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21世紀のジャズ50枚


「21世紀のジャズ入門」という記事に想像以上の反響をいただき、驚くとともに音楽好きな方における最近のジャズへの関心の高さを改めて実感しました。


「21世紀のジャズ入門」ではこれからジャズを聴いてみたいと思っている方にお勧めする作品というコンセプトの元に、現代ジャズらしくしかも聴きやすい作品を最小限の枚数でということで絞りに絞って10作品に厳選したのですが、正直これだけでは21世紀のジャズを網羅しているとはとても言い難いのが実情です。


そこで今回は前回選んだ10作品も含めて、21世紀のジャズを知るためのアルバム50枚を選んでみました。1アーティスト1枚に厳選し、現代ジャズの全体像を俯瞰できるようになるべく偏りなく選んだつもりですが、ジャズに詳しい方がご覧になると「あれ?あの名盤がない」とか「これよりはこっちの方が」などということもあると思われます。先に陳謝しておきます。すみません。


未聴の方にも分かりやすいように以下の5カテゴリーに分けてみました。一般的な分け方ではなく、今回のリストを見やすくするために私が便宜上つけたカテゴリーです。


・新世代ジャズ 他ジャンルの要素を大幅に盛り込んで新しい型を提示した作品


・狭義のジャズ 従来のジャズを踏襲しながら一層の追求を極めた作品

・ジャズ周辺の音楽 他ジャンルにジャズを大胆に取り込んだ作品

・世界のジャズ アメリカ以外のジャズ、またはその要素を取り込んだ作品

・2000年代のジャズ 2010年代以降の新世代ジャズに繋がる重要な作品


「狭義のジャズ」といっても20世紀のジャズに無かった要素を随所に感じさせますし、「新世代ジャズ」と「ジャズ周辺の音楽」はプラットフォームがジャズか否かで分けましたがこの辺りの線引きはかなり曖昧です。

