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Xiborgインド始動


なぜインドか

アジアは世界の人口の60%が住み、インドは世界最大の14億人が住む大国。一方東京パラリンピックに出場したインド人義足アスリートは0人だった。インドに義足アスリートはいないわけではないが、パラリンピックに出場するために重要なインドパラリンピックコミッティー委員会の数年前の不祥事、選手たちの競技レベルの低さ、練習環境が悪環境、そして義肢装具士たちのスポーツ用義足制作の経験の少なさなど、課題大国でもある。しかし、これだけ人口がいるのだから、環境を整え、強化をしっかりすれば世界を狙えるアスリートが生まれる可能性が高く、またそのプロセスをアジア各地へ横展開すれば、パラリンピックにおけるアジアの立ち位置を劇的に変えられるのではと考えた。

また、Xiborgのメンバーとして数ヶ月前に加わったManish Pandeyの活躍も大きい。彼は2014年のアジアパラでインド代表の義足アスリートだったが、引退後韓国のソウル国立大学の大学院でスポーツビジネスを学び、Xiborgに加わった。彼のイニシアティブからインドでは初のブレードランニングクリニックが2023年8月開催された。

フィッティング

場所はハイデラバード、Manishが選手だった時にお世話になったDakshin Rehabというクリニックの協力もあり、初日には10名の義足ユーザが集まり、Xiborg Joyのフィッティングを行った。ソケットはカーボンで作られたものから、日本ではチェックソケットと呼ばれるプラスチックでできたものを日常的に使っている患者もいた。ソケットの下端にはどこでも使用されている標準コネクタが使用されており、簡単にXiborg Joyを取り付けることができた。

ランニングクリニック

2日目の午前にはハイデラバードマラソンが開催され、前日にXiborg Joyを取り付けた数名は5kmのマラソンに参加した。

午後には競技場で、Xiborgのブレードを使用しているパラアスリートAnandan Gunasekaran選手をコーチに迎えたランニングクリニックを開催された。ハイデラバードの異常な暑さのなか、合計13名の参加者がブレードでの走り方を学んだ。既にブレードを経験したことがある参加者が多かったため、練習もレベルの高い練習内容だった。

3日目には、再びDakshin Rehabの室内に戻り、参加者1人1人インタビューを行った。その中に、今後アスリートとして活動していく熱意を持った2名もおり、Xiborgのトップアスリート向けブレードを履いてみたいということもいわれた。今後、彼らの競技レベルや熱意、練習環境などの調査を行った上で、支援するかどうかを検討していく予定だ。

アジア、アセアン地域でのパラスポーツの難易度の高さ

各ブレードメーカーがクリニックも運営し、パラスポーツを積極的に広げているヨーロッパ、NPOが大きな役割を担っている北米、国が主導権を握ってパラスポーツに投資しているブラジルを中心とした南米、オセアニアは毎年多くの義足のアスリートたちをパラリンピックに送り込んでいる。一方で、アジアやアフリカは特定の国(日本、南アフリカなど)から出場する義足の選手は多くいるが、他地域と比べて少ない。特にアジアからパラリンピックに出場する女性の義足アスリートは人口に比べると極めて少ない。大きなブレードメーカーや巨大なNPOが存在しないアジア地域ではどのような形がはまるだろうか。そもそも、走ることは最も敷居の低いスポーツであり、誰もがその権利を持っているはず。その当たり前を広げていく作業がまさに我々が行っていることなのだと感じる。このテクノロジー、研究、SDGs、途上国開発、スポーツビジネスなどが混在する大きなチャレンジにXiborgは挑んでいく所存である。

謝辞

このランニングクリニックには、ソニーインドの多大な協力があり実現された。また、たまたまハイデラバードマラソンのため現地にいた在チェンマイ日本総領事館広報の寺岡さんもイベントに立ち寄っていただき、オープニングの際には一言挨拶をいただいた。さらにフィッティングを一緒にやってくれたStep4wardの高橋素彦氏はわざわざAnandanたちのインドに来いという雑な招待を快く快諾してくれた。またNPO法人ギソクの図書館のスタッフたちもランニングクリニックの運営に協力いただいた。最後に、フィッティングなどの場所提供や参加者募集で大きな協力をDakshin Rehabにいただいた。
ここに感謝の意を示す。


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