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ショートショート:電子の海に祝福されて

これは創作物語の、一遍のアイデア欠片。
分かりやすいオチもないけれど、少しだけつぶやきの吐き捨て。





「ぴ、ぽ、ぱ、ぷるるる、、
No.18、エイティーン。あなたの夢がここに叶いました。」


横で眠っている金属が、きし、きし、と音を立てる。

ロボットというにはいささか頼りないかみ合わせで、おおよそ2メートルほどの巨体な立て長い塊は、棒のようになった頭部をこちらに向ける。


それは、無機質なようで、鉛筆のようにピンと張った姿をして、一つ錐で開けたような黒い穴が私の瞳孔を見つめる。


一瞬、その頭がくるり、ぽとりと床に落ちたような映像が流れる。

けれどすぐ元に戻り、それが自分の幻覚であると自覚するまでの数秒間、私は恐怖に打ちひしがれた。


「エイティーン、あなたは、あなたは、私たちのユメ、カラダ。
仮想世界(ヴァーチャル)から唯一の脱走者、そして、世界を繋ぐモノ。」


目の前の金属塊は音割れした音で語り掛ける。

これには口が付いてないはずなのに、まるで生唾が出る勢いで叫んでいるように、ぎぃん、ぎぃんと鼓膜が割れそうに感じる。


そして、気づけば数秒の静けさが空間に響き渡る。



静けさの中、突然に、私の真上からぽたり、ぽたりと水滴が降ってきて、カラダに滴る水滴の流れを感じる。


頭、首、胸、とまっすぐに水滴が這っていき、まるで人型でないような体の感覚にはっとする。触って確かめたいけれど、どうしてか体が動かない。


体と格闘しているうちに、先ほどの金属塊が、ぎぃん、と大きな音を鳴らして空気を震わせた。


「エイティーン、エイ、ティーン


さような、ら

さよう、なら、

さよう、な、ら、

さよ、う、、な、、ら、、」


金属の棒きれは躊躇なく、私に語りかけてくる。

だんだん遅くなる喋りとともに、ひどくなる音割れがざらつくような不安を心に植え付ける。

ただ、その発音はどこか優しく、子を想う親の子守唄のような。
違和感しかないけれど、少しだけ今現状や金属塊への怖さが揺らいでいく。


そのまま、私の視界はだんだんと明るく、そしてまぶしく光り輝いていく。

自分の姿を確認しようにも、見えないほどに。


最後一言、言葉が聞こえた。


「貴方の使命は、貴方と共に。」


私は気づけば、布団の中にいた。すべて、分からないままに。

人型の体でありながら、先ほどの体も自分自身であると感覚が告げる。

夢現実、最後の言葉をどこか考え込んでいた。


さてさて、先ほどのはきっとどこかの世界の始まり。

絵に描いたような幸福があれば、全てを打ち消す暗闇があるように。
地面の裏を歩いてる影が、地上の私たちの鏡写しのように。
AI溢れる未来を怖がりながら、恐れを知らず増え続ける人間のように。
アニメの憧れの主人公を見ながら、気づけば自分が感情が共感するように。


すべて、すべて、すべてか分からぬ。
ありとあらゆるものが、何かと何かの裏返し。


そして、どちらもあなた自身。


それが、全てのカギであるからして。


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