2000年代のジャズについては他にも時代を代表する作品があると思われますが、今回は2010年代の変革に強い影響を与えた作品という視点で選んでいます。

各作品に簡単な紹介文をつけましたが、どれも数行で表現できるような音楽ではないので、ぜひ実際に聴いてみてください。

各作品にはSongwhipのリンクを貼ってあります。


【新世代ジャズ】


1. Robert Glasper Experiment「Black Radio」2012


R&B〜ネオソウルを追求し、21世紀ジャズ界の羅針盤となったロバート・グラスパーの超重要作。


2. Esperanza Spalding「Radio Music Socisty」2012


ジャズを武器にポップミュージックを追求したエスペランサ・スポルディングによる完成度の高いアメリカン・ミュージック。


3. Sam Gendel and Sam Wilkes「Music For Saxophone & Bass Guitar」2018


サム・ゲンデル&サム・ウィルクスがエフェクターとポストプロダクションを駆使した独創的な音の世界。


4. GoGo Penguin「GoGo Penguin」2020


エレクトロニカの空気を纏うクールなピアノ・トリオ、ゴーゴー・ペンギンのセルフタイトル作。


5. Yussef Kamaal「Black Focus」2016


UKのドラマー、ユセフ・デイズとプロデューサー、カマール・ウィリアムスがタッグを組んで未来型UKクラブジャズを提示した先駆者的作品。


6. BIGYUKI「Reaching For Chiron」2017


ジャンルレスな次世代音楽を目指す鍵盤奏者BIGYUKIの話題作。


7. Rafiq Bhatia「Breaking English」2018


インドにルーツを持つギタリスト、ラフィーク・バーティアによるボーダレス&ジャンルレスな次世代音楽。


8. Theo Croker「BLK2LIFE II A FUTURE PAST」2021


トランペットを自在に活かした次世代ジャズの若き牽引者、シオ・クローカーによるニュージャズ。


9. Pino Palladino and Blake Mills「Notes With Attachments」2021


ベテランベーシスト、ピノ・パラディーノとプロデューサー、ブレイク・ミルズによるテーマ→アドリブというジャズの基本構造を超越した新しいスタイルのジャズ。


10. Nala Sinephro「Space 1.8」2021


スペイシーな音の空間にスピリチュアルなインプロビゼーションが広がるナラ・シネフロのアンビエント・ジャズ。


【狭義のジャズ】


11. Ambrose Akinmusire「on the tender spot of every calloused moment」2020


実力派トランペット奏者、アンブローズ・アキンムシーレが盟友達と繰り広げる音の競演。


12. V.A.「Blue Note Re:imaged」2020


UKのジャズ奏者達が過去のブルーノート作品を現行UKジャズに再解釈した話題作。


13. Makaya McCraven「Deciphering The Message」2021


”ビート・サイエンティスト”マカヤ・マクレイヴンが過去のブルーノート作品をサンプリング元とし新音源も加えて解読した画期的作品。


14. José James「No Beginning No End」2013


21世紀型ジャズ・ヴォーカルを追求する男性ジャズ・ヴォーカリスト、ホセ・ジェイムスの話題作。


15. Gregory Porter「Liquid Spirit」2014


アメリカ音楽のルーツを辿りながら21世紀に歌う男性ジャズ・ヴォーカリスト、グレゴリー・ポーターの話題作。


16. Kamasi Washington「Heaven and Earth」2018


ビッグバンドとコーラス隊を率いたカマシ・ワシントンによる大編成スピリチュアル・ジャズ。


17. Christian Scott aTunde Adjuah「Ancestral Recall」2019

トランペット奏者クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアーが伝統的打楽器とのコラボによりルーツミュージックとしてのジャズを追求した作品。


