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年収100万円UPするなら、コロナ病棟にいく?-100万円の価値-


Twitterでも先に呟き、アンケートを取りましたが。。
年収が100万UPするならコロナ対応したい?という話。

事の始まりは、職場の先輩と話していた時のこと。

10歳ほど年上の先輩で、入職当時からよくしてもらっている。先輩は別部署へ移動になってしまったが、今でも仲良くしてくれている先輩。


久しぶりに先輩から連絡があり、会っておしゃべりをしていた。
初めはいつも通り、世間話をしていたけど気づけば、やっぱりコロナの話になっていた。私たちの病院でも、もちろんコロナ患者を受け入れている。去年から今にかけて大きなルール改正、検査の導入など、あっという間に全ては変わってしまった。現場から見たら、意味不明なルール、効率の悪いルートなどなど。皆、言いたいことが溜まっている。
くだらないことを話しながら笑っていたが、しばらくして先輩が突然声を顰めながら、でも語気強めにこう言った。

「コロナ病棟勤務は年収100万円UPしてるらしいよ。ずるくない?ムカつくー!私だって年収100万円上がるなら働きたい!」

悔しそうに、羨ましそうに話してきた。


それを言われた時、私はへ〜と思った。
私より年収も高いであろう先輩が、高々100万円UPの話にそんな必死になるんだと不思議な気持ちだった。


コロナ病棟での業務

私は今年の初め、コロナ用のICUにヘルプに行き数ヶ月間働いていた。
内容は個人防護具を着て、重症患者対応。ほぼ皆、気管内挿管・人工呼吸器管理、寝たきり。完全に寝たきりで、力の入っていない人間のケアをすることは、思っている以上に大変。

点滴や、挿管チューブ、Alineと呼ばれる動脈に留置してある点滴ルート、膀胱留置カテーテル、血液透析をするためのブラッドアクセスなどなど、、体のあちこちから、抜けてはならないチューブ類が出ている。
そして全てのケアをベッド1つの上でやらないといけない。着替えも、おむつ交換も、食事も(胃管で栄養剤注入)、洗髪も、体を拭くのも、シーツ交換も、歯磨きも、色々なチューブを止めている固定用のテープ交換などなど、、。
文字に起こすと、自分一人でできてしまうことなので大変さがいまいち伝わらないかもしれない。体の向き一つ変えるだけで、血圧や呼吸状態がコロコロ変わるような時もあるから、常に緊張感がある。

コロナ陽性患者の対応はそれに加えて、
機密性の高い息苦しいマスク、視界を遮るフェイスシールド、汗をかいても蒸発しない体にまとわりつくビニールガウン(防護具)、手の感覚が鈍くなる手袋二重装着、帽子をつけなければならない。

あの防護具の着脱が凄まじく手間で、時間をとる。急変があったとしたとしても、身一つで部屋にすぐに飛び込むことはできない。

そして、コロナ用ICUの隣には重症を脱した患者がいる一般病棟がある。
そこは割と状態も落ち着いていて、患者数も少ない。少ないとはいえ、ここ数ヶ月はずっと満床が続いている。

一般病棟とICUでは緊張感や求められるレベルや専門性が異なるが、1日の手当は一緒、皆年収100万UP中だそうだ。

ざっと、コロナ病棟勤務経験からメイン業務を書いてみた。それ以外にもサブ業務は沢山あるので省略。

ヘルプで数ヶ月行っていただけででも、今思うと私はかなり心身ともに疲弊した。その頃はまだワクチンも打っていない状態だったので、現場はかなり緊張感があった。人は疲れてくると集中力も低下するし、行動も思考回路も雑になる。自分を含め人の行動一つ一つがすごく気になるようになった。手洗い不十分や防護具の脱ぐ順番を間違えるだけで、自分がウイルスを持ち出し、院内クラスターを起こす恐れがある。という重責に押し潰されそうだった。


年収100万円UPの意味

年収が100万円上がるのは、普通に考えたらいいことだと思う。

それだけ評価されている、できると期待されているということだと思う。それは普通の会社なら、大きなプロジェクトを任されるようになるとか、人の上に立つ立場になるとかになるのかな。。。

しかし、この100万円の意味は少し違う。
1年9ヶ月以上経つが、未だ全世界総力を上げてもコントロールできない、わからない事が多い、後遺症に悩まされる人が多い、未知の感染症にかかるリスク、精神的負担へのお金が1年で100万円。ということ。それが高いのか、、、安いと感じるのかは個人差があるみたい。


年収100万円UPで働く?働かない?

