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技術シーズを実用化する2つの方法②

 技術シーズや研究技術を実用化につなげる伝え方ついて、以前の投稿で前提となる条件と方法①「顧客の問題の探索を委ねるなら、できる限りオープンにしろ!」をお話ししました。今回はその続きです。

②顧客の問題を自分で考えるなら顧客開発までしろ!

 2番目は、顧客の問題を自分で探索して、設定する場合です。よくあるのが、研究の背景の通りにアプリケーションを想定してデモやプロトタイプを作りますが、具体的な顧客が見えていないパターンです。この場合、やっぱり、へー、すごい!で終わります。基本聞く側はこれ以上深くは考えてくれません。
 例えば、①でも話した静音アクチュエータを備えた人間型ロボットであれば、「確かにロボットってうるさいと気になるよね、面白い。」以上です。(すでに人間型ロボットが普及していて、多くの既存プロダクトの課題が静音性であったらもちろん別です。)
 つまり、静かな動きをする人間型ロボットが欲しい人はいったい誰なのかを明確に定義し、その利用シーンまで想像しないと、実用観点では伝わらないのです。
 じゃあどうするか、ポイントは2つです。
・顧客開発をする
・顧客に合わせて技術を具体化する
です。

■顧客開発をする
 まず必要なのは顧客を明確に定義することです。この技術を使う人はどういう人か、どんなシーンに使うのか、今その人が抱えている問題や既存の解決策は何か。
 本当に全く仮定の話ですが、先ほどの静音ロボットであれば、
"小さい子どもを持つ家庭が対象で、その子どもは寝ている最中に布団をはいでしまうので、冬になるといつもとても寒そうで風邪引いてしまう。そんな時に起こさずに布団をかけてくれるロボットを導入したい!"
と考えたとします。
この場合、布団ではなく着るタイプのスリーパーを導入すれば良く、高くても数1000円のスリーパーに勝つ必要があり、おそらく数十万円はするであろうロボットに勝ち目はないとすぐにわかります。

反対に、
"コンサートなどで、開演中に暗い中遅れてきた人を誘導したい。そのために多くの当日アルバイトスタッフを雇うが、質は人に依存してしまうしミスも多く周りにも迷惑がかかっていて困っている。そこにコンサートの邪魔にもならず、安定して誘導できるロボットを導入したい"
と考えた場合は、
当日のスタッフに毎回1万円払っているなら、何年も持つロボットもあり得るかもしれない。ただ、暗い中で安定した誘導ができないといけないから、ダイナミックレンジの高いカメラや、会場にセンサーなどをつける必要があるな。コンサート会場だから静音性は○○dB以下であれば良いな。
となってきます。

 このアプリケーションが現実的かどうかはさておき、顧客の具体的な定義で見えてくることがたくさんあるのです。さらに、本当にそのニーズがあるかは、顧客にインタビューするなどして確実性を高めて置く必要があります。でないと、本当かよ、でやっぱり終わります。

■顧客に合わせて技術を具体化する
 顧客を明確にすれば、現状の技術でできること、できないこと、今後の課題が見えてきますし、それに合わせたデモやプロトタイプの形も決まるはずです。さらに、どういう相手にデモを見せるべきなのかも、変わってきます。このように、具体的にしていくことによって、ようやく聞く側に伝わるようになるのです。
 なるほどこういう風に使うのか、実用化にこういう課題があるのね。それならうちで開発すれば、来年くらいには実用化できるぞ。よし、やろう!
と想像してくれれば、OKです。

以上のように、顧客の問題を自分で考える場合は、具体的に顧客を想像し、顧客開発をする必要があるのです。そんなとこまで考えられないよ、というなら①で説明したみたいに、反対に技術を抽象化して、オープンにして間口を広げてあげないと確率は低くなります。顧客開発を怠けてはダメなんです。怠けるな、努力しろ!!

まとめ

 単純に言ってしまえば、中途半端にしても、それ以上先を考えてくれる人なんていないんだから、
①考えやすくして多くの人に見せるか、
②自分で提案するか、
のどっちかに振らないとね!ということでした。また、価値の視点でいうならば、①技術価値②顧客価値のどっちかに振らないとね!ということです。
 ちなみに方向性を初めにどちらかに決めないといけないわけではありません。①で見せていくうちに、とても良いアプリケーションが見つかって②の方向で自分で進めるというのも大いにあり得ますし、一旦②の方向で顧客の問題を探していたが、考え尽くしても見つからないので①の方向で自分では想像できないようなアプリケーションを探索するというのもあります。

以上です。
自分自身、そんなに専門家な訳でもありませんが、最近、思ったことを書いてみました。説得力を上げるためにも、自分が結果を出します!また、もちろん世の中の原理を解明するような実用以外に大きな価値のある研究もありますし、研究によって例外は多くあると思います。今回は、特に企業のR&Dなどで研究を実用化させたいと考える場合に該当すると思います。

でもまぁ、圧倒的な行動力が一番強い!

 ここまで色々書いてきましたが、結局は圧倒的な行動力が一番強いです。圧倒的な行動力さえあれば、①か②かどっちの方向とか考えなくても、勝手に自分でこじ開けていくものです。これを言ってしまっては元も子もないですが、、、

以上です。シーズを起点に新しい事業を生み出す方法は、様々な観点で引き続き投稿していきます。気軽にコメントなどいただけたら幸いです!

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