何を書くにしても説教くさくしたくないし、説教するほどの民度や気品もなければ説教をするほど偉そうな立場でもないので、比較的フラットにいようと心がけてはいるのだが、どうも他人は気に入らないらしく、なにかと難癖をつけてくる輩がいるらしい。あんまり気にしてこなかったが事実と自身の行為と自身の妄想が混濁してしまう他人もいるらしい。それに気を取られて正義感なのか知らぬがご苦労なことに他人に突っかかる暇人もおるらしい。よくもまあそんなことをするもんだ。

　私はどうも憤りの感情はフッとでたとてなんとなくどうでも良くなるような、つまらないにんげんになってしまっている。そのため他人に突然横槍を受けても、あ〜はいはい暇人ね、となる。相手になる気にもなればなれない時もある。気まぐれなので芯を持って他人に難癖をつけることに特化した輩は真っ直ぐで逞しい。軽薄で申し訳ないが、好戦的な姿勢を持っていると誤解されてるのでなんだが、なんとなくさめてしまった。

　他人に否定され続けて捻じ曲がるということは誰にだってあるだろうしそこからどうにか戻ろうとするか、まあいいかこのままでいいかとなるか、あるいはどんどん拗らせて原型のないまでに完全におかしくなるか、あるだろうが、私は人格に問題があるのだろうからそうした機会に恵まれていたからひとつ目に向かうこともなく、かと言って完全に壊れることもなく、まあ仕方ないか〜考えるような癖ができてしまった。

　しかしなんだろう、いざ他人にあれこれありもしないことを塗りたくられる様は気味が悪いというか、気色が悪い。似たようなものだが、他人に与える印象を自分でコントロールするように、たとえば陰口のような形であれこれ塗られていく、まあ今に始まったことでなく至る所でそうした物を塗りたくられているのだろうが、別段外装が濃くなるばかりでハリボテの先にある核心には誰もが辿り着けない。他人を誤解し続ける他人は永久に本質を掴めないし、私もそちら様の本質を掴む気はさらさらないので一向に他人を理解する、理解しようとする回路は断たれる。

　とりあえず言えるのは何やら他人の妄言に付き合い、その人の怒りを受け継いで他人に難癖を立てることができる「おもいやり」を持ったナメガキがひとりいたということである。私はそこに感銘を受けた。え！？あんな人のために動こうとする輩がいるの！？という驚きである。同時にえ！？こんな卑小な人間である私相手にわざわざ首突っ込むんすか！？と。暇人とは本当に敬服するばかりに生真面目なのか、本当に暇を極めすぎて頭がお熱なのかわからない。

　私の友人なのか宿敵なのかよくわからないが、自分は実態のないフィクションのようなものだと言う奴がいる。この前久しく電話したら多重人格みたいになっていてナカナカおもしろくなっていた。私もろくでなしにちがいないが、そのひともろくでなしにちがいない。だがそのろくでなしはとうとうこういった些細な自分の中の鬱憤を晒すような断章をひと月も書き続けたという。すごい。私だったら途中でアホらしくなって筆を投げる。匙も投げる。机も投げる。

　筆だろうが匙だろうが机だろうが、他人が見る私の像だろうが知らぬが、どこまでずれ込んだ視野でお見せできるかわからないが、書くならそうしたやり方もあるし、そこに「もうひとつ」を作り上げられるなら生活の空所になるのだろうか。

　他人に対しての好意が、自分の持っているそれは気持ちが悪いなと感じる時が多い。粘着質なべたべたした肌触りの悪いものが皮膚の上を滑っていき内部へ浸透していって操られているような気持ちになる。

　野良猫が深夜に鳴くのが煩くて猫避けの砂を買って撒いたらほんとうにこなくなった、仕事帰りにホームセンターにわざわざいって長考して買ったのに、いつも行くドラッグストアに同じものがあって信じればよかったと後悔した、鞄の中にホームセンターで買ったものが会計済みのシールが貼られたまま剥き出しで放り込まれていて万引きに勘違いされないかビクビクしてレジに並んだ、なにもなかった、

　自分が他人に向ける好意に嫌悪感を覚えるのはなぜなのかわからない、そのせいで棘を身に纏ってしまうのか、そもそもそれは好意なのかわからないが、幼少期からその手の癖のようなものはついぞあって、世間様がうまくことを運ぶような関係を模倣したときは何か演技を強要されているような強迫観念があった、つまるところ矛盾が生じるままに捻くれたあたまとこころとからだを持ち続けないといけないということ、この性質を呪うしかない、

　職場の新入社員のひとりが怖すぎる。
　真面目なところはあるが、仕事に猛突進で、周りが見えていない、自分勝手だ、私もこんな時があったに違いない、恥ずかしく思う

　これを人は分裂症と罵るのだろうが、アンビヴァレントな意識、感情、衝動がぐたぐたに煮詰められているのが私だったりして、そのどちらをも受け止める器量の大きな人もいないしそんなもの求めているのか求めているのかわからない、私にとっては拒絶も享受もすべて同等に扱われてしまう、悪夢である、感情が矛先になっていようとも、隠し続けなきゃならない、収まりが悪くてこうやってはみ出しているわけだが……

　歳を取った感がある、随分鈍くなった、立ち直れない痛みを伴うような機会があっても体面のために立ち回らなきゃならない大人の世界ですり減らされてきたものを、たくさん落としてきたかもしれないと慄然する、振り返るともっと求めてもよかった、もっと喜んでもよかった、もっとまんざらでもなかった、なんてこともあったのに、こうした望郷のようなものは、いずれ報われるのか、うじうじしなくなる、そんなものもあったと寂しく思うと老けたと感じる、

まだあなたを求めて書いてもよいか、
あなたを求めることを書いてもよいか、
あなたが求めるものは書けるのか、
嫌悪だけがある、