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週間手帖 二頁目

2021.08.15

いつかの日の夏空を思い出している。透明な朝陽に焼かれた掠れ声は、やけに涼しい。伏目ついでに後ろをついてゆく私を追おうとも、歩幅は縮まらない。華奢な背中には誰の人生も乗らないし乗せるつもりもない。心はいらないけれど身体はいくつあっても足りないのだから人というものは卑しいわ。「そんな風に生きていると色んなものを見逃してしまうよ」いやはや、大きなお世話である。

2021.08.16

桜の木の下に死んだ心を埋めようとする人。燃えた夢に永遠のさようなら。湿った土に息を吹きかけて、震える眼球から意識を逸らす。海の香りは私に届くことなく、鮮やかな空に散った。もし同じ青を見ることができたなら、映画のワンシーンとして永遠に生き残ることができたのだろうか。悲しくなんてないよ、もう別の映画を見ているから。

20201.08.17

余情一間の休息。地面を駆けるあの子にひそかなエールを送り、夢うつつに還る。うたかたの日々、やわらかな髪、白い猫。遠い昔のことを意外にも鮮明に覚えているものの、感情だけはどうにも思い出せない。それはとても幸せなことだよと、私は私に教える。

2020.08.18

「アイスかぁ、我慢してるなぁ」とぼそっと呟いた声が忘れられず、アイス売り場の前に行ってはその言葉をふと思い出して買わずに帰宅して、「アイス買えば良かったなぁ」と嘆く夏。どのくらいの我慢ができれば、あなたの人生を味わうことができるだろうか。ひとり我慢比べをしながら、大きな口でアイスを頬張る愛らしさを浮かべる夏。

2020.08.19

揺れる金色の糸に、青い炎を灯したうつくしい瞳が光る。指先がひらりと世界を招く。素敵なひとは、頭のネジが何本が飛んでいるみたい。まばゆい才に、ピンクローズが霞む。


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