公益社団法人やどかりの里

1970(昭和45)年に“ごく当たり前の生活を”求めて始まった私たちの活動は,効率だけ…

公益社団法人やどかりの里

1970(昭和45)年に“ごく当たり前の生活を”求めて始まった私たちの活動は,効率だけが優先される社会ではなく,一人一人が尊重され大切にされる社会を,そして,障害のある人も一人の市民として共に生きる街づくりをめざし,活動しています.

最近の記事

遠くても近い存在

 1年ほど前,大学時代の仲間たちとおよそ 20 年ぶりに再会した.横浜の中華街で中華料理を堪能し,紹興酒を飲み干し,ホテルに泊まって明け方まで語り明かした.再会を約束して別れ,その後,さまざまなことを我慢する日々が来るとは思っていなかった.  大学があるのは愛知県知多半島.当時,県外からの学生が約8割で,下宿生活を送る人も多く,再会した仲間も下宿生活の中で親交を深めた間柄だ.生活費が底をつけば手持ちの小銭をみんなで寄せ集めて食事を作り,お酒を飲んでは夜の海に繰り出すなど,同

    • 餅と家族

       新しい年を迎える準備の中で,食べ物の準備は欠かせない.年越しそばやお節など,年末年始は美味しいものがいっぱい.なかでも,餅を食べると「お正月だな~」と感じる人も多いのではないだろうか.  母は,熊本県・天草で生まれ育ち,母自身も小さい頃から餅つきは毎年恒例だったようだ.まだ祖父母が健在だった頃は,年末になると天草から「こっぱ餅」(いもと砂糖を搗きこんだ餅)が送られてきた.今でも正月には,「こっぱ餅美味しかったよね」と必ず話題に上がるほどだ.買って食べたこともあるが, やは

      • かあさんはかあさんのままでいい

        「かあさん,もうあの学校には行かない」.ベッドに伏せながらきっぱりと告げた息子.いじめにあったわけでもない.授業がぎっちり詰まる中,部活にも打ち込んでいた彼は,大会を終えた翌日からぱたりと学校に行かなくなった. そしてはひたすら眠っていた.「行かない」と身体を硬くする彼に,ただならぬ何かも感じた.「何してんだろな,オレ」とベッドの上で呟いた言葉も胸に響いた.  一方で,夜中にネットゲームを楽しむ息子に腹を立てたこともあった.私の経験上,「学校に行かない」という選択はなかっ

        • 国による隔離政策を考える 施政権返還50年の沖縄から

           7月18日,第78回精神保健シンポジウム「施政権返還50年−未来への回想 国による隔離政策を考える」が開催された(主催:日本精神衛生会,「国による隔離政策を考える」実行委員会,おきなわ障害者人権センター).  前日にオプショナルツアーがあり,沖縄島北部の私宅監置小屋,屋我地島の国立療養所沖縄愛楽園を巡った.  沖縄特有のスコールに見舞われながら向かった集落の,すでに主のいない母屋の離れに監置小屋があった.わずか3畳ほど,食事の受取口といくつかの穴からしか光が入らない.地面

          障害者総合支援法改正の審議が進む中でグループホームの使命とは

           2021 年 12 月 16 日,厚生労働省社会保障審議会障害者部会(以下,社保審)が「障害者 総合支援法改正法施行後3年の見直しについて中間整理」を公表した.  2021 年3月からの見直しの経過の中で,障害のある人の居住支援について,グループ ホーム(以下,ホーム)に標準利用期間を設け, 1人暮らし等への移行を訓練して推進する新 たな類型を創設する案が示された.  社保審で 検討される以前に「障害者支援のあり方に関 する調査研究-グループホーム,地域生活のあり方-

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          ヤギが人・自然・地域をつなぐ

           未来を拓く つなぐ・つくるプロジェクト (以下,プロジェクト)の3年目がスタート した.COVID-19 感染拡大による混乱と困惑 の1年目.1年目の遅れを取り戻すかの如く, 出会いとつながりを求めて地域巡回を重ねた 2年目.3年目は地域のつながりを育む拠点 づくりを目指している.  人との出会いの場に大きく貢献しているの は,昨年4月からプロジェクトに仲間入りし た2頭のヤギ,喜々(きき)と楽々(らら)である.  優しい笑顔のような顔つきが愛らしい小ヤ ギ.穏やかで

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