齋藤靖朗

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齋藤靖朗

種村季弘書誌作成者/くじら(Qujila)ファンサイト「木星クラブ」管理人(アイコン写真撮影:安部英知さん)http://www.asahi-net.or.jp/~jr4y-situ/

マガジン

  • 種村季弘おぼえがき

    種村季弘に関する話題を記録するためのマガジンです。

最近の記事

(過去記事再録)諏訪哲史講演「偏愛蔵書室、文学の舶来幻術師-日影丈吉」@町田市民文学館ことばらんど

http://tanemuramemo.hatenablog.com/entry/2015/11/17/220310 12月20日まで町田市民文学館ことばらんどで開催中の「没後25年 日影丈吉と雑誌宝石の作家たち」展の関連イベントとして11月15日に諏訪哲史の講演会が開催された。諏訪は國學院大學で種村の教え子であり、第137回芥川賞を受賞したデビュー作『アサッテの人』は種村に捧げられている。 日影については、幻想文学・純文学的な作品と通俗的な作品を並行して手がける両面性

    • (過去記事再録)奇術師・鈴木清順

      http://tanemuramemo.hatenablog.com/entry/2012/04/13/195724 初出:「奇想天外ナ遊ビ 鈴木清順 80th Anniversary」(スローラーナー、2003年7月26日発行)※単行本未収録 ユーロスペースでの特集上映に合わせて制作されたパンフレット。 奇術師がカードをまき散らすように「バラバラのままに放り出」された断片として清順映画をとらえた短文。 制作者のブログに原稿依頼時のことが書かれていた。 種村季弘さんと

      • (過去記事再録)『怪奇・幻想・綺想文学集 種村季弘翻訳集成』(国書刊行会)おぼえがき

        注・2012年当時使用していたtwitterアカウントで投稿した内容をまとめたものです。 ヨーハン・ペーター・へーベル「奇妙な幽霊物語」。初出は『ドイツ怪談集』(河出文庫)。十九世紀はじめのバーデンの暦に掲載された暦話の一編で、旅の紳士が幽霊が出るという城に宿泊したときの体験談。 ヘーベルはジャン・パウルやゲーテからも評価された詩人にして聖職者。暦話を通じて民衆の啓蒙にもつとめた。同作も含めた暦話は木下康光編訳『ドイツ炉辺ばなし集 カレンダーゲシヒテン』(岩波文庫)で読める

        • 種村季弘講演会「昭和を駆け抜けた2人の異端 澁澤龍彦と土方巽」

          毎年、種村季弘先生の誕生日や命日にあわせて貴重な映像や音源を公開している。 今年も命日の8月29日にアップロードするつもりだったのだが、講演のテーマである澁澤龍彦の命日が8月5日でもあるし、どうせならお盆休みにゆっくり視聴できるほうがいいのではないかと思い、早めに公開することにした。 土方巽との出会いに関しては記憶違いが指摘されている。詳しくは礒崎純一『龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝』(白水社)の165〜170ページを参照されたい。

        (過去記事再録)諏訪哲史講演「偏愛蔵書室、文学の舶来幻術師-日影丈吉」@町田市民文学館ことばらんど

        • (過去記事再録)奇術師・鈴木清順

        • (過去記事再録)『怪奇・幻想・綺想文学集 種村季弘翻訳集成』(国書刊行会)おぼえがき

        • 種村季弘講演会「昭和を駆け抜けた2人の異端 澁澤龍彦と土方巽」

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        • 種村季弘おぼえがき
          4本

        記事

          井上洋介の俳句 その二

          井上洋介さんの誕生日の三月七日に投稿するつもりだったのに、すっかり遅くなってしまった。前回の続きで二〇一一年から二〇〇六年の分を収録した『朝日俳壇』を調べたところ九句見つかった(年鑑には掲載された日付までは載っておらず、縮刷版で確認する時間もなかったので日付は後日改めて追記する予定)。いずれも金子兜太選。 匙を手に春の闇を食べる人 (2010年4月第1回) 金子評「濃く生暖かい春の闇。それを睨んで大匙で食べている一人の男。生臭く独特の存在感」。井上さんの絵画世界がそのまま

