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 八月の御所グラウンド 著:万城目 学

 204ページ読了。十二月の都大路上下ルと八月の御所グラウンドの二作が封入されている。そしてそれは関連された物語では無い。

 47都道府県対抗駅伝を京都の都大路で駆けるのだ。京都は上ル下ルと地名の後ろに付くようで、上下ルでカケルと読ませている。方向音痴の主人公が先輩の貧血の具合でピンチヒッターとなり走る事になった。まだ一年生である。でも、駅伝はみんなで走ると言うのを合言葉に頑張って来た同志であり、キャプテンも走るのを離脱する事を決めた先輩も主人公を推し先生から告げられ走る事になったのだが真っ直ぐ走って右に曲がるだけのコースを間違って左に曲がろうとしてしまう。なぜか、沿道の応援の後ろに並走する野次馬が新撰組のコスプレをしてる。拮抗して走ってた相手選手に右だよ、右と教えてもらい事なきを得たが、試合後、その選手とバッタリ会って、あの新撰組を見えてたのは走ってた二人だけだったようだと言う偶然を知る。

 八月の御所グラウンドは留年してるが就職先は決まった理学部の先輩が先生に頼み込みどうにか卒業の為の計らいを頼むと論文はあらかた先生が用意する。君には実験を頼んでデータを揃えて貰うだけで良い。その代わり、たまひで杯で優勝して貰いたい。と猛暑のお盆の最中京都は釜のように暑い中早朝から野球をする事になる。人が集まらないと思いきや、留学生のシャオさんやえーちゃんや山下君に遠藤君とその辺に居た人が集まり三福教授のチームに加わってくれる。野球経験者と素人の混合チームで6チーム総当たり戦の野球大会の模様を書いているのだ。

 しかし、シャオさんは中国には無いプロスポーツチームの研究を日本で行なっていて野球について調べたいと言う動機で野球場に来ていた。沢村賞と言うのを調べてえーちゃんに似てない?と遠藤君に関して調べると学徒出陣で死んだ生徒だったとはっきりして来る。幽霊と試合してるの?と話は続き、4回戦までを書き五箇山の送り火を見て終わりだった。

 万城目さんの文章では人は死なない。どころか生き返る奇跡を描いている。結論を先に書き、あとで注釈のように説明が加わる。大変チャーミングで読み易い構成になっている。所々、区切りも良い。そして全貌は明らかにならないまま、みんな野球したかったんだろうなぁと戦死した偉人たちにエールを送る、そんな清らかな作品に仕上がっていた。ページ数も少ない。野球の描写もここぞと言う所しか描かない。どんどん進んでくれる描写に期待は裏切られるように全部を描写しないで終わっている。

 正直、この熱量で直木賞受賞していいの?と拍子抜けしてしまうだろう。万城目(まきめ)学(まなぶ)さんは映像化された作品を多数手がけているらしい。候補にも何度もなった事のある作家さんだ。鴨川ホルモーと鹿男あをによしと聞けば見た事があると思う人も居るのでは無いだろうか。私はどちらも目を通して無いがタイトルは聞いた事がある。京都大学でロザン宇治原さんのお友達だそうだ。6回目のノミネートで満願の受賞である。これは万城目さんの粘り勝ちだろう。

 とっても読み易くで可愛らしいファンタジーに切なくなる事でしょう。

 以上

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