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美術のことを中心に、ニッチなことを書いていきます。湘南のとあるカフェで、自作のアート系…

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美術のことを中心に、ニッチなことを書いていきます。湘南のとあるカフェで、自作のアート系フリーペーパー配布中。

最近の記事

練馬区立美術館 池上秀畝展

練馬区立美術館で4/21まで開催の池上秀畝展を見た。 池上秀畝は明治、大正、昭和初期の日本画家。 この展覧会で初めて名前を知った。 見始めは少し物足りなさを感じた。 上手いがゆえにクセのない印象を受けたからだ。 作品を見進めていくと、 「鳥の絵が多いな」と気づく。途中で秀畝は鳥を得意とした画家であると知る。 鳥の羽の細密な描写は見事! 見入ってしまった。 特に杉戸絵が良かった。 こちらはガラス越しでなく生で見れた。 他にも畳の間に上がって鑑賞する屏風もあった。

    • 悩ましき図録

      美術館に行くと欲しくなる図録。 以前は欲しいものは迷わず購入していたけれど、高い、重い、そして何より分厚いので保管するのに場所をとるため今は買うのを我慢している。 でも昨年末から今年にかけて、何冊か買ってしまった。なんとか本棚の隙間に入れ込んでいる。 直近で買ったのはこれ。 これはまだコンパクトだった。 所蔵するなかで一番分厚く重いのはこれ。 私淑する赤瀬川原平さんの図録。 ぜったいに手放せない。 ほかには鎌倉国宝館の企画展のものがたくさん。 赤瀬川原平さん関連

      • 尊い民間仏 「みちのくいとしい仏たち」

        東京ステーションギャラリーで2/12まで開催されている「みちのくいとしい仏たち」へ。 同展で展示されているのは、何とも愛らしい民間仏。 これまで数多くの仏像を観てきたけど、今回は新鮮な体験だった。 バランスの取れた一流仏師作の美しい仏像とは違う、自由な造形。 専門の仏師が作ったものではないから決してうまくはないけれど、ほんとうの芸術を見た気がした。 体が四角い。どこからがら腕なのか。単純な形だけど表現したいものをしっかり盛り込んである。 合掌する手、螺髪、衣紋、そしてこ

        • 神奈川県立歴史博物館と横浜の夜景

          今更だけれども、これは書いておきたいと。 昨年の11月のこと。神奈川県立歴史博物館に「足柄の仏像」展を見に行った。 神奈川県立歴史博物館はその建物が国の重要文化財に指定されている歴史的建造物。 ドームを称えた外観が美しい。 「足柄の仏像」は以前に書いた鎌倉国宝館の「寳金剛寺展」の関連企画。 足柄地方の仏像を見る機会はこれまでほとんどなかった。 同展を見て心に残ったことが幾つかあるので、書き留めたい。 ・平安仏が多い  鎌倉国宝館で鎌倉仏を見慣れているため、「これは鎌倉

        練馬区立美術館 池上秀畝展

          鎌倉 報国寺方面からハイランド・浄明寺緑地方面への抜け道

          11月に記事を書いた「黄金やぐら〜浄明寺緑地」。 その後、報国寺方面から浄明寺緑地への抜け道も歩いてきた。 若かりし頃、鎌倉が大好きであまり知らない鎌倉のスポットをみつけたいと、とにかく鎌倉中を歩いて探した。 そんななかで見つけたのが、黄金やぐら〜浄明寺緑地〜報国寺を結ぶ抜け道だった。 報国寺の脇の道を延々と登っていくと、終点に階段がある。 抜け道はここから始まる。徒歩でないと通れない道だ。 記憶では5分程度歩けばハイランドの住宅地近くに抜ける気軽に歩ける道だったが

