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読書「ドルビーの魔法」ドルビージャパン㈱著 インプレスR&D発行 ライセンスで生き続ける会社を学ぶ

1 本書との出会い
 回路シミュレーションのSPICEについて書いているうちに、ライセンスビジネスについて、深堀したくなりました。私がユーザーであり、一番古くからあったライセンスは、ノイズリダクションのドルビーだと思い出し、読んでみました。

2 ドルビーとの出会い
 中学生時代のエアーチェック、高校生時代のレンタルレコード借用で音楽はテープに記録していました。マクセル(日立系)、TDK、ソニーなどが競いあって、テープを販売していた懐かしい時代のことです。当時のカセットデッキには、廉価機でなければ、ドルビーのロゴがついていて、ノイズリダクションOn/Off用SWがありました。
 当時、ドルビーがノイズを抑える機構であり、アメリカの会社の技術であることは、なんとなく理解していましたが、深く知ろうとしなかったです。

3 本書の紹介
 会社の創設時から現在まで、ドルビーの技術の歴史を分かりやすく紹介しています。時代は媒体ではテープ→光ディスク→デジタルデータ、対象はノイズリダクション→サラウンドが扱われています。ノイズリダクションの原理は、なんとなく知っていたことを再確認できました。サラウンドは、これまでまったく知らなかったので、5.1サラウンドの0.1の意味とか、映画館の音響システムを本書で理解しました。
 本書の残念なことは、技術のレファレンスが示されいないこと。理系、技術系では、当たり前のことができていません。英語版で入っているのに、日本語版で省略、あるいは、ネット版には入っているのに、書籍版では、ページ数を抑えるために省略したのかと思いますが、これでは片手落ちです。

テープと光ディスクの時代は、ドルビーの独壇場であった音声技術、デジタル時代にはライバルが誕生しています。私が使っているラジオサーバーには、SRS Labsのオーディオプロセッシング技術「SRS WOW」が、搭載されていいます。この技術は、WindowsPCの Media Player (WMP)に標準採用されたものです。

4 ライセンスビジネスのメモ
 ドル―ビーの50年を越えるライセンスビジネスは、日本の電子産業界が学ぶべきだと思います。東京大学の坂村先生のTRONは、フリーでライセンスされ、多方面に使われてそうですが、製品での宣伝はされていない(私が気づいてない)ように思います。他に、あるんでしょうか?さらに、これから目がでそうな、ビジネスがあるのでしょうか?

日本の電子機器関連メーカが成功しているライセンスは、プロダクトまでを手掛けるメーカが企業連合を形成したものです。

CD  ソニーとフィリップス
DVD 企業連合 主メーカ ソニー、フィリップス、パナソニック、東芝
SD 企業連合 パナソニック、東芝、サンディスク(ウェスタン・デジタル)

本書の範囲ではないですが、日本のメーカがライセンスで成功しているのは、キャラクターかなと思います。最近のキャラクターは知らないので、書いていません。
キティちゃんなど:サンリオ
ゲゲゲの鬼太郎など:水木プロダクション
ドラえもん:小学館集英社 

何を言ってるんだと言われそうですが、ドルビーとサンリオに共通するものを感じます。取り組み範囲を絞り込み、大きな業界に巻き込まれないで生き続けています。

写真1 本書の表紙(著者撮影)
写真2 SRS WOW搭載ラジオ(オーディオの上段)

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