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技術シーズを実用化する2つの方法①

 技術シーズや研究技術の実用化について、以前の投稿から大分時間が経ってしまいましたが、実用化のために技術をどう伝えるかについて、思ったことを書きたいと思います。

[前提1] 研究の「背景」と、ビジネスの「問題」は違う

 まず、研究における初めの「背景」とビジネスにおける顧客の抱える「問題」は違います。技術的な凄さと、顧客価値は異なるのです。(もちろん研究によっては近い物もあります。)
 例えば研究の場合、「○○の分野は飛躍的に成長しており、△△には●●の可能性がある、しかし現在の▲▲には課題があり、それを解決するために■■を提案する」と言った感じに展開されます。研究ですので当たり前ですが、見ている世界がちょっと先で、そこに存在する技術的な課題がテーマで研究されることが多いのです。
 一方で、ビジネスにおける問題は、「○○を嗜好するAさんは、△△をしたい。現在は●●で解決しようとしているが、▲▲の不満がある、そこで■■というサービス/商品を提案する」と言った感じで、視点が「人」であり、もちろん解決策は技術的に新しいことでなくても良いし、その解決策にかけられるお金も決まってきます。「人」はもっともっとわがままなのです。
 ですので、「その技術は顧客が抱える問題を解決できるのか」を顧客視点で見極める必要があります。

[前提2] マネジメントおじさんたちは何も考えない

 そしてもう一点、「マネジメントおじさんたちは何も考えない」ということです。

「こんなことができるんです、どうですか?」と提案しても

「ふーん、面白いね」

と言われて終わりです。
 なるほど面白い、じゃあこういうことに使えるんじゃないか、こんな風に展開したらビジネスになるんじゃないか、まで親身に考えてくれるマネジメントおじさんは、いません。なんとなく良い感じの評論をするだけです。

研究技術を実用化する2つの進め方と伝え方

 では、上記の2点を踏まえた上で、どのように技術をビジネスに変えるか。以下2つの方法があると思います。

①顧客の問題の探索を委ねるなら、できる限りオープンにしろ!

 1つ目は、顧客の抱える問題の探索を技術を使う側に委ねるパターンです。こんな技術がありますが、使ってみたい人いませんかぁとするのです。ただ、前述の通り、親身になって活用方法を考えてお金をくれるおじさんなどいません。すでに存在する「問題」と直接マッチする場合のみ前に進みます。
 こういうことをしたいんだけど、良い技術ないかなぁと探している人にしかハマりません。
 これは決して悪いことではありません。技術を作る側が想定しているアプリケーションなど非常に狭い世界ですので、なるほどこんな使い方があるのかぁと発見できることは大いにあり得ます。ただ、(もちろん技術にもよりますが)確率は非常に低く、ましてや企業内に閉じていたら視野は狭いままで、そう簡単に解決できる問題は見つかりません。
 問題の探索を委ねる場合は、「自分の想像を越えたアプリケーションを見つける」点が大きなメリットなのです
 じゃあどうするか。ポイントは2つで、
・技術を抽象化する
・オープンにする
です。

■技術を抽象化する
 中途半端にユースケースを想定してデモやプロトタイプなどを作った場合だと、その時点で応用範囲が狭くなってしまい、技術を使う側は活用の想像がしづらくなってしまいます。自分の想像を越えたアプリケーションを見つけないと、問題の探索を委ねる意味がないので、できる限り、どんな応用も想像できるような形まで技術を抽象化する必要があります。
 技術の本質的にすごい点に落とし込んで、それを体験できるようにデモやプロトタイプを作る必要があります。
 例えば、元々は人間型ロボットを想定して開発した技術でも、そこに蓄積された静音アクチュエーション技術が本質的なポイントであれば、人間型ロボットを展示するのではなく、その静音さが伝わるようなデモをした方が良いのです。そうすれば、アクチュエーターに関連するアプリケーション全てに応用可能性が広がります。

■オープンにする
 何度も言うようですが、自分の想像を越えたアプリケーションを見つけないと、問題の探索を委ねる意味がありませんし、すでに存在する問題とマッチする確率は低いのです。ならば、オープンにするしかないのです。抽象化された技術をオープンに展開して、あとはどこかの技術課題にハマることを願うのです。変にクローズドに温めていても、使われないで終わるだけです。無駄に隠すな、オープンに!!


少し長くなったので、2番目の「顧客の問題を自分で考えるなら顧客開発までしろ!」は、また次回に。
▼研究技術を実用化する2つの方法②
https://note.com/xicunyou/n/n8f2d9daf918e

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