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映画『インターンシップ』からソサエティ5.0を考えてみる

ドラマ・映画好きなキャリアコンサルタント xyzです。


今回取り上げる映画は インターンシップ(2013)です。

原題は『The Internship』


映画の概要はこちら⬇︎


おじさんのインターンといえばロバート・デ・ニーロの『マイインターン』の方が有名でしょうか。

ファッションサイトを運営する若い女性CEOジュールズがデ・ニーロ扮するシニア・インターン、ベンとの交流を通して人間的に成長する物語でした。

年の差40歳のベンから学んだことは「経営者としてのありたい姿」だけではなく「人としてありたい姿」でした。人生の先輩からの温かいアドバイスから得た大事な気づきがたくさんありました。


かたや今回紹介する『インターンシップ』

こちらのおじさんインターンの話はおふざけモードで、かなり下ネタ絡みの強烈ジョークも多く、万人にお勧めするのはなかなか難しいのですが……💦

でも、この映画のおじさん達もデ・ニーロに負けないくらい、周りの人々を変えていきます。

実に真面目にD&Iについて描いている映画ではないかとわたしは思っています。

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さて、D&Iとは何でしょうか。


D&Iとは


D&Iダイバーシティ(Diversity)インクルージョン(Inclusion)を組み合わせた概念で、「多様性を認め、受け入れて、活かすこと」

具体的には……

性別、年齢、国籍、宗教、ソーシャルヒエラルキー、障害の有無、性自認、雇用形態(正社員、契約社員、派遣社員)、ライフステージ、価値観、世代といった違いを単に認め受け入れるだけでなく、企業・組織として相乗効果を発揮するように活かしていくのがD&Iの目指す姿です。

(ロバート・ウォルターズHPより抜粋)


そもそもD&Iは60年代にアメリカで「新公民権法」が施行されたことをきっかけに生まれた概念です。

この法律では、社会的な差別の是正のために、年齢・性別・人種などによる一切の差別を禁止することを制定しました。


2000年以降、ITの急速な発展やグローバル化を背景に、日本でも制度として取り入れる企業が増えていますが、なかなか日本では導入が難しいとされているようです。

元々アメリカ発祥の思想であるため、日本でそのまま取り入れることに無理がありますし、日本の実情に即して段階的に導入するといった工夫も必要になるのでしょう。


また最近はD&IではなくDEIだという話も聞きます。DEIはダイバーシティとインクルージョンに加えてイクイティ(Equity=公平性)の3つの言葉の頭文字で、すべての人が安心して暮らせるより良い社会を作るために欠かせない3要素だそうです。

その背景には、特に米国で社会問題化した、マイノリティの社会構造的不平等の問題があります。

差別をなくし機会を平等に提供するだけでは解決できない「社会構造的な不平等」が認識されてきたためです。出発点からの不公平が存在している状況では、同じ機会を平等に提供しても社会構造的な不平等は解決されず、かえって社会に分断や構造的格差を定着させてしまうことになります。
そのため、イクイティ、公平性の概念も強調されるようになったとのことです。


おじさん、路頭に迷う


さて、では映画の話に戻りましょう。

予告編を。


日本語字幕付きのものはレンタル予告しか見つけられませんでした。

なんとなく雰囲気伝わりますか?
はい、コメディです。


でも、この予告だと映画の面白さを1%も伝えきれていません!
ネタバレしないように出し惜しみしてるのでしょうか?実にもったいないことです……。


ある日突然、会社が倒産し(しかもその事実を営業先で顧客から知らさせるという💦)無職になってしまった中年男ビリーとニック。

ビリーがGoogle社のインターン募集の情報を知り、二人で応募。なんとかインターンプログラムに参加できることに。(そこに行き着くまでにいろいろととんでもないことの連続でしたが💦)


プログラム参加者たちは自分たちの子供くらいの年齢の天才たちばかり。

5人1組のチームで6つのミッションをクリアして一番成績の良かった1チームのみがGoogle社へ入社できる、というサバイバルゲームさながらのプログラムで、さてニックとビリーはどうなる?…という話です。


寄せ集めチーム=D&I ?


