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舞台照明デザインのこと その11 人間の眼と舞台照明

ここから先のことについて

前回までで、方向についてのことと舞台での名称とかを整理した。
方向に関しての印象とか、具体的な使い方については、更にこの先に行かないと説明が出来ないことなので、まずはいろんな方向や角度があって、それを駆使する。
っていうことと、それらは単純化して覚えておくと便利ですよ。って、ことまで進んだ。

次回以降は、人間の眼というものがどういうように機能するのか。
と言うことを切り口に話を進めて行こうと考えている。

僕たち舞台照明家が相手にするのは、主に人間の眼だ。
(時折、カメラみたいな機械的なものを相手にすることもあるけれども、第一義に考えるところではない)

人間の眼の仕組み

人間の眼は、基本的に随意に(思うように)ピントが合わせられるようになっている。つまり、人間の眼にはオートフォーカス機能がついている

当たり前なんだけど、更に絞りもオートだし、なんならズームもついている。どちらも無意識にやっているので、気が付かないかもしれない。

明るいところに行けば、瞳孔が閉じて余分な光を省こうとするし、
暗いところに行けば、瞳孔が開いて光を多く取りこもうとする。

観たいところに意識が集中すれば、光学的に大きく見えるわけではないけれどもデジタルズームみたいな感じで、そこをはっきりと観ようとすることも出来る。

これらは大変良く出来ている。
そのため、僕ら人間は視覚に頼って舞台を観ることが多い。
大半は、視覚による情報を基に舞台を視ている。

眼という感覚神経は、
光に反応し、また光の反射(時に光そのもの)を取り込んで処理する器官
だということだ。

舞台照明と眼

舞台照明は、このとびきり優秀な身体の機能を相手にする。

そして、舞台照明では、眼の機能を逆手に取ることが多い。
特に、光を取り込む器官である眼は、光を常に求めている
暗いところと明るいところがあれば、つい明るい方を見てしまうように出来ている。逆に、暗い方はわざわざ見ようと思わなければ見ない。

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まず、真ん中のレディを見て、下手を見て、上手を見る。
と、視点がだいたい誘導されてしまうものだ。

当然、観客はどこを見るのかということについては自由だし、どこでも見ることが出来る。
一方で、人間の眼の習性としては、明るい場所を見てしまうように出来ている。当然、自分の視界に光源があれば、それを見てしまうように出来ている。

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これは本能的なものなので、どうしようもない。
逆に、この眼の習性を理解して、利用していかないと観せるべきものが観せられなくなる

明るいと近い 暗いと遠い

また、人間の眼が持つ修正として、はっきりとよく見えるものにはピントが合わせやすい。暗いとピントが合いにくい。
これらは、よく見えると近く感じるし、よく見えないと遠く感じるということでもある。

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この人物たちは、三人とも同じ距離に立っているけれども、真ん中のレディが一番近くに感じるし、次に上手側のボーイ。そして、下手側のボーイは奥に引っ込んでる感じがする。
ビジュアライザーだから、そう見えるというわけではなくい、実際の人間の眼でも同じことが起きる。

舞台照明は、眼を誘導するためにも使えるし、距離感を調節することも出来る。

ただ、適切に調節していかないと観客は疲れてしまう。
何事も適度というものも大事ということだ。
それと、例外もある
暗いからこそ、見てしまう時もある。ただ、それはかなりの応用編なので、いつか説明するかもしれない。

今回のまとめ

人間の眼は、
光をもとめてるから、明るいと視線が行く!
明るいとピントが合いやすいから、近くに感じる!

というわけで、今回はここでおしまい。

では、また次回。

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