18. Shabaka and the Ancestors「We Are Sent Here By History」2020


UKジャズの牽引者、シャバカ・ハッチングスが南アフリカのミュージシャン達と共に追求したルーツミュージック。


19. Nubya Garcia「SOURCE」2020


UKの数多くのミュージシャンとコラボし大活躍のヌバイア・ガルシアが骨太のサックスでジャズのスピリットを表現する話題作。


20. 狭間美帆「Dancer In Nowhere」2019


ジャズ作曲家、狭間美帆が自身の率いるラージアンサンブルで新たな世界を切り開いた作品。


【ジャズ周辺の音楽】


21. Brad Mehldau「Jacob’s Ladder」2022


ブラッド・メルドーがプログレとジャズを融合し、天空の音楽へと昇華させた作品。


22. Flying Lotus「You’re Dead!」2014


ビートミュージックの第一人者、フライング・ロータスがブレイクビーツにジャズを取り込んだ実験的作品。


23. Kendrick Lamar「To Pimp A Butterfly」2015


ヒップホップの第一人者、ケンドリック・ラマーがジャズ・ミュージシャンをゲストに招いて創造した新境地。


24. Kurt Rosenwinkel「Caipi」2017 


ギタリスト、カート・ローゼンウィンケルが10年かけて多重録音を駆使して構築した新時代サウンド。


25. Thundercat「Drunk」2017 


話題作に度々起用されるベーシスト、サンダーキャットの、フュージョンやAORを彷彿させるジャンルレスなリーダー作。


26. Jon Batiste「We Are」2021


ジャズ・ミュージシャンとして演奏活動を続けつつルーツミュージックを追求したジョン・バティステのグラミー賞受賞作品。


27. Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra「Promises」2021


フローティング・ポインツ、ファラオ・サンダース、ロンドン交響楽団による壮大なミニマル・ミュージック。


28. Duval Timothy & Rosie Lowe「Son」2021 


声を素材としてレイヤーを重ねることにより独自のオーガニックサウンドを構築したデュバル・ティモシーの実験的作品。


29. Jameszoo「Blind」2022 


実験音楽としか表現しようのないJameszooの世界。


30. Tortois「Standards」2001 


ジャズ・ギタリスト、ジェフ・パーカーが加入してジャズ色を強めたポスト・ロックの雄による2001年作品。


【世界のジャズ】


31. Ezra Collective「You Can’t Steel My Joy」2019 


UKジャズの現在をこの一枚で網羅した、UKジャズシーンの中心的バンド、エズラ・コレクティブによる話題作。


32. Antonio Loureiro「Só」2012 


ブラジル音楽を土台にジャズやフォルクローレを盛り込んだアントニオ・ロウレイロの代表作。


33. Maciej Obara Quartet「Unloved」2017 


端正でクラシカルなユーロピアンジャズを継承するポーランド人ピアニスト、マチェイ・オバラによるカルテット作品。


34. Lars Danielsson「Liberetto」2012 


北欧ジャズの第一人者、ラーシュ・ダニエルソンによるプロジェクトの第一作目。


35. Tigran Hamasyan「Shadow Theater」2012 

世界的な知名度を誇るアルメニア出身のピアニスト、ティグラン・ハマシアンによるオリジナルジャズ。


36. Becca Stevens & The Secret Trio「Becca Stevens & The Secret Trio」2021 


アルメニアのウード奏者、トルコのカーヌーン奏者、マケドニアのクラリネット奏者によるアンサンブルとベッカ・スティーヴンスによる奇跡のコラボ。


37. Yazz Ahmad「Polyhymnia」2019 


バーレーン出身のトランペッター、ヤズ・アハメドによる中近東の香り漂うジャズ。


38. Avichai Cohen「Seven Seas」2011


イスラエル・ジャズのベーシスト、アヴィシャイ・コーエンによるスケールたっぷりのジャズ。


39. Mono Fontana「Cribas」2007 


ジャズ〜クラシック〜フォルクローレの叡智を集結したアルゼンチン音響派を代表するモノ・フォンタナによる耽美な作品。


40. Daniel Villarreal「Panama 77」2022 


シカゴのオルタナ・ラテン・バンド、ドス・サントスのパーカッショニストによる中南米味溢れる作品。


【2000年代のジャズ】


41. Nora Jones「Come Away With Me」2002


全世界で1800万枚売れたゼロ年代のスーパーヒットジャズアルバム。


42. Cassandra Wilson「Belly Of The Sun」2002


女性ジャズ・ヴォーカリスト、カサンドラ・ウィルソンがデルタブルースに根差した音楽を目指したルーツを辿る作品。


43. Jazzanova「In Between」2002


各種リミックスを手掛けてきたヨーロッパ・クラブジャズの中心的ユニットJazzanovaのデビュー作。


44. Meshell Ndegeocello「Cookie: The Anthropological Mixtape」2002


ベーシスト、ミシェル・ンデゲオチェロがジャズに軸足を置きながらヒップホップ〜ネオソウルのビートを追求した先駆者的作品。


45. RH Factor「Hard Groove」2003


「Black Radio」の布石となったトランペッター、ロイ・ハーグローブによるプロジェクトの作品。


46. e.s.t.「Seven Days Of Falling」2003


ピアノ・トリオでありながらエレクトロニカの風情を醸し出し、その後のエレクトロニカ〜アンビエント・ジャズに影響を与えたe.s.t.の代表作。


47. Q-Tip「Renaissance」2008


ヒップホップ〜R&B〜ジャズを横断するプロデューサーとして活躍するA Trive Called QuestのQ-tipのソロ作品。


48. Aaron Parks「Invisible Cinemas」2008


“シネマティック・ジャズ”といえばこの人。ピアニスト、アーロン・パークの風光明媚な代表作。


49. Nicola Conte「Rituals」2008


ヨーロッパのクラブジャズを華麗に牽引してきたイタリアのDJ、ニコラ・コンテの代表作。


50. Hiromi「Another Mind」2003


現在の日本ジャズ界を代表するミュージシャンの一人、上原ひろみの衝撃的なデビュー作。


以上50作品、相当バラエティに富んだラインナップになっていると思います。

できれば今後別記事で各作品の解説も書いていきたいと考えています(と自分に言い聞かせています笑)。

未聴の作品がありましたら是非聴いてみてください。






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