マガジンのカバー画像

クリティカルシンキング(批判的思考)

36
運営しているクリエイター

記事一覧

主観的確証を賢く利用する方法「批判的思考」+36

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+30,+31,+32,+33,+34,+35) 前回は、確率を使った代表性ヒューリスティクスを説明しました。 今回は、「主観的確証」について説明します。 人は自分の期待通りにものごとを見るたとえば「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんが、憧れのナナコお姉さんから、「しんちゃんって誠実なのね」と褒められたとしましょう。しんちゃんは機関車のようにシュシュポポと喜び、自分が遊んだ道具をすぐに片付け、シロの散歩も積極的に

確率の代表性ヒューリスティック「批判的思考」+35

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+30,+31,+32,+33,+34) 前回は、「確率の利用可能性」を説明しました。人は特定の基準に偏って物事を考えがちです。 今回は、「確率の代表性」について説明します。 あなたはどう考える?コインを投げたら、次のような順番が出ました。aとbどちらが出る可能性が高いでしょうか?それとも、両者の可能性は等しいでしょうか (a)○●○●○● (b)○○●○●● 正解は「両者の可能性は等しい」です。というのも

確率の利用可能性に騙されない方法「批判的思考」+34

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+30,+31,+32,+33) 前回は、超常現象に騙されないための「確率の基本」を説明しました。 今回は、その確率の基本を使いつつ、利用可能性に騙されない方法を説明します。 人はこんな判断をしがち100人が、1-10の間で数字を思い浮かべるように言われました。その数字が7である可能性は(a)-(d)のうちどれくらいでしょうか?(電卓を使わずに答えてみましょう) (a)百分の一、(b)百分の七、(c)百分の十

確率の基本理解「批判的思考」+33

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+30,+31,+32) 前回までで、ヒューリスティクスの2つ方法論である「利用可能性」と「代表性」について説明しました。 今回は、偶然と確率を正しく理解するための「確率の基礎」について説明します。 確率の基本を理解する恋愛マンガの出会い頭のように、偶然には見えない出来ごとは強く印象に残るでしょう。この錯覚に近い印象を防ぐためには、事実を偶然かそれ以外かで正確に把握する必要があります。 その方法が、確率を理解

占い師を盲言を信じないコツ「批判的思考」+32

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+30,+31) 前回は、確率判断を経験や知識から決める方法のヒューリスティクスについて説明し、その方法論の1つの「利用可能性」を説明しました。 今回は、もう1つの方法論の「代表性」について説明します。 よく目立つ概念を基準に考える代表性ヒューリスティクスとは、「自分が強く想起する概念」を尊重する考え方です。言い換えると、「これってこういうものだよね」と生起しやすい考えを優先すること。 たとえば、占い師に相談

自分の経験を信じて騙されやすい人の考え方「批判的思考」+31

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+30) 前回は、強烈な体験をするとクリティカルシンキングが弾かれてしまう話をしました。 今回は、そんな体験をしてもクリティカルシンキングを維持するための方法論、ヒューリスティクスの「利用可能性」について説明していきます。 ヒューリスティクスとはなにか?たとえば、「10日連続でBさんに偶然会ったんだ!これは運命だろう?」と興奮して話すAくんがいたとします。彼はこの現象を偶然ではありえないと判断し、運命だと結論づ

超常現象を信じやすい人の特徴「批判的思考」+30

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+21,+22,+23,+24,+25,+26,+27,+28,+29) 前回までで、自分自身を省察する方法を説明しました。 ここからは、なぜ人は超常現象のようなキテレツな考え方を信じてしまうのか?その根拠について考えていきます。 自分自身の体験を優先するこんな話たとえば、こんな話を聞いたことがあるはずです。 いやっ!!、見ればわかるから。見ればすんごいってわかるんだってまじで この説明には、紹介したいなに

非現実的な目標がもたらす悪い効用「批判的思考」+29

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+21,+22,+23,+24,+25,+26,+27,+28) 前回は、帰属を再考することで、自己効力感を高める方法について説明しました。今回は、帰属をするうえで無力感を感じやすくなってしまう非現実的な目標について説明します。 非現実的な目標は無意味これは実話なんですけど、会社の社長が来年の売上目標を社員に発表するとき、「実現可能だと面白くないから売上50%伸ばすのが目標で!」と言ったんですよ。 その目標を聞

失敗を努力でカバーするコツ「批判的思考」+28

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+21,+22,+23,+24,+25,+26,+27) 前回は、自分の行動を帰属するときの2つのパターンを紹介し、「自己効力感」が大事だと説明しました。 今回は、「帰属を再考」して自己効力感を高める方法を説明します。 ドラえもん映画のサクセスストーリーの秘密ドラえもん映画でのび太がカッコよく見えるサクセスストーリーは、 ①のび太くんが失敗する→②のび太くんが失敗を自分の能力のせいにする→③なにかが起こる→④

自己批判を賢く使うためのコツ「批判的思考」+27

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+21,+22,+23,+24,+25,+26) 前回は、自分に都合のよい言い訳を作る「自己ハンディキャッピング」について解説しました。 今回は、自己効力感を高めつつ、言い訳をしない考え方について説明します。 自己欺瞞の有用性と危険性事実を自分の都合よく解釈する行為は、自分の身を守りも攻撃もします。時と場合によって、プラスにもマイナスにも働くのです。 たとえばぼくたちは、物事を成し遂げたときの有用感、つまり「

言い逃れ癖が付くと人生オワタになる理由「批判的思考」+26

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+21,+22,+23,+24,+25) 前回は、被害者の罪を過度に大きくする「公平世界仮説」について説明しました。 今回は、他者への印象づけに使われる「自己ハンディキャッピング」について説明します。 だれもが印象を管理しているたとえば、あなたが自宅のインテリアにこだわりを持っているとします。その理由はいろいろあるでしょうが、そのこだわったインテリアは、あなた自身の印象にもつながっていきますよね。 装飾にこだ

「自己責任」という名の公平性の押し付け「批判的思考」+25

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+21,+22,+23,+24) 前回は、心のなかに2つの意図がバッティングすると起こる認知的不協和について説明しました。 今回は、「公平世界仮説」についてご説明します。 思い出を作れないのは自己責任?たとえば、高校時代に良い思い出を作れなかった学生が、その事実を後悔しているとしましょう。客観的に見れば、良い思い出を作らなかったのは自己責任。しかし実際には、世界的に感染症が広まっており、外出禁止令が出ている事実

自己都合な解釈をするときに起こるあの現象「批判的思考」+24

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+21,+22,+23) 前回は、常識の定義と常識を決めるまでのプロセスの説明をしました。今回は、「認知的不協和」についてです。 こんなときあなたはどう考える?たとえば「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんが、昼寝をしている母みさえのために庭の洗濯物を畳もうとしました。しかし洗濯物を洗濯干しから取ろうとしたところ、まちがって地面に落としてしまいます。外は雨が降っていて地面はぐちゃぐちゃ。洗濯物も汚れてしまいました。

「常識」を信じて傷つかないための処方箋「批判的思考」+23

クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+20,+21,+22) 前回は、習慣的な原因帰属のパターン次第では、抑うつ傾向が出てしまう話をしました。まちがった帰属スタイルを使い続けると、いつまで経っても正確な原因帰属はできません。 今回はそんな間違った原因を帰属するときに足を引っ張られる「常識」について考えます。 ここでの常識の定義 ここでの常識の定義は、「普遍的に正しい事実」とします。[常識]は文脈によって意味が変わりやすいので注意してください。「あたりまえ