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読書「雪崩事故事例集」 日本雪崩ネットワーク 出川あずさ著 山と渓谷社

1 本書
雪山登山、山スキーなどの活動でおきた雪崩の事例をひとつひとつ、一部は実地調査データを含めてまとめたもので、190件中58件の事例には、発生箇所の地図、写真、雪崩がおきた日の気象情報などが示されています。多くの人にとって、遊びの山登りで、安全対策をここまでのレベルで科学的に分析した本は、少なく、他は山と渓谷社の以下の二冊ぐらいでしょうか?

「登山の運動生理学百科」以前紹介
「生と死の分岐点」翻訳書

2 雪崩安全対策
出川さんの雪崩安全対策の講座を何度も受講しています。毎年シーズン初めに行われているアバランチナイトに参加しており、所属する山の会の会員向けに講演をお願いしたこともあります。

安全対策の講座、専門書の出版、ネットを使ったリアルタイムの雪の情報の提供、事故の調査。あらゆる手段で、雪崩事故を減らそうとする出川さん、雪崩ネットワークの方々の取り組みに、心から敬意を表します。
私が、山仲間と雪崩の安全対策を意識し始めたのは25年ぐらい前です。学習書を購入して、ビーコン、ゾンデ(プローブ)、スコップを買い揃え、オフシーズン中に町の公園でビーコンを見つける練習して、雪が積もってからは山で練習しました。こんな事を、最低数年は続けて、今に至ります。
ビーコンの機能と性能の向上が目覚ましく、25年前に比べれば、今は捜索が楽になってます。ただ、ビーコンが良くなるだけでは、事故は防げません。本を読み、講習を受け、実地で訓練することが大切です。

3 日本の冬山登山を変える
軽い気持ちで、ゲレンデから飛び出して雪崩に遭遇したスキーヤ―の事故、減ってきたかな?と思います。
ゲレンデ近くでおきた雪崩事故なのか、山登りで起きた雪崩事故なのか、マスコミが分けて説明するようになりました。
雪崩に埋没した人を登山者だけでセルフレスキューした報告が増えてきました。
出川さん、雪崩ネットワークが積み上げてきた成果です。

一方で、2017年3月に、栃木県高等学校体育連盟が主催する講習会で、高校生7名と教員1名がが亡くなる事故が起きて、今でも訴訟が続いています。日本の粉雪を目指して海外から来るスキーヤーの事故が増えています。私の周りでも、事故がないわけではありません。
状況は良くなっていても、悲しい事故はなくなりません。日本の冬山登山を変えるためには、これまでの取り組みを維持しつつ、発展させるべきで、自治体や行政による支援が必要でないのかなと思いますが、どうでしょう?

写真2は、2024年に一度だけ楽しめた粉雪滑降。ここは、斜度がゆるくて雪崩の可能性が低いですが、より斜度がある方が楽しく、そうなると、雪崩の危険度が上がります。


写真1 本書の表紙(著者撮影)
写真2 雪山を滑る楽しい時間、楽しむためには知識と経験が不可欠


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