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ナシゴレンと炒飯、そしてFried Rice

あいちトリエンナーレ2019「情の時代」

特に印象に残った作品をいくつか.


永田康祐「Translation Zone」

レヴィ=ストロースの料理構造論(料理の三角形)を導入として、料理を題材に「辞書的意味と実際の用法の関係」から、「由来に関する時間性」に触れ、気が付けば2019年6月に起きた「google翻訳の異変」(so sad to see hong kong become chinaが很高兴看到香港成为中国(香港が中国の一部になるのはとても嬉しい)と表示された)までも巡って帰ってくるという展開. ツボすぎて2回観た. (noteのタイトルはこの展示内容から)


今村 洋平「tsurugi」他

シルクスクリーンを1万回近くも刷り重ねて、限りなく薄いインクの積層によって地形図等の造形が作られている. 大雑把に言えば人間3Dプリンター. もはや狂気としか言えず、吸い寄せられる. 実物に目を近づけてみると幾層もの重なりがよくわかる.


タニア・ブルゲラ「10150126」

展示室に入る前に、手にスタンプを押される(10150126). この数字は2019年に国外へ無事に脱出した難民の数と国外脱出が果たせず亡くなった難民の数の合計を表している. 真っ白な展示室には何もないが、気化した刺激物で目から強制的に涙が出る仕掛け. 人間の知覚を通じた「強制的な共感」


ジェームズ・ブライドル「ドローンの影」

イラクやアフガニスタンで実戦運用された無人偵察機の実際の機体サイズが地上にかかれている. 実際は高度15000mを超える高さを飛行するため、目視は当然できず、確かにそこにあるが感知できない様が、白線として示されることでより際立っていて不気味.


ヘザー・デューイ=ハグボーグ「Stranger Visions, invisible」

ニューヨーク市の街頭で収集したタバコの吸殻やガムからDNAを抽出. その情報から3Dマスクを作成. 個人情報はオンラインだけではないことを知らしめている. 公共の場所にあるDNA情報を消去する"Eraseスプレー"が購入可能である事実が、これからの近しい未来像の一端を暗示している.


そしていくつかの展示の不在自体が、来館者の興味を引き、本来の展示内容の意図とは違えど、足を止めて表現について考える機会を与えていた.


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