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桑原薬師堂の仏像群 かんなみ仏の里美術館

静岡県の函南町大竹地区で発見された千体観音像の夏季特別公開を観にかんなみ仏の里美術館を訪れた話しを2回にわけて書いてきたが、今回は同館の常設展示について書きたい。

かんなみ仏の里美術館のすぐ近くに桑原薬師堂というお堂があり、そこで長い間周辺の住民に守られてきた仏像群がある。同美術館はそれらの仏像群を保存、公開するために作られた施設だ。


桑原薬師堂から同館に収蔵された仏像は、平安時代の「薬師如来像」や鎌倉時代の「阿弥陀三尊像」をはじめとした24体。いずれも優品で、なかでも阿弥陀三尊像は国の重要文化財に指定されている。

この阿弥陀三尊像は、鎌倉時代初期に慶派仏師・実慶によって制作されたもの。実慶は静岡県伊豆市の修禅寺の本尊・大日如来像も手がけている。

函南町に隣接する伊豆の国市は鎌倉幕府執権に代々就いた北条氏の本拠地であることから、この辺りは運慶をはじめとした慶派仏師と縁が深い。そのため、ここに慶派仏師による優れた仏像が遺されていることには納得できる。

が、平安時代の薬師如来像がどのような縁でこの地に伝えられたかは、わかっていないようだ。
見たところ、奈良や京都の一流仏師による造像だろう。箱根神社の関連でという説はあるようだが、気になるところである。

十二神将像も見応えがある。12体揃っているが、制作年代はばらばらのようだ。当初は鎌倉初期に製作されたが、つくり直しを重ね時代の違う像が揃う形となったという。

収蔵品は決して多くはないが、足を運ぶ価値がある施設だと思う。
美術館での鑑賞ではあるが、仏像が大切に守られてきた土地の雰囲気をそのまま感じることができる。

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