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舞台照明デザインのこと その7 角度の拡がり 基礎からの応用

前回までの流れ

4つの方向からの照明を使い、それをどう使うのか。
というところまで話をした。

また、ここから読む人のためにも繰り返しになるが、ここで書いているのは、僕個人、つまり伊藤馨の照明のデザインの仕方を書いている。
おそらく、人の数だけデザインの仕方はあり、その人が大事にしているものがある。そして、それは尊重している。

デザインの強度という言葉が何度も繰り返し出てくる。これは、デザインが持つ強さを表す言葉で、それこそがデザインの根幹になるものなのだと考えているからだ。
構造物で言うところの耐震性や耐水性みたいなものだということも言えるかもしれない。
ここでは、
一つ一つの照明に対して、どれだけの理由や意味を持って、そこに置かれるのか。
ということだと考えてもらえればと思う。

前置きが長くなってきたので、本題に進もう。

前後ろ左右の4方向じゃ足りないですよね?

そうです、全然足りません。
前にも書いたように照明の方向は概念で言うと25種類しかない。

割り振りは、8方向×三段=24+真上=25

3段? 
段?
そうですよね。急に新しい言葉が出てきました。

段とは、段階で、ここでの概念としては、上中下として、
上は、頭よりも2m程度上
中は、頭と同じくらい
下は、足元
を、三段とする。
と、段の説明をしましたけど、この項では段についてのことは扱わない。
まだまだ、先になるけれど、よくある仕込みについてを書くときに説明をします。まだ、しばらく、上段の明かりについての話をする。

4種類じゃ足りないって書いたじゃないか。
そうです。
でも、まだ上段だけで、残った4方向の斜めについての話をしていきたい。

上からの明かりばかりの説明をすること

斜めの角度からの照明の話をする前に、なんで上からの明かりの話ばかりをするのかについて、もう少しだけ補足する。

まず、中段と下段については、当たり前だけど演者の邪魔になる。

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もちろん、観客の邪魔にもなる。なんなら、そこは客席だ。

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いくらなんでも演者が見えない。まぶしい。

というように、実際に使いにくいということが一番の理由。
もう一つは、明かりを当てる。という時の概念を考えた時に、演者よりも高い位置からの明かりの方が、違和感が少ない。

これは、普段の生活でのことを考えてもらうとわかるけど、太陽は上にあるし、部屋の明かりも普通は上にある。そして、これらは演者を見るときに観客が照明の光源を見ようと思わなければ見ないということがある。

とはいえ、これらにも使いどころはあるし、これらには別項を設ける。

照明は、光線と光源

照明という要素には、光線と光源という二つがある。

なにかしらの光源になるものが光っていて、それが光線として発せられる。
この光線が何かに当たるとそこが明るいということが分かる。

Rsideトップ

この画像に見えている光線(ビーム)は、見えるようにしているから見えているわけで、実際には見えないものとして考えて欲しい。

そして、これらの光源が見えるということは、観客にとっては「まぶしい」ということになる。演者を見ようとしたときに邪魔になる。ということも覚えておいてほしい。
あえて、これらのことを使う技法もあり、それを全否定しているわけではないが、これらの要素があると言うことが大事である。

これらのことから考えて、上段からの明かりを中心に話を進めて行く。

4方向の応用(斜めの明かり)

やっと、基本とした4方向の応用である斜めの角度の明かりの話だ。

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この通り、基本の4方向を45度ずつ回した状態が、応用である。
なぜ、45度で区切っているのかというと、正面と下手の中間というものを概念で考えた時に、それが30度なのか60度なのかよりも、斜めの角度であるというのがはっきりするところという意味で45度を設定している。
なので、この45度という角度に意味はない。
対象物から見て、斜めの角度にあるもの。という概念で理解してほしい。

基本の時のように一つずつ画を出してみるのは、片側だけずつにする。
理由は、概念としては「斜め前」と「斜め後ろ」しかないからだ。

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前側の斜め、演者の顔も見えるが、身体にも立体感が強く出ている。

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後ろ側の斜め、身体の縁がはっきりしているけど、表情までは見えにくい。

前からと同様に立体的に見えてきている。

二台ずつの組み合わせをいくつか見ていこう。

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両方を点灯していると演者が見えやすいし、ある程度横まで明かりがカバーできている。

これは、正面からの明かりに近い感じで、表情が見えるようになっている。

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これも両側から斜めで挟んでいるので、真後ろよりは、演者の姿ははっきりと見える。ただし、表情は見えにくい。

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斜め前と反対側の照明で挟んだ形。
下手からの明かりで顔も見えるし、上手側の身体の縁が強調されている。

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片側の斜め前と後ろだけを点灯。
上手側が強く強調されている分、下手側の身体に影が出来ている。

基本の前後上下と比べて、斜めの明かりは対象物に当たる当たり方の反対側の組み合わせが想像しやすいので、ここでは残りの組み合わせを省く

また、三つを付けた場合というのも見えかたとして、差異がはっきりしない。

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こんな感じになってしまう。
これは、下手の前側だけが点灯していない状態。
なんとなく、下手前に暗みが見えるけれども、そこまで強いものになっていない。ただ、上手奥に側からの明かりが強調されているのが分かると思う。
これは下手前側を省いたことで、その反対側が強調されるからだ。
詳しくは下の画を参照してほしい。

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上手奥を削った状態。

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上手前を削った状態。

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下手奥を削った状態。

今回はここまでだけど、まだまだ続くよ

さて、今回で僕の舞台照明デザインの基本とその応用の8方向の説明はこれでおしまい。
でも、まだ角度の話は続きます。
それと、ここまでで8方向+1の「1」の部分の真上(トップ)は、説明していなかった。ので、次回、説明する。

次は、いよいよ組み合わせとデザインの話にうつっていく。

8方向をどう組み合わせていくのか、そして、基本と応用といった区分けはなぜしたのか。ということが、次回になる。

では、また次回。


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