マンゴーフラペチーノのトールサイズをお願いしてもいいですか、と、口に出してから、おい、いつもの安くて美味しいコーヒーは一体どうしたんだよ、と内心ほくそ笑む。去年、誕生日にいただいた五〇〇円分のドリンクチケット。使用期限がだいぶ近付いてきたので喫茶店に寄り、店員に読み取って貰おうとしてＱＲコードが表示されたスマホ画面を翳し、その後、不足した代金を支払った。列の最後尾で、レジ上に設置されたメニューボードを眺めて何を注文すべきか考えていくうちに、ほぼ無料だし、たまにはの精神で贅沢したくなり、順番が回って来て、先頭に立つと見た目華やかな飲み物の誘惑に従ったのだ。
　その日は日曜日だった。正直、予感はしていたけれど休日だけあってやはり席が空いていないため、店での飲食は諦める。近くの喫煙所に容器を持って行き、加熱式の煙草と交互にストローで吸う。うん、好きかも。それになんだか都会人を演じてるっぽくてこそばゆい。