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【終助詞】「わ」と「な」

2021年11月。facebookに投稿したもの。写真と内容は無関係です!

【終助詞「わ」と「な」】①

結論からいうと:終助詞にも階層があり、「ね」「よ」と「わ」は別階層にある。そして「な」は「わ」に近い面がある。
考察の理由:日本言語学会で日本語の階層と「わ」の話を拝聴して考えたこと
([E-3] 森山 倭成 日本語における分離CP構造と終助詞「わ」の補部選択)
背景:これは同業の皆さんには周知のことですが、日本語の述語には階層があります。長い述語には機能が出現する順番が決まっています(例外あり。文によってちょっとは変わる)。
食べさせられていたらしいよね
語幹+ヴォイス+テンス+モダリティ+終助詞
終助詞もモダリティの一つだけど取り出す。
文によっては丁寧がヴォイスの後ろに入る。
さてモダリティにも階層があって、対事モダリティが先、対人モダリティが後、とこれも周知のこと。
終助詞も「よね」OK、*「ねよ」NG。「よ」は自分の感情の発露だけにも言えるが「ね」は相手がなくてはならない。ここまでは先行研究による常識の範囲。

さて、終助詞は「な」「わ」「さ」「ぞ」「ぜ」(方言なら「べ」など)いろいろあるが、どれもどんな文にも付くだろうか。
「わ」は「だろう」には付かない。
寒くなるだろうね。寒くなるだろうよ。*寒くなるだろうわ
ということは、「わ」は「よ」の前の階層に属することになる。
「わよね」はOKだけど*「よわね」NGであることからもわかる。
(ほかの終助詞にもその特徴があると思うけど、今は「わ」に限っていきます)
ここまでは森山先生のお話に若干付け加えてお伝えしました。
さて(②に続く)

【終助詞「わ」と「な」】②
あ、「さて」で始めてはいけなかった。
「わ」はおもしろい終助詞で、
「寒いわ」↓(下降)はいいけど
「寒いわ」↑(上昇)だと女っぽくなってしまう。
イントネーションが見えない(聞こえない)文字表記だけだとさらに女性の発言に見えてしまい、春樹の小説によく出てくる(笑)
上昇イントネーションはだいたい相手に働きかける(典型的には「寒い?」↑ など)ときに使われるから、自分で完結するか相手に関わるかで何かが変わるわけだ。
(A自分で完結する/B相手に働きかける という観点でいくと、「ね」はB、「よ」はB寄りのAB、「わ」はAでBに寄ると別のスイッチが入る ということか)
「な」
寒くなるだろうな OK でも相手に働きかけているのかな?(←)
「よな」OK *「なよ」(禁止の「な」じゃないよ)NG
統語論的には対人モダリティの位置に付く。でも…
疲れたな。
疲れただろうな。
疲れたよな。
「な」がモダリティの後ろ、Bの位置に付くと男っぽくなりませんか。いや、こうして文字表記だけで見ると全部男っぽいかも。
(「な」はAB,しかしBに寄ると男っぽくなる/文字表記だけだと男っぽい)(「わ」の逆? 完全に裏表ではないけど逆っぽい?)
③に続く!

【終助詞「わ」と「な」】③
会話授業の担当していて、
「パフュームって知ってる?」
「知らないね」
という会話があったのを、「知らないなぁ」↓ にしたほうがいいとアドバイスしたときに、「な」はどういう意味なのか改めて聞かれて四苦八苦しながら答えたのですよ。
ざっくりいうと「自分に対して言っているのを、同時に相手に聞こえるように言っている、相手に直接言わないツンデレ表現」と説明したのですが、正直に言って確証はなかったのですはい。
でも、「わ」「な」が〔自分の感情を発露し自分で完結する/相手に働きかけるときは別のスイッチが入る〕とまとめられるなら、自分でも納得だなぁ(←)。
ちなみに名詞文・ナ形容詞文のとき「だ」を必須とするところも両者同じ。
きれいだわ。きれいだな。 *きれいわ *きれいな
雪だわ。雪だな。 *雪わ *雪な
(もっともナ形容詞の「な」は名詞に続くように見えるから避ける、という理由も大いに考えられるし、名詞の「な」は昨今「それな」など直接付く形も見受けられる)
それには(それにも)仮説を持っているけどまだ考察不足。
現状ではここまで。さーて授業準備しなきゃ。その前に家事だ。

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