          鎌倉 報国寺方面からハイランド・浄明寺緑地方面への抜け道

          鎌倉国宝館「寳金剛寺ー密教美術の宝庫」

          鎌倉国宝館12年ぶりの密教美術の企画展 12/3(日)まで開催されていた鎌倉国宝館の企画展『国府津山 寶金剛寺 ―密教美術の宝庫―』を観に行った。 これが、予想していたよりずっと面白かった。 寶金剛寺は小田原市のJR国府津駅が最寄りの真言宗の寺院。 禅宗美術を扱うことの多い鎌倉国宝館で、密教美術の企画展がお行われるのは実に12年ぶりとのこと。 その12年前の『鎌倉×密教』展も私は足を運んでいた。明王院の不動明王が表紙のかっこいい図録も持っている。 鎌倉国宝館の誕生当初

          鎌倉国宝館「寳金剛寺ー密教美術の宝庫」

          赤瀬川原平さん 台北ビエンナーレ2023に出展

          赤瀬川原平さんが好き。赤瀬川原平さんは前衛芸術家で文筆家。 私は全く芸術家ではないが、文章を書くことが好きなので文筆家としての赤瀬川さんを私淑している。 2014年にお亡くなりになった時はショックだった。 もう赤瀬川さんの新しい活動に触れることはないのかと思っていたが、今年、未発表作品を含む写真展が開催された。 1〜3月まで六本木のSCAI THE BATHHOUSEで開催された写真展「日常に散らばった芸術の微粒子」である。 赤瀬川原平さんの活動をリアルタイムに知る最後

          赤瀬川原平さん 台北ビエンナーレ2023に出展

          鎌倉 黄金やぐら〜浄明寺緑地へ②

          黄金やぐら〜浄明寺緑地への階段を行く 迷いに迷って辿り着いた黄金やぐら。 さらにその先に進むと、記憶どおり階段があった。 階段の下に自転車を停めて登ることにした。 登り切るとハイランドの浄明寺緑地に出るはず。 5分くらい登ったところで浄明寺緑地に抜けた。 付近にはお地蔵さま。 記憶が蘇る。 階段を登り切り右の方向に進むとパノラマ台や大切岸、名越切通しがある。 左に進むと報国寺方面への抜け道があったと記憶している。 その抜け道を確認するため左に進んだ。 少し横に逸

          鎌倉 黄金やぐら〜浄明寺緑地へ②

          鎌倉 黄金やぐら〜浄明寺緑地へ①

          今よりもっと体力のあった若かりし頃、よく鎌倉で長い距離を歩いて散策をした。 街外れの切り通しや古道など、人の多い人気スポットとは全く違う雰囲気の鎌倉を歩くのが楽しかった。 その過程で知る人ぞ知る的な抜け道なんかもみつけた。 そんな抜け道をまた訪れたいという想いがずっとある。 しかし、だんだんたくさん歩くのが億劫になり、近年は駅周辺でコンパクトに周るのが定番になっていたのだが。 先日の平日休み、天気がよくて急にやる気が湧き、再訪を果たすことができた。 まず目指したのは、黄

          鎌倉 黄金やぐら〜浄明寺緑地へ①

          仮名をデザインする塾による「文字塾展」

          元同僚から教えてもらったこちらの展覧会。 松本文字塾 文字塾展 東京出張 文字塾は塾生がそれぞれ1年をかけて明朝体の仮名をデザインする私塾とのこと。面白そう。 同展では塾生の方が1年かけてつくりあげた作品を展示している。 1年かけて制作した仮名作品。 さらに文字塾は長野県の松本で開催されているが東京から通う人もいるらしく、力作揃いな予感がする。 書体が違うと同じ文字や単語も印象がかなり変わる。私も自作のフリーペーパーを某所で配布しているので、書体の力を常々実感してい

          仮名をデザインする塾による「文字塾展」

          湘南くじら館「災害と文学」 日本書紀から重松清まで。宮武外骨も!

