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新型コロナウイルス感染拡大で、メディアはどうなる?何をすべき?国内外のデータで徹底解説

こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。

弊社のnoteではメディアのパフォーマンス分析やサブスクリプション(有料購読)化に役立つコラムを掲載しているほか、業界の最新情報をお伝えしています。

自社開発? それともSaaS? メディアがサブスクリプションを導入する方法とは
その記事、本当に読まれてる?コンテンツ評価の新常識「読者エンゲージメント」とは

今回は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大がメディアビジネスに与える影響について紹介します。国内外の調査レポートや報道をもとに「パブリッシャーがパンデミックから何を学び、対処するべきか?」のヒントを探ります。

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新型コロナウイルス感染拡大の影響は「PVバブル」「事業破綻」「再評価」

今回のパンデミックによって世界のメディアが受けている影響は、以下の3つです。

1)トラフィック・有料購読の急激な伸長(=バブル状態)
2)企業活動の停止や広告・イベント収入の激減による事業破綻
3)信頼できる情報源、関心に寄り添うコンテンツへの再評価

具体的なデータや報道をもとに、以下それぞれ説明します。

不安を起点に、ページビュー・滞在時間の「バブル」が起きている

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、世界的にデジタルメディアのパフォーマンスが伸びています。記事コンテンツのエンゲージメント分析ツールを提供するChartbeat社の調査によると、感染拡大とともに新型コロナウイルスに関する記事のページビュー (PV)は急上昇しており、メディアの全PVのうち3分の1も占めています(3月16日週、2600万件の記事の分析結果)。

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記事をご覧になっている方のなかには、サイト分析ツールで自社メディアを見て「今日もPVが増えている!」「昨日はPVが多かったのに、今日はなぜ急減したの?」と、疑問にお思いの方もいるかもしれません。今はいわばバブル状態ですから、日毎にトラフィックが乱高下しても全く不思議ではないのです。

もう一つ注目したいのは、PVだけでなく、記事の滞在時間も伸びていることです。

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Chartbeatのデータによると、読者のうち45%が15秒以内に記事ページを離脱することが分かっています。しかし驚くことに、新型コロナウイルスに関する記事は平均40秒も読まれています。新型コロナウイルスに関する記事がいかに関心を集めているかは、疑うべくもありません。

多くの人々が信頼できる情報源を求めていることと、家で過ごす時間が長くなったことで、インターネットでデジタルメディアの記事を読む時間が増えたことが要因と考えられます。

試練は感染ピークを超えてから。「コロナ一辺倒」は読者を失うリスクがある

パブリッシャーにとっては、この「バブル状態」が収束した後、どのように読者の関心を自社メディアに留めるかが課題です。以下は、イタリアと米国のデータです。

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どちらも国がロックダウンを宣言した直後から、トラフィックが減少傾向にあります。感染拡大のペースが和らぐとともに、不安に駆られて情報収集をしていた読者の行動が落ち着いたからだと考えられます。

日本でも4月7日に緊急事態宣言が行われました。感染拡大に歯止めがかかれば、イタリアや米国のようにトラフィックの「バブル状態」が近日中に収束する可能性があります。

ですから、たとえ多くのトラフィックを集めていても、新型コロナウイルスの速報記事ばかりが並ぶ編成は考えものです。メディアの独自性を損なってしまい、パンデミックが収束したあとに読者が戻ってこなくなるリスクがあります。

レストランに例えるなら、今は「一見さん」が殺到している状態です。一見さんに人気のメニューばかりを提供していると常連が離れてしまい、本来の良さを見失ってしまいます。一見さんが定番メニューも味わって常連になってくれたら、継続的にファンを増やせます。メディアでも同じことがいえるでしょう。

Googleの調査によれば、日本では3月頭から「オンライン飲み」「DIY」など、自宅での過ごし方や気晴らしを意識した検索ボリュームが増加しています。

いわゆる「自粛疲れ」もあいまって、パンデミック報道以外のニーズも高まりつつあります。目先のPVに振り回されず、読者が継続的に訪問したくなるようなコンテンツや施策を今のうちから展開しましょう。

広告・イベントに大打撃の一方、サブスクとECが好調

新型コロナウイルスによる広告出稿減少とイベントの取りやめは、事業面で大きな打撃になっています。News Media Alianceの記事によれば、3月中旬時点で62%のパブリッシャーが広告収入の減少を経験しており、各社が記者のレイオフや減給、プリントメディアの発行頻度を下げるなどの対応を迫られています。CNNは記者の大量解雇を報じており、「読まれるのに儲からない」パブリッシャーの窮状が見て取れます。

