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読書「登山の運動生理学百科」 山本正嘉 著 東京新聞出版局  山登りの科学/登山の安全を学ぶ名著

1 本書
著者の山本さんは、東京大学で教育学の学位をとられた人で、ヒマラヤや南米の山を岸壁登攀でも登っている、本格的な登山者でもあります。現在は、鹿児島の鹿屋体育大学のスポーツ生命科学系の教授です。

第一部:基礎編、第二部:応用編にわかれていて、普通の人であれば、基礎編だけを読めばいいです。私も第二部の高所登山に関しては、未経験だし今後も関わらないので、読み飛ばしました。
基礎編は三つにわかれており、一章、登山と疲労のパートが一番価値があります。疲労の科学的分析は、遭難に遭遇してしまった時の対処、安全対策を考える基になります。本書は人気があり、改訂版「登山の運動生理学とトレーニング学」が2016年12月に発売されていて、Kindle版もあります。

2 本書との出会い
ハイキングから雪山、沢登りまで、三十数年、幅広く活動しています。年々、激しい活動は減っていますが、山を歩いて誰にも一日会わないことは、今でも普通です。
山で何か(怪我、道迷い・・)があったら、自分達でなんとかしなくてはならない。そのため、どうすればいいのか、準備できることはあるのか、ずっ
と考えてきました。こんな私に最適な本なので、購入しました。時々読み返します。

3 知と体験が安全登山に不可欠
本書に書かれている、例えば、水を飲まないでいたら、人間がどうなるか?食べ物がとれないままでいたら、どうなるか?このような設定に対する科学的な知識は、一般の人にはまったく無用です。
でも、山登りをする人には、価値があります。条件しだいですが、人は何日か食べなくても、生き続けるエネルギーを体内に持っています。この事実をきちんと理解していれば、条件を良くする物、簡易テント(ツェルト)、シュラフカバーなどを常に持ち歩く習慣をすんなり受け入れるでしょう。また、トラブルに直面した時、不必要に慌てずに済みます。安全のためには、知識と無理のない範囲の限界体験の繰り返しが重要です。

ちなみに、この本。アマゾンの書評で、難し過ぎるとのコメントがありました。まじめに、登山するなら、理解するよう学ぶべきです。また、科学的な説明でなく、経験談であるとのコメントがありました。山本さんを擁護するつもりではないですが、一般的なスポーツ科学とは、比較が難しいでしょう。この本の記述、あるかどうかしらないですが、軍隊の研究に近いかもしれません。

山岳会のレジェンド、今西錦司さんの若いころの著作の中に、食べ物を食べずに、山を歩き続けたらどうなるのか、実験したことが書いてありました。本書に通じる話しです。

写真は、スキーツアーの様子です
ツエルトとタープがあれば、どこでも快適に過ごせます。これらは、軽くて荷にならならず、トラブルが起きた時に命を守ってくれます。

写真1 本書の表紙(著者撮影) カバーがぼろぼろになってます


写真2 GWのスキーツアー タープとツェルトで泊まる
写真3 急に嵐になった時1 ストックを支柱にしてツエルトを被る
うそのように暖かくて、ついうとうと


写真4 急に嵐になった時2 ツエルトからでたらフキノトウが雪を被っていた


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