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PPP的関心【新・建設業 地方創生研究会 について】

PPP的関心の記事の中では前から「新・建設業」という言葉を使用してきました。この言葉の意味は以前の記事にも書いた通り、

行政による公共事業や民間ディベロッパーによる開発事業を「あてにした」経営から、自社の所在地域ごとの都市的課題に向き合い、地域に根ざしながらその課題に応える「事業」を主体的に企画立案、創り出す新しいスタイルの建設会社を目指そうという考え

以前のPPP的関心 記事から抜粋

を表す言葉です。

今回はその考えを実践する山口県の安成工務店が地域ゼネコンとして生き残りを図るために全国各地の地域ゼネコンと連携しようとする取り組みを広めるべく、その活躍を扱った新聞記事をきっかけに話をしたいと思います。

地域ゼネコンの持続可能性を高める「企画提案力」

記事にある安成工務店は「新・建設業」を率先する企業です。
同社の歴史は自然素材を使った住宅建設請負事業をはじめ、公共事業の請負や数億円規模の事業用施設の建設事業を柱にしてきたことに加え、ともすると地域の価値を落としかねない身近な遊休地に、自らリスクを取って企画・開発・設計・施工・運営まで関わる事業を進めてきました。

#日経COMEMO   #NIKKEI

こうした実践経験から、建設請負事業のみならず事業用施設や提供サービスの企画、運営までを「自ら企画提案」できる力を蓄え、新聞記事にある地元公共施設再編にあたってPFI方式で公募された事業に「代表企業として」参画することになったというものです。

もちろん、PFI事業への参入経験がある、あるいは規模の大小は問わず地元のPFI事業にコンソーシアムの代表企業として実績を持っている、といった地域ゼネコンは他地域で既に存在していると思います。
私の関心は参入すること自体ではなく、活力を失いつつある地域において「地域の仕事を自ら創造する地域企業」としての姿勢と行動力の見本となる取組みとして注目したいという点です。

そう考える背景は以下のような事です。
以前、別の注目点(指標連動方式(アベイラビリティ・ペイメント方式))で取り上げた「PPP/PFI推進アクションプラン(令和3年改定版)」の中ではその他にも「人口10万人以上20万人未満の地方公共団体について、令和5年度までの優先的検討規程の策定を促す」という注目の方針があります。
そもそも小規模な自治体では施設整備事業自体も少なくなっていると思いますが、仮に必要な事業がありそれをPFI方式で発注を検討しようにも事業規模がナショナル大手企業の参入検討可能な規模でない場合、事業を請け負える企業自体が存在しなくなる事にもなりかねなません。
つまり企画提案力を蓄えた地域企業の存在は地域にとって重要なのです。

新・建設業地方創生研究会とは

繰り返しになりますが、小規模自治体がPFI方式(さらに広い意味でPPP的な事業の企画・展開も含め)で発注を検討・実施してゆく上で、企画提案力を蓄えた地域企業が存在することが地域にとっても重要です。

しかし、現実にはこうした企業がPFI事業やPPP的な事業に触れる機会は多いとは言えないと思います。先ほども書いたようにそもそも小規模自治体では事業自体が縮小している傾向があり、またPFI方式など民間活力導入の経験も少ないためそもそも民間側にとっても企画提案力を発揮できる機会が少ないからです。
そこで、数少ない実践機会を互いに共有しあい、そこから学びを得る機会を創り、その場を活用して、人口減少や高齢化で活力を失いつつある自社営業地域でまちづくりを担える地場プレーヤーに進化する経験を積んで企画力を高める必要を感じ、立ち上げられたのが「新・建設業 地方創生研究会」というネットワークです。

2022年3月3日、こうした考えに賛同する全国の地域密着建設会社15社と「新・建設業 地方創生研究会」の立ち上げキックオフミーティングが開催されました。私もこの会の運営サポートメンバーとして活動しています。
今後の活動では、既にメンバーとなっている各社に地域の遊休地活用事業の実践や地元自治体のPFI事業への参画を促しながら、その取組事例のなかから最新情報や実務を学ぶような進め方で全国の地域ゼネコンの「連携基盤」にしていきたいと思います。

地域課題の解決を新・建設業のビジネスチャンスに

改めて「新・建設業」という言葉に込めた考え方は、仕事を待ち受ける経営から自ら受注を創造する「創注型」の経営へと進化することで自社事業の持続可能性、発展の可能性を高めるべきであるという考え方です。

以前も書いた通り、建設事業者(少し拡大して不動産事業者も)は、人々の暮らしに欠かせない住宅や様々な施設、設備の維持管理、更新、新設、さらには危機管理や災害対応などを支える重要な「地域の基幹産業」であって、地域の持続可能性、発展に不可欠な存在の一つです。だからこそ企業として存続し続けなくてはならないと思います。
公共事業の規模が縮退を続ける環境下で企業として存続し続けるためにも、新たなビジネスチャンスを模索、獲得してゆかねばなりません。
地域の多様な社会問題に対処するための官民連携を新たなビジネスチャンスととらえ、地域ゼネコンが地域の基幹産業として地域の民間事業者を率先して取組みの中心的な存在になって行けるよう応援し続けたいと思います。

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