          井上洋介の俳句 その二

          井上洋介の俳句

          二月三日は井上洋介さんの命日だ。直接面識があったわけではないのだが、恩師の種村季弘先生と交流があったので(『晴浴雨浴日記』は装本・装画を担当しており共作に近い趣がある)、勝手に親近感をおぼえている。 昨年、ギャラリーまぁるで開催された井上洋介展へ行ったとき、ご息女の真樹さんから興味深い話をきいた。井上さんが晩年、某有名青年漫画誌に持ち込みをしていたという話と、朝日俳壇に投句していて金子兜太に何度か選ばれていたという話である。 前者も気になることではあるが、後者のほうがすぐ

          井上洋介の俳句

          倉橋由美子『夢の浮橋』おぼえがき その一

          八月に小学館P+D BOOKSから倉橋由美子の『夢の浮橋』が復刊された。P+D BOOKSは紙の書籍と電子書籍を同時に復刊していくことを目的に創刊されたレーベルである。公式サイトに「絶やすな。昭和文学の火を」と掲げられているように、昭和時代に発表された作品を中心に据えているところに特色がある。紙の書籍はかなり簡素なつくりだが、おそらくこれは紙書籍と電子書籍の値段に差をつけるのが難しい日本の慣例のなかで、電子書籍の値段をできる限り抑えるための苦肉の策ではないかと思う。読書スタイ

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          倉橋由美子『夢の浮橋』おぼえがき その一

          嵯峨景子『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』(彩流社)

          集英社コバルト文庫にはそれほど詳しいわけではない。読んでいるのは山尾悠子『オットーと魔術師』と今野緒雪「マリア様がみてる」シリーズくらいで、ほかの少女小説レーベルでも講談社X文庫ホワイトハートの井辻朱美作品や小野不由美「十二国記」シリーズを読んだ程度だ。 本書のタイトルからは少女小説というジャンルの文学史という印象を受ける。もちろんそういう面もあるのだが、読んでみるとそれだけではないことがわかる。著者は社会学の研究者で、これまで明治・大正期の少女雑誌における投書について

          嵯峨景子『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』(彩流社)

          新三行物語 4 月

          「今日の月は一段と奇麗だ」と言ったら、気を良くした月がついてきた。 そのままわが家の真上に居座ってしまい、世界中から抗議された。 そんなわけで、いま、私は月軌道を回る衛星に住んでいる。 #小説

          新三行物語 4 月

          新三行物語 3 拾いもの

          詩を拾った。 警察に届けると一行を謝礼にもらったが、意味がわからない。 もとの詩は一行が削られたことで傑作になったという。

          新三行物語 3 拾いもの

          ガラクタハウス

           その家はガラクタでできている。ほんとうに、すべての部分がガラクタの寄せ集めから作られている。壁も、天井も、柱も、扉も、きれいな色の空き缶やビン、ビー玉、パズルのかけら、スーパーカーの消しゴム、折れたクレヨン、片方しかない赤いエナメルの靴、壊れた楽器や、ぼろぼろになってお母さんに捨てられてしまった絵本、部品が一つなくなってしまったロボット、そのほかのたくさんのものが集まってできている。  もともとは普通の家だったらしい。けれど、何十年という時間がたつうちに、この家の一番最初

          ガラクタハウス

          新三行物語 2 ある伝記

          男は役に立たないことを学ぶ才能があった。 世界で一番役に立たないことを追究し、役に立たないまま死んだ。 残された厖大な業績は厳重に管理され、いまも何一つ役に立っていない。

          新三行物語 2 ある伝記

          新三行物語 1 音の虫——K氏に

          男は捕虫網で音をつかまえることができたので、音の標本を作ったり、生きたままの音を見せて回ったりしていた。 やがて男は蛹になると、音に変身して飛んでいってしまった。 いま、世界は男の音で満たされている。

          新三行物語 1 音の虫——K氏に

          旧・三行物語集(1990-2007)

          1 23時55分「たいへん、たいへん」 蛙が言いました。 「早く帰らないと、魔法使いのばあさんに人間にされちまうよ」 2 十五夜うさぎは今日も月を眺めていました。 「ああ」かれはいいました。「ぼくは本当はあの国の王子さまだったんだ」 青白い月は今日も彼を見下ろしているだけでした。 3 真実「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?」 女王は、魔法の鏡にききました。 「おお、それはこの世のどんな美しいものでも映すことのできる、わたしです」 4 自己申告教師が採点

          旧・三行物語集(1990-2007)