批判的な参考文献として今でも役立つはずだ。ジョンズ・ホプキンス病院(このような手術の初期のパイオニアであった施設)の著名な元精神科医長であるマクヒューは、トランスジェンダー問題が今日のような文化戦争になる前の時期に率直に書いている。

マクヒューは、手術や薬物療法を受ける可能性のあるトランスジェンダーを3つのサブグループに分類した。第一グループは、アイラ・ブライソン(スコットランドの女子刑務所に収監された男性)のような機会主義者で、性別変更したいという明らかな動機がある。第二のグループは、神経性の拒食症の患者と同じように、内的・外的に暗示にかかりやすく、身体的な手術によって精神・社会的な問題が解決されると確信している。第三のグループは、思春期前の子供であることが多く、自分がどのように世界に適合するかを自然に探求する過程で、異性の行動を模倣し始める。

思春期ブロッカーは、明らかに上記のどのグループにとっても解決策にはならない。1番目には遅すぎるし、2番目には不適切だし、3番目には非倫理的で時期尚早だ。思春期ブロッカーは禁止されなければならない。

アジーム・イブラヒムOBE博士(Dr. Azeem Ibrahim)は、政治学者であり、ニューライン戦略&政策研究所のディレクターである。


ザ・ヘラルド紙原注:
 
スコットランド政府は、若者は心理学的および内分泌学的評価を受けた後にのみ思春期ブロッカーを考慮され、思春期ブロッカーを開始した人は定期的な心理学的レビュー、モニタリング、サポートを受けると述べている。
 サンディフォード・ヤング・ピープルズ性同一性サービス(Sandyford Young People's Gender Identity Service)では、性別違和(Gender Dysphoria)を診断することはできるが、思春期ブロッカーを処方することはない。患者を小児内分泌学の専門チームに紹介するため、最も適切な治療法である場合にのみそのような薬が処方される。このサービスでは、2011年から2021年までの間に、90人の若者を小児内分泌専門医に紹介したと報告している。

原文:ザ・ヘラルド(スコットランド)紙
https://heraldscotland.com/politics/23739201.puberty-blockers-scots-children-must-banned


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