ビリーとニックはインターン生の中でも初めから浮いた存在でした。

その見た目からビリー達をGoogle社の幹部かお偉いさんだと勝手に勘違いした男子が媚を売りに挨拶に来ましたが、彼らがただのおっさんインターンだとわかった途端、「なーんだ、ご機嫌取って損した」とばかりに離れていき、それからは彼らをバカにする態度をずっと取り続ける……なんとも失礼で不遜な若者です💢

チーム戦で競うことが告げられグループ分けの時になって、敬遠されたおじさん二人組は最後まで誰ともチームが組めないでいます。

見ると、他にもあぶれた者がポツンポツンと残っていました。
ニックとビリー、誰からも声が掛からない一風変わった若者達で構成された5人のグループ……いわば寄せ集めチームです。勝ち目は……誰が見てもなさそうです。

そもそもコミュニケーションがまともにとれない5人、チームワークなどおよそ期待できそうにありません。

ミッションが始まると早速ニックとビリーを「戦力外」とばかりに邪魔にしたりお昼ご飯を一緒のテーブルで食べたがらないなどなど、初めは二人を受け付けようとしないメンバーたち。

そんな規格外のチームが、6つのミッションをクリアしていく中で次第にお互いを受け入れ理解し、各人の持ち味を活かしてそれぞれが最大の力を発揮し、チームとしてまとまりを見せていくのです。

これぞD&Iでありシナジー効果です!


バラバラだった5人のチームをまとめたのは、意外にもビリーとニックのアナログさでした。


およそITとは対極にある泥くさい営業スキル対人スキル、そして必死さ、困難にぶつかっても決して諦めないしぶとさ。


それと、80年代に流行った映画(他のインターン達は生まれてすらいない時代😅)からの教訓!
『フラッシュダンス』はビリーのお気に入りなのか引き合いに出す映画No.1です🤣


衰退する職業、消える職業


ニックとビリーは高級時計のセールスマンでした。口八丁手八丁で商品を売ってきた凄腕セールスマンです。

しかし「このご時世スマホの普及で最早時計は売れないから」と社長が勝手に会社を畳んでしまうところからニックとビリーの受難が始まりました。

終わりが始まり……(トランジション by ブリッジズ)ですね!


いきなり仕事がなくなる/変わる
会社が倒産する。

ニックやビリーに起きた出来事は決して他人事ではありません。


近年さまざまな仕事においてAIやIT技術の導入が進んでいます。また昨年来の新型コロナウイルスの影響により生活スタイル、仕事のスタイルも随分と大きく変化しました。

こうした環境の変化を目の当たりにすると「自分の仕事はどう変わっていくのだろうか」「自分の仕事に将来性はあるのだろうか」と不安を感じる人もいるはずです。


AIや機器・機械で代替できない、人間にしかできない仕事であれば奪われたり無くなったりすることはないため、将来にわたっても仕事がある可能性が高いと考えられます。


たとえば、感情を汲み取ることや想像力を駆使すること、コミュニケーションを取ることなどの感情性、感覚性が求められる仕事、職人の微妙な手仕事などに代表される細やかな身体性が求められる仕事などは、機械やAIが完全に代替することは難しいでしょう。

また、士業等の専門職は判例の検索など煩雑かつ膨大な事務業務の一部をAIが引き受けることはあっても、判例の解釈、運用、また依頼人の気持ちを理解し、寄り添うといった感情面でのサポート等はできないため、すべてをAIが代替することは不可能と言えます。


Googliness(グーグリネス)とは


Googleが同社の行動規範として掲げてきた「Don't Be Evil(邪悪になるな)」というスローガンは有名ですね。

(ビリーとニックを掌返しで馬鹿にしたエリート学生はevilですね!)


他に映画の中で頻繁に出てきた言葉にGoogliness(グーグリネス)があります。

Googlinessとは『グーグルらしさ』。グーグルらしさとは……

あいまいで不明瞭なその環境を楽しみつつ、解決方法を見つけられる自発性を重視している。そのとき、失敗や間違いを恐れず前に進めること。


問題を顕在化し自発的に課題を解決する能力、実行力、レジリエンス、でしょうか。


Googlinessは、多種多様な個人の集合体を有機的なチームへと変貌させるするために必要なマインドセットなのですね。


落ちこぼれ中年二人組のニックとビリーが、まず同じグループの仲間たちに対してGooglinessを体現して見せ、次第に仲間たちもGooglinessを体得していくのです。その過程が映画で描かれています。
この映画はチームビルディングの教科書とも言えます。



平等の機会


Googleのホームページで人材募集のページを見ていたら、下記のように書かれていました。

Google は、アファーマティブ アクション(積極的差別是正措置)を採用するなど機会均等の職場であることを誇りとしています。人種、肌の色、家系、信仰、性別、国籍、性的志向、年齢、市民権や配偶者の有無、障害、性自認、軍役経験に関係なく均等な雇用機会を約束します。また、法的要件に一致する限り、採用の選考時に犯罪歴が考慮されることはありません。Google の雇用機会均等ポリシーおよび、雇用機会均等は法律で定められていますをご覧ください。障害をお持ちの方や特別な援助を必要とする方は、応募者向け援助フォームからご遠慮なくお知らせください。

       Google HPより引用

まさにDEI(Diversity Equity Inclusive)ですね。


Society 5.0(ソサエティ5.0)