他方、デジタルのサブスクリプション(有料購読)とアフィリエイト記事などのEコマース分野は非常に好調です。

Piano社の調査によれば、WHOがパンデミック宣言を行った週の前後でデジタルメディアの有料購読者数は199%増加(欧州で267%、米国で63%)しています。DIGIDAYの記事は、New York Timesの運営メディア「Wirecutter」の商品レビュー記事のトラフィックが前年同期+5000%(誤字ではなく、5千パーセントです!)成長した事例や、パブリッシャーのコマースネットワーク運営企業による「1日あたりのクリック数が2週間で25%増加した」とのコメントを掲載しています。

日本のパブリッシャーにおけるパンデミックの影響は、これから広がっていくでしょう。一部の雑誌では取材や撮影ができずに発行を見合わせると発表しており、東京オリンピックの開催延期によって公式スポンサーが広告出稿の延期・取りやめを検討するとの報道もあります。

さらなる危機や不測の事態に備え、サブスクリプション導入やEコマースとの連携など、デジタルの収益軸を多様化することを強くおすすめします。社内での感染対策やリモートワークへの移行など、日常的な業務に影響が出ているパブリッシャーも少なくありません。パンデミックを契機として、事業・社内環境ともにデジタル化の推進を検討されてはいかがでしょうか。

「ネットニュース=無料」の認識が変わるかもしれない

暗いニュースに肩を落としそうになりますが、今回のパンデミックは「インターネット上の情報は無料で手に入って当たり前」という認識が変わるチャンスともいえそうです。

フェイクニュースへの危機感が世界中に広がり、インターネットで「信頼できる情報」「自分の関心に応えてくれる情報」に価値を見出す読者が増えています。デジタルメディアの有料購読者数は増えていることは上述の通りですが、大手だけでなく、ローカルニュースなどニッチな需要に応えるメディアも恩恵を受けています。ノーザンウェスタン大学の調査によると、アメリカの地方紙は減収の打撃を受けつつも、デジタルメディアのサブスクリプションは好調だといいます。例えばフロリダの地方紙「Tampa Bay Times」は、1日の新規購読がに50〜70件と、通常の2〜3倍に達しているそうです。

また、世界経済フォーラム(WEF)によると、現在ニュースに課金している読者はわずか16%ですが、パンデミックの影響で「将来的にニュースへ課金したい」と考える割合は53%にのぼります。「お金を払ってでも信頼できる情報を手に入れたい」という意向が確実に高まっているといえるでしょう。

野村総合研究所の調査によると、日本では7割以上の人が新型コロナウイルスに関するフェイクニュース(と思われる)情報を見聞きしたと回答しており、回答者の7~8割がテレビ・新聞での情報を信頼しているとのことです。注目すべきは、デジタルでの情報収集の手段について、10代・20代でも「検索エンジン」が「SNS」を上回っていることです。若い世代も、信頼できる情報を吟味して手に入れようとしていることが見て取れます。

日本は、ニュースの課金率がわずか7%(2018年)と諸外国に比べて圧倒的に少ないのが現状です。裏を返せば、情報の信頼性を保証し、課金への納得感を訴求できれば、サブスクリプションに伸びしろがあるといえます。

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規模の大小を問わず、質の高い記事を届けようとしているパブリッシャーにとっては大きな追い風といえるでしょう。

ここまで、新型コロナウイルスがメディアにもたらす影響と対策をお伝えしました。内容をまとめます。

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日本のパブリッシャーが今回の危機から学べること・備えられることは、以下の通りです。御社は、何から着手できそうでしょうか?

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【イベント告知あり】オンラインで御社の悩みをお聞かせください

この記事をご覧になって「うちのメディアはどうしたらいいの?」とお悩みの事業責任者様やデジタルメディア担当者様もいらっしゃることと思います。

キメラは来る2020年6月17日(水)に無料ウェビナーを開催いたします。この記事で論点に挙げている「アフターコロナ」「ウィズコロナ」の時代に即したコンテンツ提供やマネタイズを実行するヒントをお伝えする予定です。詳細・申込は以下のリンクをご覧ください。

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国内20社を超えるパブリッシャーをご支援している実績をもとに、少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。

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