2022年7月27日、僕はハイキング仲間のじろさんと共にアメリカ合衆国のコロラド州中心部デンバーに立った。
この日からおよそ1ヶ月と2週間、アメリカで生活をした。

ロッキー山脈を歩くコロラドトレイルを始めるためだった。
40Lのバックパックを背負ったおじさん2人、主に僕がやらかすロングディスタンスハイキングの始まりだ。

〜前回までのコロラドトレイル体験記〜
無事にトレイルヘッドに立ち、コロラドトレイルをスタートした2人。
早速怒られるやな。
「シェルター立てる練習くらい、してきてくださいよぉー」
すみません、ほんと。てへぺろ。
まぁとにかくなんとかコロラドの自然に抱かれて眠ったわけだ。
ネイチャーー！
朝を迎えて、ひとつ目の街まで。
最初の区間は2泊3日。標高がみるみる上がってるけど、大丈夫か？(僕)
なーんか調子出ちゃってはいないか？
よし、まぁ振り返ってみるとしよう。

コロラドの自然に抱かれて眠った朝。
7:27にハイキングをスタートした。
7月31日。長らく日本でのハイキングの相棒になっているチープカシオは、日本から9,000km以上離れた遠い土地アメリカ合衆国のコロラド州でも元気に動いています。

キャンプ地から程近い沢で水を補給し直す。
そういえば前日到着したころ、ここの沢っぺりで椅子を出して本を読んでいた女性がいたな。
朝一にそんなことを思い出しながら、日本から持ってきたソーヤースクィーズミニで当面の水を絞り出した。
SouthPlateRiverTrailhead。それがこの日スタートした地点の名前。
美しい川沿いを通り過ぎながら眺めていると、川っぺりでキャンプしているハイカー達を見かける。
えぇ！？いいの？そこでキャンプ。いいんだ。
いいんだなぁ。
ULハイカーもいれば、トラディショナルなハイカーもいる。
TarpTentのシェルターもいれば、REIのテントもいる。

抜けがいい気持ちのいいトレイルを歩く。
あーアメリカってこうなんだ。
朝日が心地よく、足が回る。

標高はとっくに2,000mを超えているが、森林地帯が続いている。

所々こんなふうに抜けがいい地帯を歩くので、日本の山での経験や思い出がなんだかよくわからなくなる。
あれ？今標高なんmなの？
自転車を楽しむ人たちもいる。

エンジェルの消防署に立ち寄ると、ハイカー達が休憩している。日陰を求めてみんな寄り合っている。
僕たちもここでランチだ。
アメリカのハイカー達はお話が大好き。
僕たちも会話にすこーしだけ混ざらせてもらった。
なにを言ってるのかこのときは全然わからない。
若い女性ハイカーに話しかけてもらった。
とりあえずわかったのは、ガロンのオリーブオイルボトルを持って、これが私のエネルギーなんだ！Hahaha！と誇らしげにトレイルフードを紹介していることくらいだった。

少しずつ体調が悪くなっていく。
あれ？
じろさんは冷静だ。
じろさん「まぁ、慣れない高地ですし、もうちょっと先にいいキャンプサイトがありそうなのでちょっと早いですが寝ますか」
う、はい。
道を少し間違えて引き返すと、同じように間違えたハイカー達が追ってきた。
たどたどしい英語で「この先はコロラドトレイルじゃないぽいよ！」と伝えると、じゃあ俺たちも戻るか とみんなでOn Trailへと戻った。

90分ほど歩くと、開けた平らな森林地帯に辿り着く。
僕たちはそこでシェルターを張った。
うっ…
この辺で僕の体調の変化が如実に表れる。
ひどい二日酔いかのような症状だ。
頭は痛いし、吐き気がする。
食欲がなくなるし、身体が動かない。

「体調悪いなら、水を飲んでちょっとでもウロウロ身体を動かしたほうがいいですよ」
そうじろさんが教えてくれた。
僕はとりあえず水のボトルを持ちながら辺りをウロウロすることにした。

トレイルの少しハズレに眺めがいいところがあった。
黄色い小さな花が咲いて、景色はまるで天国に来たかのよう。
僕はFF8のオープニング動画みたいだとこの時考えていた。スコールとサイファーが戦っていても違和感がない。

うぅ…うー…ざるそばが食べたい…ざるそば…冷たいの。食べたいっす…
じろさんに弱音をぶつぶつと吐きながら、食わないと明日動けないと無理やり掻き込んだ晩ごはん。あぁ慣れ親しんだカップヌードルを買っておいてよかった。こんな序盤に食べてしまっていいのかと思ったけれども。
トッピングはパウチに入っているチキン。
アメリカはパウチフードが豊富。レモンペッパーチキンをトッピングした。

掻き込んだあと、すぐに横にはならず少しでも高地に慣らすために身体を動かした。
あぁ、僕は大丈夫なのか。
ちゃんと歩けるのか。
辛いなぁ。
あぁ。と頭の中が弱音でぐるぐるしていた。
街に降りてビール飲んでハンバーガー食いてーなーとも思っていた。
煩悩ってすごい。

頭がいてーなーと思いながら気づけば疲れで眠りに落ちていた。

翌朝、

薄暗い中スタート。時刻は5:08
じろさんは少し先に出発した。
朝起きるのが辛い僕。
というか起きてから動き出しが遅い。
寒くてキルトの中でモゾモゾしているのだ。
まぁその、この時間も幸せで好きだったりするのだけども。
僕たちは常に共に行動するわけではなく、何日後に補給で街に降りるためのトレイルヘッドで落ち合えればいいね、と各々のペースで旅をすることにした。

ひたすら歩いてメシ食って昼寝して歩いてメシ食って夜寝る。
これだけで心地良いものだ。
そして意外と忙しい。
ロングトレイルハイカーは毎日忙しいのだ。
日が登ってくる明かりが美しい。
僕はすでにコロラドの美しさに虜になっていた。

モフモフのリスを眺める。
動物の距離が近い。可愛いなぁ。
綺麗な花もいいんだ。
綺麗な蝶がひとなつっこいなぁ。
お、なんだこの石は！なんかわかんないけど、なんかエンジェルぽいぞ！なんかわかんないけど！
僕は前夜から少し体調回復をして、キャッキャウフウフしながら1人でのハイキングを楽しんだ。

と、13:03に一つ目の街に降りる予定のトレイルヘッドに着く。
その手前でじろさんが待っていたので合流をした。
トレイルヘッドに着くと、WATERと書かれたプラスチックケースを見かける。おぉ、水だ！ありがたく頂こう！
と、蓋を開けると裏面に Two Bridges Lodgeのチラシ。
ふむふむ、とりあえずgoogleレンズを通して英語を日本語に翻訳だ…
おぉ？電話くれたハイカーは迎えに行くよ！と書いてある。
よし、電話してみるぞ！大丈夫なのか？この拙い英語でいけるのか！
じろさん、とりあえず翻訳のカンペ画面の用意をお願いしますよぉ。
と意を決して電話をかけてみようとする。
と2人組の50代くらいのCTハイカーに声をかけられる。「どこから来たんだい？」
僕は応じる。「日本から来たんだ！」
そうなのか！娘がな、日本に行ったことあって俺もついてったんだよぉー回転寿司にラーメンにうどんに色々美味かったなぁ！と言っていた。
街に降りる様子がないそのCTハイカー達に僕は質問をした
「Where are you going?」どこまで行くの？と
「I don't know」とニカッとsmileしながらそのハイカーは答えてくれた。