最近よく聞くソサエティ5.0という言葉。


内閣府で出しているソサエティ5.0に関する声明です。


つまり、これまでの個人間の格差をAIやIT技術、ロボット等の有効活用により是正し、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送れるようになること、一人一人の人間が中心となる社会であり、決してAIやロボットに支配され、監視されるような未来ではない、と強調しています。


こうした動きは世界レベルで進んでおり、国連の「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)の達成も、このソサエティ5.0の流れを汲むものですね。

誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送るための大きな変化とは、別の言い方をすれば現在の生活の大転換をも意味します。

これまでと同じように仕事をするだけではその大転換に対応できなくなるかもしれないということです。

産業の効率化が進めば人間の労働力が必要なくなるでしょうし、単純作業の多くはAIや作業ロボット、機械にとって変わられるであろう未来。

今存在している「仕事」自体無くなってしまうこともあるでしょう。


ではこの先、人が「働く」ことはどうなっていくのでしょうか?


人間にしかできないことが残っていく


消える仕事があれば、新しく生まれる仕事もあります。


例えば、平成時代に消えてしまった職業として場立人、才取人があります。


昔の証券取引所(立会所)

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今の証券取引所(ジャスダック)

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かつて証券取引所の立会場で、手でサインを使って売買注文を伝える証券マンが「場立人」で、その注文を紙の上に書きつけて売買を仲介した業者が「才取人」でした。


時代が進み、インターネット取引に移行した現在では両者とも必要無くなってしまいました。

今後も、時代の趨勢や技術の革新に合わせて淘汰されていく仕事、職種が出てくることでしょう。それぞれのキャリアもその変化に対処していかなければなりませんね。


ソサエティ5.0の影

新しい技術が生まれると、その技術を使いこなす新たな職業が生まれます。しかしその一方で、上にも書きましたが、淘汰される職業もあります。今存在する仕事だって将来なくなってしまう可能性だってあります。

このように社会が急激に変化すれば、その分失業者が増えてしまうといった新たな社会問題が生まれることは想像に難くありません。
進歩のの部分ですね。


現在進行形で進みつつあるソサエティ5.0への流れは止めることができないとなると、これからは先進技術とどのように付き合っていくか、とパラダイムシフトしていかなければなりません。AIやロボットとの共生です。


また、ソサエティ5.0で使用される高度な技術に皆が適応できるかという課題も出てくるでしょう。


生まれた時からデジタル的なものに親しんでいるデジタルネイティブ世代の若者はいいですが、個人差はあるとは言え高齢者、特にコンピュータ、機器の操作に慣れていない人にとっては、新たな技術を使えない、使うことに抵抗を示す人もいるかもしれません。


誰にでも使うことができる、ユニバーサルでユーザーフレンドリーなデバイスの開発や普及も必要になりますね。


Googleを調べていたら「社の使命」としてこんな一文を見つけました。

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これは、先ほど上に書いたことにも繋がりますね。

「誰にでも使うことができる、ユニバーサルでユーザーフレンドリーな」サービス。皆に優しい世界の実現が理想とすることでしょうか。


ソサエティ5.0でキャリアコンサルタントができること



企業内キャリアコンサルタントの可能性は?


グローバル競争の激化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展など、社会経済の不確実性が高まるなかで、企業は従来の長期雇用の維持や企業主導による従業員への能力開発機会の提供が難しくなると言われています。

今後企業が人材の育成をどのように支援していくかという課題の解決にもキャリアコンサルタントが活躍する余地はありそうです。

セルフキャリアドックの需要や活用もますます高まっていくと思われます。

セルフ・キャリアドックとは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティン グ面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主 体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のことです。

厚生労働省「セルフキャリアドック導入の方針と展開」資料より


どんな企業内にもセルフキャリアドックが設置されていて、誰でも気軽に利用することができる……そんな未来を実現させたいですね!


キャリアコンサルティングの可能性


テクノロジーの進化は、個人が自己の意思に基づいて不特定多数とつながることが可能となり、職場や学校などの所属・組織に限定されることなく、より広い世界で成長する機会を得ることができます。


キャリア自律の点でより個人の裁量が大きくなることは間違いありません。
企業に頼るだけの受け身の姿勢ではなく、自分のキャリアは自分で開拓し続けることが求められます。


このような時代だからこそ、どんな人にもキャリアコンサルティングが必要であり、伴走者としてのキャリアコンサルタントが必要とされるはずです。


キャリア自律を支援するキャリアコンサルタントの役割が、今後ますます求められていくのではないかな……

などと、このハチャメチャおじさん二人組が大活躍する映画を観ながら改めて思った次第です。


下ネタには目を瞑って(日本語字幕ではマイルドめになってますw)是非観てみてください!

実はとても真面目で、そして心温まるストーリーです。


最後までお読みいただきありがとうございました😊