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PPP的関心【続・PFS(成果連動型民間委託)について】

今回は、以前『PPP的関心【PFS:Pay for Success】』というタイトルの記事でも書いた「成果連動型民間委託制度」を用いた、法務省の初導入案件が発表されたというニュース(少し前の8月末のニュースですが)について書こうと思います。

法務省での初導入。非行少年支援を成果連動型委託で。

#日経COMEMO   #NIKKEI

今回の委託事業では「非行少年を対象として、受託者において、少年院在院中から学習支援計画の策定等を行い。出院後最長1年間の継続的な学習支援を実施」して、「対象者の学習継続率や再処分率等を成果指標として、国において事業の成果を評価し成果連動で委託費の支払いを行います。」という「再処分率」が「再犯防止」の成果指標の一つとして掲げられています。

成果連動型民間委託契約方式の推進に関するアクションプラン(令和2~4年)。
重点分野は3つ。医療・健康、介護、再犯防止
事業実施の地方公共団体等100以上(R4年度末)が目標

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先ほど紹介した記事の「成果連動型民間委託」事業の法務省での初導入は、このアクションプランの一環と言えます。PFS(今回の取組は、法務省ではSIBとし、SIBはPFSの一類型としています。<*こちらを参照>)とは、「国や自治体が事業の成果目標を設定して事業を民間へ委託し、その達成度に応じて報酬を支払うというもの」で、今回の委託事業でも「対象者の学習継続率や再処分率等を成果指標の達成度」に応じた委託費の支払いと資金提供者への償還が行われます。

アクションプランの注目は実施団体の数的目標です。地方公共団体等で実施団体目標については、『国内におけるPFS事業の取組状況について(令和3年8月10日 内閣府 成果連動型事業推進室)』によれば、令和2年度末時点で76件であることから「大幅な進展目標」と言えないラインのように見えますが、「実施済み67団体(4%),実施検討中68団体(4%),未実施は1573団体(92%)」(同報告)と、「これから」のことろが多いことを考えればハードな設定なのかもしれません。

ちなみに、PFSによる民間委託はすでに76案件実施され、うち過半は医療・健康(介護含む)分野です。例えば、健康増進プログラムを市民に提供することで医療や介護に関わる扶助費支出の削減を成果指標とするなどの取組みは因果関係もある意味で分かりやすいこともこの分野が進む理由ではないかと考えます。

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PFS導入100以上。国内での実施拡大について考える
「小さいけど将来に有益」な課題を「因果を明確に捉え」て課題解決の設計ができるか

2018年、SIBについて先進事例として豪州の地域政府に、東洋大学PPPスクールのメンバーと一緒に取材訪問しました(以前の記事にも書きました)。

取材時に聞いた事例は、ネグレクトにより未就学児童が発生する地区(対象は確か数百名規模だったと思います)で、未就学児童を減らすという案件でした。原因分析から指標設計の段階で、未就学につながる子育て放棄をする親はスキルアンマッチにより就業機会がないことが共通項として発掘され、未就学児の就学率ではなく、親への職業訓練の実施と就業率を成果指標にして取り組んだというものでした。地域課題の「因果」の理解を徹底することで、結果指標ではなくプロセス指標を立てたということです。

今後、実施団体100以上を目指す上で、取材時に思ったことを照らし合わせてPFS制度活用において大切なことは、「小さいけど将来に有益」な課題を「因果を明確に捉え」て解決策の設計ができるか、だと思います。
規模的には数百人=「小さい」けど、子供の教育=「将来に有益な」施策の実現策は「因果を明確に捉え」=親の就業訓練が政策目的の対象である子供の教育機会拡大に連鎖するという捉え方で設計することが必要なのです。

PFSを活用した公共(公的)サービスは「予算措置の有無=やったか、やらないか」から「成果指標の明示と結果=できたか、できないか」と公共(公的)サービスの評価基準を変え、マイクロエリア(地区)単位の小さな課題への予算配分が優先順位的に劣後しがちであった従来型の予算の割り付けで対象にしにくかった地域課題の解決に対する策としても有効だと考えます。
100以上の達成、注目です。



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