私の答えは、No。100万円あげるからと言われても働かない。
まだ看護師を続けるつもり、今の病院にいるつもりでコロナ担当部署移動になったら、仕方ないね。異動になったからやるしかないかくらいの感じ。もしかしたら、体調によっては辞めることも検討するかもしれない。

私は沢山のお金を稼いでいるわけではない。1人で暮らし、貯金しながら暮らせる程度だ。
確かに100万円UPしたら、生活が潤うだろうし、純粋に嬉しい。でも、私にはその求められていることや自分が背負うリスクと、その対価として100万円という値段が見合っていないように感じる。 だから、100万円のために喜んで行こうとは思わない。


そして人それぞれストレス耐性、この仕事の向き不向きがある。今の私は人生で最弱なので、ストレス耐性が弱くなったし、今はこの仕事が向いていないように感じている。仕事で心身にストレスがかかることで、年収100万円アップしたとて、浪費するだけな気がしてしまうし、何より健康が第一だもん。健康な体と精神が一番大切だと思うから。

コロナ病棟で働いていたスタッフとも話していたが、皆疲れていたし、ストレスフルだった。 100万円UPするからと言って、嬉々としているスタッフは見かけなかった。 ずっと働いているスタッフは本当にすごいと思う。もっとお金を出してもいいんじゃないかと思う。 (個人的には出すべきだと思う)じゃないと割りに合わない。


なんで100万UPするのが羨ましいの?

そう先輩に聞いてみた。

(ここからは、コロナ罹患リスクの中で働くことに対してというより、お金の使い方、考え方、100万円をどう捉えるかの話。)

「お金なんてあったらあっただけいいに決まってる。お金ないと不安じゃん!何もできないしさ。美容にお金を注ぎ込みたいし、買いたいものもいっぱいあるし。」


まあ、確かにお金は重要だと思う。何かを得るためには、対価としてお金を払うことが大前提なことが殆どだ。ものでも、食べ物でも、経験でも、サービスでも、知識でも。

話を聞いていて思ったけど、自分の幸せ水準を持っていないんじゃないか。全て抽象的。と感じた。


その年収100万円UPしたら何をしたいか。
どれくらいお金を稼げば満足できるか。
何にどれだけお金をかけたいのか。

そこがすごく曖昧だった。

美容にお金を湯水のように注ぎ込みたいと言っていたので、実際にどんな施術を、どこのクリニックで、どのくらいのペースでメンテナンスに通いたいのか聞いてみた。

そしたら驚くほどに曖昧なことしか答えられなかった。
美容好きとは知っていたけど、それぞれの施術の大体の値段も知らない状態だった。

先輩曰く、年収100万円UPしたらもっともっと自由にお金を使える、自分の欲しいものは買える。と思っているようだった。

ある程度までの年収UPと人の幸せは比例すると本で読んだことがある。(ある程度の年収を過ぎると、それ以降は反比例する。)

100万円年収UPしたとしても、自分の幸せ水準が曖昧なままでは、いざ欲しかったもの・経験などを手に入れたとしても、その幸せを噛み締めることなくあっという間に過ぎ去ってしまうんじゃないかと個人的には思う。


100万円あったら、なんでも買える?

なんでも買えるような金額ではないし、豪遊なんてできない、すぐに使い切る金額。というのが私の中での認識。

私は先輩が言っていた「お金があったら〜できる」という思考が気になった。

私もしてしまいがちだが、「お金があったら〜できる」と考え始めている時点で「実現しない・実現しないかもしれない・私には手に入れられない」という意識が働いているように思う。

曖昧にしておくことをある意味望んでいる感じ。あえて自分でコントロールを取らないことを無意識に望んでいる感じがした。

「お金があったら〜できる。」という考え方から入ったら、海外セレブのような暮らしや、ブランドものを揃えたり、旅行にいくとか、沢山の夢が出てくると思う。

実際、私もそうだ。ハリウッドスターの生活をインスタグラムで覗き、彼らの生活に憧れる時もある。こんな素敵な家に住んでたいとかね。でも実際は望んでいないし、叶えようと思ってない。ただのエンターテイメント。映画を見ている感覚。

そのセレブ達と同じような生活をしたら、本当に自分自身は幸せになれるのか。が大切なところだと思う。

人は生まれ育った環境、周りの人の影響、今までの経験から好きなものや嫌いなものなどの価値観が作り上げられ、何で幸せを感じるかは人それぞれ違う。

お金をたくさん使えるから幸せになれるのではなくて、自分の幸せ水準を満たすことができるお金の使い方をしているから、結果として幸せになれるんだと思う。

どんなことで自分は幸せを感じるのか

それを叶えるための手段を考える

結果としてお金を払う

これが正しい順序な気がする。

私も一時期ブランド物がたくさん欲しいと思っていた時期もあったし、大学生の時に背伸びをして買ってみたこともあった。ただ闇雲にブランド物を漁っていた時は、買っても満たされるのは一瞬で、浪費したと後悔もした。何かを得たはずなのに、満たされなかった経験では、「どうして欲しいのか、これの何に幸せを感じているのか」の視点や自分が何で満たされるのかを知らなかったが故に起こったことなんだなと思う。


私自身、最近彼と別れることを決断して何が自分にとって幸せなのか、自分はどう生きたいのかを考えることがすごく増えた。

Twitterでも少し前に呟いたが、私はやっぱり自由が好きで、自然が好きで、動物が好き。縛られない生活がしたい。山に登ったり、サップで海にぷかーっとしていたい。綺麗な朝日と夕日を見ていたい。

やっぱりそこが今一番自分が求めているところなんだと思う。

100万円無ければ幸せは買えないわけではなくて、自分の幸せ水準を熟知するために向き合えるかどうかな気がする。










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