ばかげた円買い「覆面介入」(読売新聞の記事の書き方)

円相場が大揺れしている。2022年10月23日の読売新聞(西部版・14版)は、こう書いている。この介入に意味はあるのか。
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政府・日本銀行は日本時間21日深夜から22日未明にかけて、急激な円安を食い止めるため、円買い・ドル売りの為替介入を再び実施した。介入の事実を公表しない「覆面介入」だった。外国為替市場では円相場が1ドル=152円目前から一時、146円台前半まで円高に振れた。(略)覆面介入は2011年秋以来だ。
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 この「覆面介入」に意味はあるのか。数字をよく見てみる。(番号数字は、私がつけた。)
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①22日午前1時過ぎ、146円20銭前後をつけた。②一部電子取引では144円台半ばの極端な取引も成立。円相場は数時間で6~7円も円高・ドル安が進んだ形だ。(略)③ニューヨーク市場は147円台後半で大方の取引を終えた。
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 朝刊には「正確には」書かれていないが、「覆面介入」する直前の最安値は1ドル152円に迫る151円90銭台。これが①146円20銭前後。この段階で6円近くの円高。電子取引では②144円台半ば。7円近くの円高。そして最終的には③147円台後半。これは5円の円高。
 つまり「覆面介入」によって、6円から7円の円高に日本政府と日銀は相場を誘導したのだが、その日のうちに「5円の円高」に戻ってしまった。逆に言うと、「1円の円安」になった。
 この「1円」をどう評価するか。相場は「1円」動いても大騒ぎしていた。それが「6円」に目を奪われて「1円」を放置している。「介入」が終わった途端に、あっと言う間に「1円」円安が進んだ。
 これは「円買い介入」の効果がなかった、ということだろう。なぜ、それをもっと問題にしないのか。
 見出しでは
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円買い再介入 6円上昇/一時146円前半 11年以来の「覆面」
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 と書いてあるが、その146円が持続したとは書いていない。すぐに147円に戻した事実を隠している。すぐに円安に転換し、実質「5円」上昇に終わっている。
 これは、週明けには、再びあっというまに150円台にもどることを意味する。150円どころか、160円だって、すぐに突破するだろう。
 3面の「解説(スキャナー)」には、こう書いてある。
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④介入後に146円台前半まで円高に振れた円相場は、147円台後半まで円安に戻して21日のニューヨーク市場の大方の取引を終えた。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・市場調査本部長は、「取引が増える週明けには、あっという間に円安に戻る」と予測する。(略)
⑤日銀が低金利政策を続ければ、「相場は再びドル高・円安基調に戻る」(野村証券の後藤祐二朗・チーフ為替ストラテジスト)とみられている。
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 こんなことは、「専門家」が言わなくても、だれだって「予測」することができる。日本が「円高」になる要素など何もない。「金利」だけではない。日本には「売る(輸出)商品」そのものがないのだ。しかも、その商品をつくるためには「原料を輸入する」必要がある。原料の高騰が「商品コスト」を上げるから、商品の値段に転嫁するしかない。そうなると円安が進んでも、円安のメリットはなくなる。円安になっても輸出商品で稼ぐということはできなくなる。輸出で稼ぐには、もっともっと円安が進まないといけない。しかし、円安が進めば進むほど、輸入原料は高くなる。
 でも、こんなことは悪循環。その悪循環に、日本の経済は陥っている。小泉以来の、そしてアベノミクスが拍車をかけた労働者の賃金をおさえることで企業の利益を確保するという政策(企業に魅力的な商品をつくらせる工夫をさせない企業甘やかし政策)がいまの状態を生み出したのだ。
 為替相場は投機家の「思惑」だけで動いているわけではないだろう。投機家相手に「円相場の防衛」をやっていてもしようがないはずだ。「介入」では円安を阻止できないということを、真剣に問題化しないといけない。
 読売新聞の見出しは、この問題を隠している。つまり、政府・日銀の「宣伝」をそのまま書いている。円安を抑制し「6円」円高にした、と。

円安が進めば多くの原料を輸入に頼っている日本の物価はどんどん上がる。なによりも問題なのは、外国人労働者が日本へ来なくなる。岸田は円安で外国人観光客が増える、と言うが、外国人労働者がいなくなる「現場」はどうなるのか。介護の現場、建設現場、さまざまなところでつまずきはじめる。
 「円相場」の「専門家」は、そういうことを「予測」はしない。思っていても、読売新聞の記者には言わないだろう。言われたことを書くだけではなく、声になっていない声を聞き出す姿勢、問題点を探し出す視点が読売新聞には完全に欠けている。

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