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餅と家族

 新しい年を迎える準備の中で,食べ物の準備は欠かせない.年越しそばやお節など,年末年始は美味しいものがいっぱい.なかでも,餅を食べると「お正月だな~」と感じる人も多いのではないだろうか.

 母は,熊本県・天草で生まれ育ち,母自身も小さい頃から餅つきは毎年恒例だったようだ.まだ祖父母が健在だった頃は,年末になると天草から「こっぱ餅」(いもと砂糖を搗きこんだ餅)が送られてきた.今でも正月には,「こっぱ餅美味しかったよね」と必ず話題に上がるほどだ.買って食べたこともあるが, やはり祖父母が作った「こっぱ餅」に勝るものはない.

 私の実家では,毎年 28 日は餅つきの日と決まっている.母は前日からもち米を浸し,あん餅用のあんこを準備する.父が搗きたての白餅を桶に入れ,母があんこを包んでちぎり,父と私と妹が丸める……連携プレーだ.慣れないうちはあんこがはみ出してしまうのだが,それは味見用として私たちのお腹を満たす.出来立てのあんこ餅は絶品.

 普通に食べるあんこ餅も美味しいが,父と私はそのあんこ餅を味噌汁に入れたのが大好物.その話をすると「大福を味噌汁に入れるなんて……」と言われるが,入れるのは,大福ではなく,あくまで「あんこ餅」.味噌汁に入れた餅が熱でとろ~りとろけ,食べながら味噌汁に浸すと,あんこの甘さと味噌の塩 気のバランスがなんとも言えない.できるなら,あんこは甘み控えめの手作りあんこ,味噌は九州の味噌がいい.四国にはあんこ餅を味噌汁に入れる地域が あると聞く.しかし,わが家ではみんなが食べるかと言えばそうではなく,母と妹は好んでは食べないし,結婚してから夫にも食べさせたが,好んでは食べ ない.見た目がよくないのか,私の子どもたちも同様である.

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さいたま見沼よみさんぽ Vol.32(公益社団法人やどかりの里,2019)

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