          湘南モノレール目白山下駅の至近にあるアートカフェ湘南くじら館で開催中の「災害と文学」を見てきた。 こちらでは以前、手のひらサイズの石仏の展示を見に行ったことがある。今回は文芸シリーズということで、どんな展示になっているのか興味があった。 元診療所の建物を利用したこぢんまりとしたギャラリーカフェに、災害関連の本が予想以上にたくさん並んでいた。 先に言ってしまうと、とても面白かった。 古典から近代・現代の作家まで、また小説からノンフィクション、記録本とジャンルも多彩。

          湘南くじら館「災害と文学」 日本書紀から重松清まで。宮武外骨も!

          桑原薬師堂の仏像群 かんなみ仏の里美術館

          静岡県の函南町大竹地区で発見された千体観音像の夏季特別公開を観にかんなみ仏の里美術館を訪れた話しを2回にわけて書いてきたが、今回は同館の常設展示について書きたい。 かんなみ仏の里美術館のすぐ近くに桑原薬師堂というお堂があり、そこで長い間周辺の住民に守られてきた仏像群がある。同美術館はそれらの仏像群を保存、公開するために作られた施設だ。 桑原薬師堂から同館に収蔵された仏像は、平安時代の「薬師如来像」や鎌倉時代の「阿弥陀三尊像」をはじめとした24体。いずれも優品で、なかでも阿

          桑原薬師堂の仏像群 かんなみ仏の里美術館

          かんなみ仏の里美術館 大竹千体観音像②

          静岡県函南町のかんなみ仏の里美術館で夏季特別公開中の『大竹千体観音像』を観に行った話の続き。 前回でも書いたが、この千体観音は函南町大竹の廃寺にあった観音堂から歴史研究家が文献を解読することによって発見されたもの。 ガイドさんの説明によると、これらの観音像は1673年にこの地を訪れた木食僧・蓮誉華空法阿によって彫られたとのこと。法阿は光明院・蓮華寺を再興し、修行としてこの千体仏を彫ったという。 発見された時の様子についても聞くことができた。堂内に400体ほどが祀られてお

          かんなみ仏の里美術館 大竹千体観音像②

          かんなみ仏の里美術館 大竹千体観音像①

          静岡県の函南町桑原にある、かんなみ仏の里美術館へ行った。 この辺りは私の出身地に近く、同館にはオープン間もない頃に同級生と訪れたことがあった。 再訪したのは、毎年夏に公開される『大竹千体観音像』を観るためだった。 墓参りの往路で寄った、伊豆ゲートウェイ函南という道の駅で、この千体観音像公開中のチラシをみつけ急遽帰りに立ち寄ったのだ。 函南に千体仏があることは聞いたことがあったが、まだ見たことはなかった。 美術館に着くと閉館まで1時間を切っていたためか、先客はいなかっ

          かんなみ仏の里美術館 大竹千体観音像①

          暑い季節に観たい、円山応挙の絶筆「保津川図屏風」

          8月はもう終わるけれど、猛暑はしばらく続くようだ。 そんな暑い毎日の中で思い出した屏風絵がある。 江戸時代の絵師、円山応挙の「保津川図屏風」。 保津川の急流を描いた屏風絵で、応挙の絶筆。亡くなる1ヶ月前に完成したという。その頃には視力もだいぶ落ちていたとのことだが、制作時に弟子たちの支えがあったと考えても、衰えを感じない見事な画力と表現力に驚く。 屏風絵なのでとても大きな作品だ。 高さ154cm、幅483cm。それが一対になっている。 初めてこの絵を見たのは10年以

          暑い季節に観たい、円山応挙の絶筆「保津川図屏風」

          車窓から撮った風景写真

          ある日、栃木県内の国道4号線を車の助手席に乗って通っていたら、気になる車窓風景が。 田園風景の開けた土地に、鉄塔が青空を背景にたくさん並んでいた。咄嗟に「撮りたい」と思いスマホを手に取った。 慌てて撮ったことと走っている車の中からという悪状況が重なっているので、隅には余計なものが写っていたり、水平に撮れていなかったり。 スマホのカメラアプリでかなり編集をして綺麗な写真に整えた。 鉄塔の手前は川や池ではなく水田。田植え直前の水を張ったばかりの水田だったので、一年のうちの

          車窓から撮った風景写真